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「ブランカニエベス」白雪姫と呼ばれた闘牛士の数奇な人生

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ブランカニエベス (字幕版)

 

「ブランカニエベス」はパブロ・ベルヘル監督による2012年公開の映画。

グリム童話の「白雪姫」を近代のスペインに置き換え、モノクロ、サイレントで描いた異色の作品である。

 

あらすじ

1920年代、アントニオ・ビヤルタは天才闘牛士として活躍していた。

その日も妊娠中の妻の見守る中、6頭の牛を相手に華麗な腕を見せていたが、最後にとどめを刺そうとしたところを失敗し、大怪我を負ってしまう。

命は取り留めたものの、身体は自由がきかなくなり、妻は出産後亡くなった。

 

娘のカルメンは祖母の手で育てられた。

父とは離れて暮らし、会うことはなかったが、愛情に包まれていた。

そんな日々も終わる時がやってくる。

祖母が亡くなり、父の家に引き取られることになった。

待っていたのは、カルメンを疎ましく思う継母だった。

 

【予告編動画】 

ブランカニエベス(字幕版)(予告編) - YouTube

 

白と黒の世界 

この作品は、グリム童話の重要な要素の一つである“ダークな世界観”に忠実です。

愛があり、愛に伴う痛みがあり、悲運で数奇な人生の浮き沈みが描かれます。

 

本作はこの時代にあえてモノクロで描かれている。

文字によるセリフと、音楽と。

物語の舞台である1920年代に主流であったサイレント映画の手法をとることで、より深みのある世界をつくりだした。

 

前半はカルメンの誕生と少女時代、後半は闘牛士への転身とその後の様子。

祖母と暮らした時期は白が、継母のもとでは黒がより強調されているように感じる。

転機となる場面、聖体拝領*1の白無垢のドレスが喪服の黒に変わるところ、少女から大人に変わるところの描写は観てみて欲しい。

 

ブランカニエベス/フラメンコシーン

祖母と踊るカルメンシータ *2

 

継母エンカルナ

近年の白雪姫の映画は継母役に力を入れているものが続いているが本作もその一つ。

マリベル・ベルドゥはスペインで最も有名な女優だそうで、悪役をやったことのない彼女のために当て書きで脚本がつくられた。

アントニオが運び込まれた病院の看護師として、後妻の座を狙い、資産を手に入れるため策略をめぐらす。

魔女よりよっぽど邪悪な笑顔で、名声を得たカルメンと対峙する。

 

ブランカニエベス/エンカルナ

カルメンを睨みつけるエンカルナ 

 

王子のキスから闘牛士へ

白雪姫の物語は時代とともに様々なバリエーションで語られてきた。

今日多くの人がイメージするのは王子様のキスで目覚めるというディズニー版の展開だろう。

本作でも父の墓へ供える花を摘みに来たカルメンが命を狙われ、溺死かと思われたところを通りかかった“こびと闘牛士団”のメンバーによる人工呼吸で息を吹き返す。

だが、ここでハッピーエンドとはならない。

これはカルメンの第二の人生の始まりに過ぎなかった。

 

原作では三度命を狙われ、そのたびに乗り越えてきた白雪姫だが、カルメンはどうだろうか。

 

あとがき

モノクロ&サイレントということで、人物の表情や音楽が際立ってくる。

闘牛士とフラメンコ・ダンサーの血を引く、スペイン文化の申し子のようなカルメンが闘牛場に立つシーンはかっこよかった。

牛にも一頭一頭名前が付いている。

闘牛のシーンも因縁の対決になってるみたいだね。

 

ブランカニエベス (字幕版)

ブランカニエベス (字幕版)

 

原題:Blancanieves 

監督:パブロ・ベルヘル

出演:マリベル・ベルドゥ / ダニエル・ヒメネス・カチョ / アンヘラ・モリーナ / マカレナ・ガルシア / ソフィア・オリア

 

【関連記事】

同じスペインのビクトル・エリセ監督の作品。

聖体拝領のシーンを含むが、こちらも黒が印象的だった。

 

フラメンコ・ギターといえば、ヴィセンテ・アミーゴ(Vicente Amigo)とかいいよね。

*1:聖餐 - Wikipedia

*2:子供時代の呼び名は愛称のカルメンシータ


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