2019年6月に読んだ中で、おすすめの漫画をいくつか紹介する。
注目は最終巻を迎えた「いそあそび」と新作の「ささやくように恋を唄う」。
前回はこちら。
「いそあそび」3巻(佐藤宏海)
佐藤宏海 講談社 2019-06-07
何も娯楽のない海辺の町に住む中学生・六郎が出会ったのは、訳あって自給自足&一人暮らし中の元お嬢様・セト。 同級生よりちょっとだけ磯に詳しい六郎は、セトのサバイバル生活のアドバイザー(?)として、共に獲物を探して海にどっぷりの日々を過ごしていたけれど…。ついに訪れたセトの父!引っ越し?町の再開発?急に訪れたこの生活の転機に、六郎たちはどう立ち向かう――!?海辺のプチ・サバイバル、完結巻!
海辺の町で一人暮らしをする訳ありの元お嬢様と同級生たちの自給自足生活、最終巻。
今回はついにセトさんの父親が登場、家族で再び暮らせるようになるのか。
再起を図っていた父が関わる一大プロジェクトが、星海町の再開発に関することだと知った彼女たちは、景観を守りつつ町の問題を解決する方法を模索するのだった。
セトさんの置かれている状況はあくまで一時的なものであり、いつかはこの生活が終わる時が来るのだろう。
最終巻を迎えるにあたり、その点にも決着が描かれている。
(「いそあそび」3巻より)
纏めない終わらせ方もあったのだろうけど、未来につながる結末でよかったなと。
初登場時のセトさんは自作の銛で魚突きをやろうとしていたが、結局彼女には一番向いている方法だったようだ。
このお嬢様らしからぬヤンチャさと笑顔が好きだった。
「さよなら私のクラマー」9巻(新川直司)
新川直司 講談社 2019-06-17
累計500万部突破!『四月は君の嘘』の著者・新川直司の最新作は、女子サッカー。埼玉県蕨青南高校、通称「ワラビーズ」と呼ばれる弱小女子サッカー部に集まった個性豊かな少女達。名セリフの数々と、躍動感あふれる試合シーンで綴られる彼女達の物語から目を離せない!インターリーグ準決勝で栄泉船橋高校を下したワラビーズ。決勝の相手はエースストライカー・来栖未加を擁し、インターハイで日本一を成し遂げた・興蓮館高校。ついに開戦の笛が鳴る!!
高校女子サッカーを舞台に、弱小蕨青南高校で奮闘する選手たちを描く群像劇。
9巻はインターリーグ決勝戦が開始、相手は久乃木学園と日本一を争う興蓮館高校である。
表紙は、チームを全国強豪に押し上げた功労者・藤江宇海(ふじえ うみ)と新たにチームの核となる梅芽(うめ)の姉妹。
もともとこの大会はインターハイ出場を逃した高校や強豪校の控え選手の実戦経験の場となっていて、興蓮館といえどもBチームのはずだったのだが…
(「さよなら私のクラマー」32話より)
どうしても出場を希望する選手たちがいたりして、どうやら手強い相手になりそうだ。
このへんが「さよならフットボール」のネタでなつかしい。
今、最も勢いのあるチームを相手にワラビーズの力がどれだけ通用するのか、そして深津監督の手腕が試される時でもある。
「ささやくように恋を唄う」1巻(竹嶋えく)
竹嶋えく 一迅社 2019-06-18
高校入学初日、新入生のひまりは新入生歓迎会で演奏したバンドのボーカル・依(より)に、ひとめぼれという名の憧れを抱く。校舎で出逢った依にそのことを伝えるひまりだったが、まっすぐに気持ちを伝える彼女に、依はひとめぼれという名の恋心を抱いてしまい……お互い好きだけど、どこか微妙にすれ違う、ひとめぼれから始まる恋物語。
高校の新歓ライブをきっかけに出会った二人。
木野ひまりと朝凪依(あさなぎ より)はお互いに一目惚れをするのだが、その意味はそれぞれ違うものだった。
そのことに気づいた時にはもはや手遅れで…
(「ささやくように恋を唄う」1巻より)
これで付き合ってるわけではないのである。
甘々じゃないですか。
二人とも相手のことが大好きなのだけれど、そこに恋愛感情を持ちだしてしまったらどうなるのか。
あと、巻末のおまけが最高だった。
「ゆるさば。」3巻(関口太郎)
関口太郎 講談社 2019-06-20
誰もいない世界は自分たちのもの! ツムギの提案で異世界ライフを快適にするため海辺に別荘を作ることになった父と娘達。そこで目撃したのは驚くべき豊饒の世界! 食べ放題のウニ、多種多様でどれも美味しい魚介類。ウミガメ、アホウドリ、クジラたちの群れ。大自然に抱かれて極上の食材に舌鼓! 自分たちだけの別荘を作って冒険しよう! ゆるく幸せな父と娘の異世界サバイバル、待望の第3巻!
ある日突然、自分たち家族以外の人類がいなくなったら…
裕木家の四人が、廃墟となった東京でサバイバル生活を繰り広げる。
3巻は、自宅以外の活動拠点をつくるため別荘地を探す旅に出ることに。
子どもたちの希望は海!
お台場のあたりでホテルを再利用して、と考えるが、家から離れるほど年月が経過していることもあり、なかなか一苦労なのである。
(「ゆるさば。」3巻より)
そして、ツムギとモモの間で姉妹喧嘩勃発。
釣りを覚えてからタンパク源確保の大きな戦力となったモモに対して、まだ一度も狩りを成功させていないツムギはそのことを気にしていたようだ。
モモの煽りを受けて別行動になると思いきや…
結局ツムギがいないと心細いのだ。
二人の仲直りの仕方がかわいかった。
実際、命を奪うことへのハードルが段違いなのであるが、ここぞという場面では決めてくれるはず。
「私以外人類全員百合」1巻(晴瀬ひろき)
晴瀬ひろき KADOKAWA 2019-06-25
「ふつう」を愛する潤野茉莉花は、ある朝、通学中に女生徒同士がキスをしている姿を目撃する。そう、その朝、茉莉花は女性しか存在しない世界に迷い込んでいた――。これは、少女たちの「愛」の在り処のお話。
ある日、目が覚めると世界は女性だけになっていた。
しかもそのことを不思議に思っているのは茉莉花ひとりだけなのである。
隣のクラスの秀才美人・香散見りりと知り合ったことをきっかけに調査をすすめる茉莉花は、別の世界の自分と入れ替わったのではないかという仮説にたどり着く。
(「私以外人類全員百合」1巻より)
もしそうならば、元の世界に戻れる方法もあるのではないかと。
タイトルの圧の強さに、読まずにはいられない作品。
真実に近づくに連れ、どうしようもなく相手に惹かれていることに気付いていく点がみどころ。
最後はどんな選択をするのかな。
「ふしぎの国の有栖川さん」8巻(オザキアキラ)
オザキアキラ 集英社 2019-06-25
野宮くんの素敵なカラダがまぶしくて… 女子校育ちで、恋愛事には激ニブの有栖川鈴。老若男女からモテモテの人気者男子・野宮くんと人生初の「お付き合い」することに! ところが、海で野宮くんのハダカを見た鈴は、なんだか変な気分になってしまい…。一方、鈴の過保護なお祖父さまは、鈴の男女交際に猛反対して…!?
過保護な祖父に育てられた箱入り娘の有栖川さんと、天然王子な野宮くんとの恋物語。
満を持して交際を始めた二人の前に、最後の障害として祖父が立ちふさがる?
夏祭りの一日だけ特別に門限の延長をしてもらった有栖川さんだったのだが、そのことが知られ以前より重い制限が課せられることに。
祖父への信頼を取り戻し、なおかつ交際にあたっての揺るがぬ意思を示さなければならない。
(「ふしぎの国の有栖川さん」8巻より)
ちなみに監視役の慧は律の兄である。
堂島家との繋がりは彼がきっかけになったようだ。
律以上のドSで、祖父にあることないこと吹きこまれた手強い相手。
今後の二人にとって、ここが正念場となる。
巻末のあとがきで、次巻で完結することが示唆された。
「熱帯魚は雪に焦がれる」5巻(萩埜まこと)
萩埜まこと KADOKAWA 2019-06-27
クリスマスの水族館公開で、サメのショーに成功し、 思わず飛び跳ねた小雪は、素の自分を見られたことに動揺してその場を走り去ってしまう。 小夏は、小雪の家族は、そんな小雪を当たり前のように受け入れる――。
四国の海沿いの街に転校してきた少女と水族館部の先輩の日々。
年が変わり、帆波先輩はもうすぐ受験生になる。
東京の海洋大学への進路を考えている彼女に対して、協力的な態度を見せる周囲の姿に少し寂しさを覚えるのだった。
(「熱帯魚は雪に焦がれる」5巻より)
今回は表紙に楓が登場、帆波先輩の相談役として出番が増えている。
子供の頃は姉たちにべったりで、長期休暇にも帰ってこないことに不満な妹としての側面も持つ彼女は、正に適役なのだ。
変わりつつある帆波先輩を応援しようとする家族の姿とかすごくいいんだけど、先輩としては自分がいなくなることをもっと寂しがって欲しいんだよね。
そのへんをうまく伝えられるといいのだけど。
関連記事