「ダージリン急行」はウェス・アンダーソン監督による2007年公開の映画。
疎遠になっていた兄弟が、異国の旅を通して家族の絆をとりもどそうとする。
あらすじ
インドの長距離列車ダージリン急行の車内に、父の葬儀以来1年ぶりに兄弟が集まった。
長男フランシスの呼びかけによるもので、バイク事故で大怪我をした事を機に、兄弟の仲を取り戻そうとしていた。
同時に、父の葬儀に姿を見せなかった母を訪ねる旅でもあった。
二男のピーターは妊娠中の妻を家に残してきており、三男のジャックは別れた恋人に会うためにイタリア行きのチケットを用意していた。
互いに信用していない三人の異国の旅が始まる。
【予告編動画】
The Official Trailer for The Darjeeling Limited - YouTube
架空の寝台列車、ダージリン急行
モデルとなっているのは世界遺産 ”インドの山岳鉄道群” のダージリン・ヒマラヤ鉄道。
インド北東部に位置し、紅茶の輸送などで使われていた歴史のあるものだが、本作の撮影で使われたのは、北西部のラージャスターン州にある路線のようだ。
撮影用に改装され、実際に走りながら撮られている。
冒頭で、タクシーに乗って道を急ぐ男(ビル・マーレイ)。
他の車を追い越し、牛を避けながら到着し、駅の雑踏を抜けて走り出している列車を追いかける。
そこへ後ろから大きな荷物を抱えた別の男(エイドリアン・ブロディ)が抜き去り列車の最後尾に飛び乗る。
ここで流れる曲はThe Kinksの「This Time Tomorrow」だ。
The Kinks - This Time Tomorrow (Official Audio) - YouTube
ドラマチックな旅の幕開けで期待が高まる。
ちなみにビル・マーレイは本編に一切絡まないという豪華なエキストラであった。
心を軽く
「協定を結ぼう」フランシスの口癖は母譲りであったが、母の自由さとは対照的に窮屈さを感じさせるものだった。
分刻みのスケジュールでの行動、途中で抜けようとする弟たちのパスポートを預かり、管理しようとする。
ピーターも人生の重要事を兄に話そうともせず、何のためかわからない毒蛇を購入し、ジャックも客室乗務員の女性に夢中。
三人ともバラバラで協調性など皆無だ。
人生も旅も予定通りに行くことのほうが少ない。
まっすぐ目的地に向かうはずのレールの上から、文字通り行方不明になった時、寄り道しながらも自分の足で歩いていくしかない。
混沌と神秘の残るインドという国で、見つけたのは相手を信じること。
余計な荷物はいらない。
あとがき
作中のサントラで、インド映画の巨匠サタジット・レイの作品に使われた曲がいくつか登場する。
「大地のうた」から始まるオプー三部作はおすすめだ。
近年のインド映画のように歌や踊りの入ったエンタメ性は無いが、少年オプーの目から見た自然や生命の移り変わりが美しく描かれる。
ぼくの好きなビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」の列車のシーンもおそらくこれに影響を受けている。
エンディングに流れる「オー・シャンゼリゼ」には原曲があるみたい。
Jason Crest - Waterloo Road - YouTube
原題 :The Darjeeling Limited
監督:ウェス・アンダーソン
出演:オーウェン・ウィルソン / エイドリアン・ブロディ / ジェイソン・シュワルツマン / アンジェリカ・ヒューストン / イルファーン・カーン / ナタリー・ポートマン / ビル・マーレイ
読むインドの旅ならこれかな。
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