Quantcast
Channel: 午前3時の太陽
Viewing all 772 articles
Browse latest View live

「ルミナス=ブルー」1巻(岩見樹代子)カメラを通して描かれる恋の光

$
0
0
「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻 (百合姫コミックス)

「ルミナス=ブルー」は岩見樹代子による漫画作品。

コミック百合姫で2018年より連載を開始した。

帯の言葉は、「撮るだけの恋は、もうやめる。」

 

恋と写真と青い夏

「透明な薄い水色に」の著者によるカメラを通した “青春のあとの青春劇” 。

"今"の二人の写真を撮りたい! 写真が大好きな高校生・光は、"好きなもの"を撮ると周りが見えなくなることが悩みの女の子。そんな光は転校先で、ギャル風の雨音と、読モをやっている寧々という絵になる二人組と出会う。写真コンテストで受賞を目指す光は、「二人の写真を撮りたい」と言い、彼女たちの関係性を知らずに触れていくが──。

(「ルミナス=ブルー: 1 (百合姫コミックス)」より)

カメラ好きな転校生と元恋人たち

垂水光(たるみず こう)は、写真を撮ることが大好きな高校生。

転校初日でも撮影に夢中で遅刻してしまうほどである。

この学校には、彼女が憧れる先輩がいた。

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、廃部になった写真部と葉山先輩
(「ルミナス=ブルー」1巻より) 

写真誌のコンテスト受賞者に毎年名を連ねていた3年生の葉山うちほ。

その作品をもう何百回も見て、同じ学校に通えることを楽しみにしていたという。

ところが、現在写真部は廃部になっていて、先輩はスランプの真っ最中であった。

部の再興のために、光は二人で賞を狙うことを提案するのだが…

 

同じクラスになった秋本雨音(あきもと あまね)と青野寧々(あおの ねね)をモデルに会心の一枚を撮るものの、そのことをきっかけに彼女たちの関係が動き出していく。

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、光が撮った雨音と寧々の笑顔の写真
(「ルミナス=ブルー」1巻より) 

帯にもある「撮るだけの恋は、もうやめる。」の言葉のように、これまで自身の恋には無頓着であった光が目覚めていく様子も描かれるだろう。

最初の笑顔の写真を撮った時点では、この間に入っていくのは想像しにくいのだけれど、雨音と寧々は元恋人同士であり、もう戻れない関係にある。

その原因はもしかしたら先輩のスランプとも繋がっているのかもしれない。

どうやら好きという言葉だけでは表せない感情が寧々の側にあるようだ。

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、撮影で笑顔を否定される寧々
(「ルミナス=ブルー」1巻より) 

寧々はモデル志望の女の子。

知人の依頼で時々撮影に参加しているのだが、彼女はそこではクールなキャラを求められている。

ここで言う可愛くないは、イメージと違う程度の意味なのだろうが、彼女の自尊心を傷つけているのには違いない。

幼い頃からのトラウマを呼び起こしていることも考えられる。

彼女が雨音に惹かれた原因の一つは、自分とは正反対の笑顔の似合うキャラであったことなのではないか。

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、寧々の笑顔のかわいさを世界中に認めさせてやる
(「ルミナス=ブルー」1巻より) 

だから、彼女の笑顔を無条件に受け入れてくれる光の言葉に、心が揺れても不思議はない。

光なら、彼女の魅力を引き出した写真を撮ってくれるのかもしれない。

かつて雨音をモデルに撮られた写真が賞を獲ったことを、寧々は随分と気にしているようであるし、今の雨音がモデルをやりたがらないことと無関係ではない気がするのだが…

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、雨音と葉山先輩は幼なじみ
(「ルミナス=ブルー」1巻より) 

葉山先輩も雨音に対して幼なじみ以上の感情を持ってそうだ。 

このあたりで四角関係になるのか、さらには先生も絡んでくるのかも注目したいところ。

 

単行本描き下ろしで、3話と4話の間のエピソードも収録されている。

光のTシャツの趣味は独特だね。

 

関連記事


「きみが死ぬまで恋をしたい」7話(あおのなち)シーナとミミの秘密の共有

$
0
0
「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)7話より、ミミの生き方を否定なんてできない

「きみが死ぬまで恋をしたい」はあおのなちによる漫画作品。

コミック百合姫で2018年8月より連載を開始した。

ミミに秘密を打ち明けられたシーナは…

 

前回はこちら。 

「おやつも秘密も、全部はんぶんこ」の煽りがかわいい。

友達としての秘密の共有

友達らしいことをしたいと張り切っていたミミが選んだのは、自分の秘密を共有することだった。

彼女の語った「ミミが死なないのは、もう死んでいるから」との言葉にシーナの反応はと言うと…

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)7話より、ミミの言葉がうまく伝わっていない
(「きみが死ぬまで恋をしたい」7話より)

よくわかっていなかった。

ですよね。

大怪我からの自力で回復する場面を見ていないシーナには、魔力が極めて強いという点を除けば自分たちと変わらない存在に思えてきたところだろう。

幽霊でもゾンビでもなく、体温があって痛みも感じる、食べることが大好きな女の子。

なのにもう死んでいるとはどういうことなのか。 

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)7話より、シーナが招集される?
(「きみが死ぬまで恋をしたい」7話より)

二人の間で重要なのは秘密を共有したという事実の方なので、仮に意味がわからなかったとしても特に問題はないのである。

だが、他の生徒ならともかくミミに関しては管理体制も厳しいものとなっている事は想像に難くない。

すぐさま呼び出しがかかるが、出撃と同じ方法での連絡なのは警告の意味もあったのではとも思える。

保険医のフラン先生はわりと気軽に教室に来ている印象があるからね。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)7話より、これからは3人の秘密ね
(「きみが死ぬまで恋をしたい」7話より)

そこで改めてミミの秘密が明かされるのである。

中途半端に伝わるよりは真実を教えて口止めするほうが得策との判断かもしれない。

たとえシーナがそれを知ったとして、何かをできるわけではないのもある。 

そして、このことはタイトルの意味にもつながってくるのだろうね。

まだ恋という感じではないけれど。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)7話より、ミミがいるから助かっている子もいる
(「きみが死ぬまで恋をしたい」7話より)

ミミをクラスに編入させてシーナに面倒を見させている以上、秘密が漏れることはフラン先生にとって想定の範囲内であるはずだ。

その彼女が何を目的としているのかは他の先生たちにも不明な様子。

単なるやさしさではなさそうなところが不気味なのだけど。

 

関連記事

「とんがり帽子のアトリエ」29話(白浜鴎)自分で描くものは自分で決める

$
0
0
「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)29話より、やり方全部に希望が眠ってる

「とんがり帽子のアトリエ」は白浜鴎による漫画作品。

月刊モーニング・ツーで2016年7月より連載を開始した。

ユイニィに掛けられた魔法を反転させる陣で助けようとしたココたちだったが…

 

前回はこちら。 

魔法使いを目指すことになったココは、キーフリーに弟子入りする。ある日、同じ弟子であるアガットとリチェ達が「第2の試験」を受けることに。だが、試験中に「マントのつばあり帽」の妨害が入り、一緒に試験を受けていたユイニィは鱗狼の姿に変えられてしまう。ユイニィを元の姿に戻そうとココ達は知恵を絞って魔法陣を描くが、姿は戻らない。そこに「つばあり帽」が訪れ、ココに禁止魔法を使うように囁いた。

(「前回までのあらすじ:とんがり帽子のアトリエ」より)

ユイニィを取り戻せ

鱗狼に変えられたユイニィの魔法を解くために、ココたちが考えた方法は、掛けられたものとそっくり反転させた陣を重ねれば相殺できるのではというもの。

これは線の正確さや長さも合わせる必要があるので難易度の高い試みであるのだが、やってみる価値はある。

その結果は成功とも失敗とも取れないものとなった。

人間の姿に戻る気配はない。

だが、自我は取り戻すことができたようだ。 

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)29話より、ユイニィに自我が戻った
(「とんがり帽子のアトリエ」29話より) 

ココに禁止魔法を使わせようとそそのかす「つばあり帽」イグイーンから彼女を救ったのはユイニィだった。

言葉が通じるようになっただけでも大きな一歩である。

発想自体はよかったのだろう。

陣に問題があったのかそれとも別の方法が必要なのかはこれから検証していけばいいのである。

あせって敵の誘いに乗ることはない。

このあたり、テティアの言葉が力強い。

創作魔法を志す彼女らしいね。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)29話より、つばあり帽イグイーンの魔法でユイニィが人間に戻る
(「とんがり帽子のアトリエ」29話より) 

希望としては、イグイーンの魔法によって元の姿に戻すことが可能であることがわかったこと。

向こうとしてもその魅力を伝えたいはずなので当然なのかもしれないが。

これを禁止魔法に頼らずに再現できるようにしたいのだ。

 

今回の解決方法は意外なものだった。

完全にではなくとも希望はつないだし、「つばあり帽」の思惑を突き返せる強さがあることも確認できた。 

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)29話より、自分で描くものは自分で決める
(「とんがり帽子のアトリエ」29話より) 

ココの言葉が頼もしい。

一時は絶望的な状況からここまで盛り返したのは確かな成長を感じられるところである。

これはこれでつばあり帽としても楽しみが増えるものかもしれないけれど。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)29話より、ユイニィとリチェの再会
(「とんがり帽子のアトリエ」29話より) 

帰還したリチェとユイニィの場面がハイライト。

ここのモノローグっぽいナレーションの内容が気になるのだが。 

一年越しの伏線がこんな形でくるのか。 

 

長かったロモノーン編も今回で一段落して、久々のアトリエかと思いきや、異変に気づいた魔警団が介入してきそうな雰囲気。 

次回からは大講堂編とのこと。

そして気になるところで来月休載なのである。

単行本5巻の発売日は5月23日に決定。

例によって限定版もある模様。 

 

「メランコリア」下巻(道満晴明)廻る未来と世界の終末

$
0
0

「メランコリア」は道満晴明による漫画作品。

月刊ウルトラジャンプで2017年より連載を開始した。

1話読み切り形式で、Aから始まりZまで続くオムニバス。

そして再びAに還る物語。

帯の言葉は、「かなしい、希望。あまい、憂鬱。」 

ストーリーギミックマイスター・道満晴明の描くメランコリックスオムニバスついに完結! 彗星・メランコリアの地球衝突まであと少し。喜びと哀しみの中で、人々はどんな終末を迎えるのか――…。憂いは時に喜びとなり、幸せは時に憂いへ変化し、無秩序の中で生まれる「憂鬱」が最高に甘美な感覚を目覚めさせる!! ※このマンガを読みだすと、ループして続み続けてしまうのでお気をつけください。

(「メランコリア 下 (ヤングジャンプコミックス)」より)

 

前回はこちら。

近付く世界の終わり

メランコリア彗星の接近により、世界は間もなく終わろうとしている。

緩やかな滅びを待つ人々は、最後の時を誰とどのように過ごすのか。

駅伝に憧れて陸に上がる人魚がいたり、好きな小説の映画公開日に吹雪の中並ぶ腐女子がいたり、猛暑の続く中ツチノコ狩りに参加する高校生がいたり、はたまたユートピアを目指して旅に出るカップルがいたり。

残り少ないながらそれなりに充実した日々を過ごしているようにも見える。

このまま地球は死の星となるのだろうか。

「メランコリア」(道満晴明)下巻より、地球にはゲッサンがある
(「メランコリア」下巻より) 

このメランコリア彗星、「突如現れ吸い込まれるように地球へ向かっていった」とのことで、外部でも観測対象になっているようだ。

もしかしたら、ゲッサンの存在が地球を救うかもしれない。

以前、墜落した宇宙船を助けた少女が過去に戻るアイテムをお礼に貰っていたが、彼らはここでタイムトラベルを繰り返していたらしい。

時には江戸時代まで遡ってしまうことも。

「メランコリア」(道満晴明)下巻より、宇宙人と出会った葛飾応為がエロ漫画誌を創刊
(「メランコリア」下巻より) 

ゲッサンやウルジャンを知った少女が後にエロ漫画家として江戸中に知られるようになったりもするのだが、これらの出来事の積み重ねで徐々にメランコリア彗星への影響が現れてくるのだろう。

一見して関わりのなさそうなエピソードが、結末に近づくに連れ繋がりを見せていく。

メランコリア彗星とは一体なんだったのか。 

「メランコリア」(道満晴明)下巻より、昏睡中のサトミの望み
(「メランコリア」下巻より) 

はじまりの少女サトミ。

下巻を読んでからだと、彼女の登場する1話の印象が変わってくる。

確認のために上巻を開いてまた最初から読み返すことになるだろう。

しかも「ニッケルオデオン」や「ヴォイニッチホテル」のキャラも登場するため、そちらもついつい覗いてしまう羽目に。 

「メランコリア」(道満晴明)下巻より、地下シェルターに入る家族(手塚家)
(「メランコリア」下巻より) 

手塚家といえば例のおじいちゃんであるが、シェルターの準備の際に忘れられるくらいには元気に過ごしているようだ。

このお父さんも前作では地味な印象だったが、やはり親子なんだなと思わせてくれるエピソード。(ほっこりはしない)

「メランコリア」(道満晴明)下巻より、メランコリア彗星を見物するエレナ
(「メランコリア」下巻より) 

待望の新人を部屋に閉じ込められてしまったホテルヴォイニッチの先輩メイド・エレナは、相変わらず人手不足の中で働いているが、小説「ナイトビジリア」執筆の相談役として活躍している模様。

最近では腐女子のファンも増えてきたとかどうとか。

あとがき

メランコリアのタイトルは「ニッケルオデオン」同様に映画ネタから。

終わったばかりだが、またこういう短編シリーズが始まってほしいな。

あとは「スーサイド・パラベラム」の単行本化と「あやめとあまね」の電書化を…

 

関連記事

「空電の姫君」4話(冬目景)ライブでのリベンジなるか?

$
0
0
「空電の姫君」(冬目景)4話より、扉絵(アルタゴの3人)

「空電の姫君」は冬目景による漫画作品。

月刊バーズで2016年より「空電ノイズの姫君」として連載を開始、同誌の休刊に伴い2019年よりイブニングへ移籍した。

4話は、ついに2度目のライブ当日、今度は失敗するわけにはいかない。 

 

前回はこちら。

磨音とアルタゴ、再びライブへ

散々だった初ライブの苦い思い出を払拭するためには、同じ状況でいい思い出に塗り替えるのが一番効果的。

ということで、磨音たちアルタゴのメンバーはリベンジに燃えているのである。

前回でがっかりしたファンがまた来てくれるかと言うと、あまり期待はできないのであるが、それはそれ。

「空電の姫君」(冬目景)4話より、父・拓海に励まされる磨音
(「空電の姫君」4話より)

当日は拓海も千諭も来れないらしく、アウェイ感は高まりそうだ。

むしろ保護者が毎回観に来る方が珍しいか。

先日の磨音のトラウマの件もあるので、父としては駆けつけたいところなのだろうけれど。

親バカだしね。

「空電の姫君」(冬目景)4話より、リハでギターを弾く磨音
(「空電の姫君」4話より)

見返したいのは元ファンだけでなく、トリのバンドDACE(デイス)に対してもそう。

前回そこのギタリストが磨音のことをちょっと気にしていたのだが本人は気付いていないだろう。

新生アルタゴの真の実力を、と行きたいところだったのだけれど、メンバーの体調不良で順番を入れ替えることになった。

ライブハウスの場合、客も目当てのバンドだけ観に来ることが多いために、急な変更は基本NGだと思うのだが、残念な結果かな。

ただし、リハでの磨音の演奏を意識させることはできたようだ。

もう少し知名度が上がってからの直接対決みたいな感じになるのだろうか。 

「空電の姫君」(冬目景)4話より、ギターアクションも必要?
(「空電の姫君」4話より)

磨音も、演奏時のパフォーマンスを気にする余裕が出てきたか?

元々がクラシック・ロック好きなのでいかんせん発想が古いのが難点ではある。

でもまずは音で納得させるところからだね。

 

関連記事

「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)地味魔女と今時魔女による落ちこぼれコンビのお仕事コメディ。

$
0
0
読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)扉絵

「六畳一間の魔女ライフ」は秋タカによる漫画作品。

ガンガンJOKER 2019年4月号に読切掲載された。

売れない魔女コンビのハートフルお仕事物語とのことで、見た目も性格も対照的な二人が一人前の魔女を目指す姿を描いている。

 

Twitterで連載されている顔に出ない子シリーズにも通じるところがあるかもしれない。

これの「ヨッシャァァン」のシーンが好き。

マッジとリリカの駆け出し魔女生活

新米魔女のマッジとリリカは六畳一間のアパート暮らし。

まだランクの低い二人は協会からも半人前扱いで、コンビとしての活動が条件なのである。

押し入れの中が魔女工房(勉強部屋)になっていて、一人の時間を必要とするマッジにとっては唯一の落ち着ける場所。

読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)より、魔女工房は押入れの中
(「六畳一間の魔女ライフ」より)

対してリリカの方はこだわらない性格で、距離の近さもずいぶん違う。

真逆のような関係が、お互いに影響を与えるであろうとの協会の考えなのかもしれない。

この距離感がとても心地よい。

街では魔女の存在も普通に受け入れられていて、それは便利な魔道具や派手な魔法でのエンタメ性を重視した方向転換によるものが大きいようだ。

時代の流れに適応した魔女を新魔女(いましきまじょ)、取り残されたものを古魔女(いにしえまじょ)と呼ぶ。 

読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)より、古魔女のマッジはセンスが20年は古い
(「六畳一間の魔女ライフ」より)

マッジはひと目でわかる魔女らしさを持っているものの、明らかに後者だ。

祖母直伝の薬学で、伝統ある魔女の力を知らしめたいとも考えている。

一方のリリカは新魔女で容姿もいい方なのだが、肝心なやる気が足りていない。

寝起きの姿など絶望的だ。

読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)より、新魔女のリリカは寝起きが悪い
(「六畳一間の魔女ライフ」より)

そろってCランク、どちらかというと落ちこぼれの数に含まれるだろうか。

 

本作は、そんな彼女たちが一人前の魔女を目指して奮闘する物語である。

有名人になるほどではなくても、魔女の仕事をこなしてもうちょっといい暮らしをしてみたい。

現状では、ランクの低い彼女たちに回ってくるのは雑用やおこぼれくらいのものしかない。

魔力の影響で大型化した動物の捕獲がいいところか。

協会の依頼をこなしていけばランクアップにつながるのかと言えば、そうでもなさそうなのだ。

読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)より、リリカの魔法攻撃(物理)
(「六畳一間の魔女ライフ」より)

ランク決定の基準にタレント性が含まれていそうなところが彼女たちには一番厳しいのかもしれない。

エンタメ向けには見えない種類だしね。

マッジは表情豊かでキャラはいいけどとにかく地味だし、リリカは華はあるのに愛想がない。

二人合わせてちょうどバランスがとれるくらい。

それでも今の彼女たちにも人々に喜ばれる余地があることを実感できたのは大きいだろう。

読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)より、マッジとリリカのやりたいこと
(「六畳一間の魔女ライフ」より)

いつも無表情なリリカが感極まった時の様子がかわいい。

もうちょっとだけがんばってみてもいいかもしれない。

せめておいしいものを食べられるくらいにはね。

 

今回は読切だけど、将来的な連載化を見据えているのかなという節はある。

恨み恋もクライマックスみたいだし、次回作は是非これで願いしたい。

 

関連記事

2019年3月に読んだおすすめ漫画まとめ

$
0
0
2019年3月に読んだおすすめ漫画まとめ

2019年3月に読んだ中で、おすすめの漫画をいくつか紹介する。

今月の注目作は、百合姫連載の期待作「ルミナス=ブルー」と道満晴明の連作短編集「メランコリア」。

 

前回はこちら。

「ソウナンですか?」4巻(岡本健太郎、さがら梨々)

修学旅行中の事故で遭難した少女たちの無人島サバイバル生活。

今回は、以前から仕掛けていた罠にイノシシがかかった。

全員で協力しなければ難しい大物との対面に彼女たちは?

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)4巻より、肉を手に入れて浮かれる
(「ソウナンですか?」4巻より)

島に流れ着いて初の食事を思えば、最高の食材に浮かれてしまうのも無理はない。

それはサバイバルに慣れたほまれであっても例外ではないようだ。

前巻では肛門から水を飲むという生半可では越えられない高みに至った感があったが、この巻でもなかなかどうして負けてはいない。

発売と同時にアニメ化も発表された。

どこまでやるの?

「味噌汁でカンパイ!」7巻(笹乃さい)

父子家庭で一人の時間が多かった中学生・善一郎と、毎日朝ごはんを作りに来るようになった隣の幼なじみ・八重の味噌汁生活。

7巻は自家製味噌づくりに挑戦したり、初めてのバレンタインのエピソードが描かれる。

八重の叔母が来れなくなったために代役の講師に選ばれたのはなんと家庭科の二見先生。

クールで生徒たちにも人気な彼女は実は乙女な性格で…

「味噌汁でカンパイ!」(笹乃さい)7巻より、まるで理想の家族
(「味噌汁でカンパイ!」7巻より)

善と八重の関係に萌える先生だったが、学校での絡みも増えてくるのかな?

「ルミナス=ブルー」1巻(岩見樹代子)

県立青島高校に転校してきた垂水光(たるみず こう)は、写真が大好きな女の子。

廃部になっていた写真部を復活させるため、元部長の葉山うちほと一緒にコンテストでの受賞を目指すことに。

クラスメイト秋本雨音(あきもと あまね)と青野寧々(あおの ねね)をモデルに会心の笑顔の一枚を撮るものの、二人は実は元恋人同士だと知るのである。

四人の女の子たちの友情と恋を描いていくが、個人的に気になっているのは雨音×うちほ。

「ルミナス=ブルー」(岩見樹代子)1巻より、破れた写真と葉山先輩
(「ルミナス=ブルー」1巻より)

幼なじみでそれぞれ片思い中の二人が惹かれ合っていくところを見たい。

いやむしろ片思いのままでも…

作者は太もも好きとのことで、それを裏付ける描写も多い。

眼福です。

「ホクサイと飯さえあれば」8巻(鈴木小波)

しゃべるぬいぐるみのホクサイと大学生ブンのごちそう漫画。

寒い雪の日、こたつとストーブが頼みのブン宅で灯油がなくなりそう。

いつものように入り浸っている凪のおつかいは、瓶の牛乳。

「ホクサイと飯さえあれば」(鈴木小波)8巻より、給食を作る気だ
(「ホクサイと飯さえあれば」8巻より)

給食を作る気だとすぐにピンとくる程度には馴染んでいるらしい。

食器や給食のおばさん風コスプレにもこだわったブンが用意したのは足立区ご当地給食のエビクリームライスだった。

先日、瓶のフルーツ牛乳(明治)が生産終了とのニュースが話題になったが普通の瓶入り牛乳も入手が難しくなっていくのだろうね。

ブンはいまでも凪が普通の中学生だと思っているようだけど…

「メランコリア」下巻(道満晴明)

メランコリア彗星の接近で終末を迎える世界を描く連作短編集。

AからZまでの頭文字をタイトルに持つ26話からなる物語。

それぞれの少し不思議な日常からはじまり、やがて緊迫感を増していき、終盤で一気に繋がっていく。

上巻の時はカウントダウンだと思っていたのだけど、これは循環する物語だった。

読み始めると止まらなくなる。

「メランコリア」(道満晴明)下巻より、お栄はゲッサンを手に入れた
(「メランコリア」下巻より)

お栄(葛飾応為)のエピソードが気に入っている。

彼女は墜落した宇宙船を助けたことにより、ゲッサンとウルジャンをお礼に受け取るのである。

やがて、江戸中にエロ漫画ブームを巻き起こすことになるのだが…

「天国大魔境」2巻(石黒正数)

大災害で廃墟となった世界で天国と呼ばれる場所を探すマルとキルコ、壁に囲まれた施設で外の世界に興味を持つトキオとミミヒメ。

2巻では、おねえちゃんことキルコの過去が明らかになった。

トマト天国の住人にとあるカートレーサーと瓜二つだと指摘されていた彼女の正体とは?

一方、施設の内部に侵入したトキオとククは保育器の中の異形の生物を目撃してしまう。

壁の中も外も安全な場所ではないようだ。

1巻ではトキオは男の子だと思っていたのだけど、実は女の子なのかもしれない。

たぶんストーリーには影響ないと思うけど。 

「天国大魔境」(石黒正数)2巻より、海の上でヒルコと戦うマルたち
(「天国大魔境」2巻より) 

今度の「人喰い」は積極的に襲ってくるぞ。

「はじめてのひと」4巻(谷川史子)

博物館で働く田中久緒から繋がる人々の、それぞれにとってのはじめてを描く群像劇。

4巻は同じ職場で時々登場していたメガネが印象的な北別府美登利がメイン。

友人の結婚式で袋の取り違えをきっかけに出会った男性・花房と一緒にランニング部を立ち上げる。

「はじめてのひと」(谷川史子)4巻より、北別府さんは負けず嫌い
(「はじめてのひと」4巻より) 

彼女はてっきり文化系なのかと思いきや、学生時代は陸上部でけっこうな負けず嫌いであるらしい。

トレーニングをしてイベントにも出場しようと張り切っていたのだが、彼の恋人が快く思っていないことが分かり…

花房の容姿とか子供っぽさが諏訪内を思い出させるのもあり、こいつめってなるが、明るくこだわらない性格は趣味仲間としてはいい相手だったのだけどね。

結末は5巻へ。

「上野さんは不器用」6巻(tugeneko)

中学3年生の上野さんは天才発明家。

現在、同じ科学部の後輩・田中に恋をしている。

彼女の発明は田中を振り向かせるためにあると言っても過言ではない。

今回はさらに、女子部長定例会や上野さんの1年時のエピソードが描かれる。

「上野さんは不器用」(tugeneko)6巻より、添木さんは彼氏持ち
(「上野さんは不器用」6巻より) 

唯一の彼氏持ちらしいことが判明した書道部部長の添木さんが質問攻めに合うなど、もはやただの女子会の様相を呈しているが、これからちょくちょく集まることになりそうだ。 

彼女の経験談が上野さんの参考になるのかどうか。

しっかり聞き耳は立てていたけどね。

「それでも歩は寄せてくる」(山本崇一朗)

「それでも歩は寄せてくる」(山本崇一朗)1話より、好きだと認めたらご褒美
(「それでも歩は寄せてくる」1話より)

Twitterで連載されていた「将棋のやつ」がパワーアップして帰ってきた。

自称将棋部部長の八乙女うるしと後輩の田中歩は、放課後一緒に将棋を指すことを日課にしている。

将棋で先輩に勝つことができたら告白するつもりの歩は、好きであることを頑なに認めようとはしないのだが…

先輩の破壊力が振り切れてます。

Twitterのときは中学生かと思っていたけど、高校生であることが判明した。

1巻の予約もはじまっている。

それでも歩は寄せてくる(1) (KCデラックス)

「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)

読切り「六畳一間の魔女ライフ」(秋タカ)より、魔女工房は押入れの中
(「六畳一間の魔女ライフ」より)

おんぼろアパートで暮らすマッジとリリカは新米魔女コンビ。

一人前の魔女になるために日々協会の依頼で仕事を受けて入るものの、なかなか生活は楽にならないようで。

押入れの中がマッジの魔女工房になっていて、彼女は一人の時間を大事にしているのだけれど相方のリリカがそれを許さないという状況。

ここの地味なシーンが二人の距離感が現れていてすごく好き。

ひとまず読切での掲載であるが、いずれ連載かもあるかも。

関連記事

「さよなら私のクラマー」35話(新川直司)興蓮館高校の切り札

$
0
0
「さよなら私のクラマー」(新川直司)35話より、藤江梅芽は厄介な選手

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

35話は、藤江梅芽を擁する興蓮館のターンが始まる。

 

前回はこちら。

天才・藤江梅芽覚醒なるか?

興蓮館高校の躍進の立役者であり選手たちの精神的な柱・藤江宇海の妹、梅芽。

まだ1年生の彼女は、チームに必要な最後のピース。

久乃木学園を倒して高校日本一になることを目指していた姉の宇海は、彼女が入学してくる今年を勝負の年と考えていた。

自分や来栖たちが及びもつかない才能をもっていることを感じているからだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)35話より、世界一のフットボーラーのお姉ちゃんにして
(「さよなら私のクラマー」35話より) 

一緒にインターハイに出ることは叶わなくなったが、その先にはもっと大きな夢がある。

それは妹が世界一のフットボーラーになる姿を見届けること。

恩田や井藤、国府の時も出てこなかった世界という言葉。

登場人物の中でも並外れたキャリアを持つはずの能見を超える逸材なのかもしれない。

試合前のやりとりでは、インハイ組からの飛び入りメンバーの中には入っていなかったと思われる。

おそらくは姉の事故を受けての精神状態を考慮してインターリーグの方に同行していたのだろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)35話より、藤江梅芽の働きぶり
(「さよなら私のクラマー」35話より) 

まだ遠慮がちで自分の持つ才能に自覚が薄い梅芽がその真価を発揮する最初の試合が蕨青南戦である可能性も?

インハイ組との連携も取れていて、次の世代では間違いなく彼女を中心としたチームになるだろうという気はする。

十分に厄介な選手なのだけど、この試合でリミッターの外れたプレイを見せられることになるはず。

ブレイク・スルーが待たれるのは恩田もなんだけど、ここのところおとなしすぎじゃない?

「さよなら私のクラマー」(新川直司)35話より、興蓮館の目標は久乃木に勝つだけではない?
(「さよなら私のクラマー」35話より) 

梅芽の機能しだした興蓮館を相手に、ワラビーズはどこまでやれるのか。

勝てる気は全然しない。

ただ、解説の浦川によると興蓮館の戦い方には疑問な点があるようで…

そこが付け入る隙になるのか、女王の風格を見せつけられるのか、はたして。

あとがき

今回までの内容が9巻になると思う。

5月までの新刊リストにはなかったので単行本は6月かな?

 

関連記事


「赫のグリモア」8話(A-10)若葉の実戦訓練

$
0
0
「赫のグリモア」(A-10)8話より、戦闘礼服は自分で用意

「赫のグリモア」はA-10(エーテン)による漫画作品。

別冊少年マガジンで2018年9月より連載を開始した。

新米魔導士、大麦若葉の『機構』での日々がはじまる。

大麦若葉は「魔獣」赤ずきんと死闘の末に契約。彼女は絵を具現化する力で人々を守る「書の魔導士」の使命を曾祖母・茜から引き継ぐ。魔導士の組織『機構』(ゲゼルシャフト)に加入することに決めた若葉。魔導士を襲う『兄弟団』(フラタニティ)が茜を殺したことを知り、若葉は彼らと戦う事を決意した。

(前回までのあらすじ:「別冊少年マガジン 2019年5月号」より)

 

前回はこちら。

『機構』での日々が始まる

『機構』こと国際歴史管理機構へ加入した大麦若葉は、星河美冬管理官の指導を受けることとなった。

彼女は総帥直属の作戦部の所属で、組織の中でもかなりのエリートである様子。

先日の親指姫事件での策士ぶりからもある程度の権限を持っていることは想像できる。

何より、彼女自身が若葉のことを気に入ったようなのである。

「赫のグリモア」(A-10)8話より、『機構』の理念とは
(「赫のグリモア」8話より)

大魔導師と呼ばれる曾祖母・茜から直接魔導書を受け継いだ若葉は新人ながら特殊なポジションにあるため、そのほうが都合もいいのだろう。

そこで改めて魔導士の歴史と組織の成り立ちを学ぶことになるのだ。

最初の魔女に魔筆を授けた存在との約束を守るために、ひいては人類史の存続のために組織の任務はある。

その約束の相手がおとぎ話ではなく、本当に存在するのだとしたら?

この辺が意味深なところ。

実は黒幕だったりラスボス的な何かだったりする可能性もなくはないことは覚えておきたい。

「赫のグリモア」(A-10)8話より、若葉を欲しいと思った理由
(「赫のグリモア」8話より)

星河管理官によると、若葉たちと機構がはじめて接触したあの日、親指姫まいあとのやり取りを見てすぐにでも欲しいと思っていたらしい。

その言動はナチュラルに機構の理念を体現するものであったのだと。

つまりは全ては演技だったのであるが、このさわやかな笑顔で言われると悪い気はしないね。

 

すでに魔導書持ちの若葉は、実戦訓練への参加も早かった。

例の腹黒女子・羽生乃恵瑠(はにゅう のえる)ともさっそくのコンビ結成で期待できそう。

「赫のグリモア」(A-10)8話より、今日の訓練にはあいつがいる
(「赫のグリモア」8話より)

そしてこの訓練、どうやら一筋縄ではいかないような雰囲気だ。

ちなみに任務時の戦闘礼服は魔筆で描き出したものらしいけど、若葉のデザインは1話で登場した茜ばあちゃんの若い頃のものとよく似ている。

色違いで少しシンプルにした感じ。

そっちの方も受け継ぐんだね。

「赫のグリモア」(A-10)8話より、若葉の映像が流出していた
(「赫のグリモア」8話より)

新たな場所で希望に満ちている若葉とは対照的に、不穏な人物の影も。

おそらくは『兄弟団』のメンバーなのだろうけど、『機構』の集合絵にいる人物に似ている気もする。

活動を続ける中で何かの秘密を知って絶望したのか、それともただの別人なのか。

潜入作戦の失敗の件も内通者や元関係者がいると考えた方が自然だし、そんな組織に認識されたとなると若葉の周辺も慌ただしくなりそうだ。

 

単行本も重版が決まったそうなので、紙の方も手に入りやすくなるはず。

2巻はページ数的に次の9話までが収録されるのではないかと思う。

早ければ6月あたりか。

 

関連記事

「人形の国」4巻(弐瓶勉)禁断の地・恒差廟、三つ巴の攻防の果てに

$
0
0

「人形の国」は弐瓶勉(にへい つとむ)による漫画作品。

2017年2月より月刊少年シリウスで連載を開始した。

自ら正規人形になれないことを知ったイルフ・ニクの国王カジワンは、タイターニアの腕を奪い逃走する。

向かった先は禁断の地と呼ばれる恒差廟(ごうさびょう)か?

表紙は帝国の上級転生者ジェイトとトオスのコンビ。 

タイターニアの腕を奪い、逃亡したカジワンを追うエスロー達。だがその背後にはリベドア皇帝の命を受けた上級転生者ジェイトが迫る。禁断の地「恒差廟」で、北合成スラブ地方全ての運命を左右する戦いが始まる……! 『BLAME!』『シドニアの騎士』の弐瓶勉が描くダーク・アドベンチャー・ファンタジー第4巻!

(「人形の国(4) (シリウスコミックス)」より)

 

前回はこちら。 

禁断の地へ

暴走するカジワンを追うエスローたち一行は、機械株のもとを訪れていた。

広範囲に配線を延ばし自立した脳を持つシステムは、周辺で起こった出来事を把握するのに都合がいい。

そしてこれらのアクセス権を持つことがタイターニアの腕が奪われた理由でもある。

「人形の国」(弐瓶勉)4巻より、カジワンにタイターニアの腕が癒着
(「人形の国」4巻より) 

放っておいてもまた生えてくるらしく、タイターニア自身にはあまり不便はないようだが、独立しても機能する腕を危険思想の持ち主の元に置いておくのは、どんな悪用をされるかわかったものではない。

実際に、カジワンの体には著しい変化が見られる。

自力では動けなかった彼が、タイターニアの腕の癒着によって人間離れした動きを見せはじめていた。

カジワンが向かう恒差廟には何があるのか、それはイルフ・ニクの王にだけ伝えられる秘密で、タイターニアすら知らない禁断の場所とされる。

首都を奪われ、里も滅ぼされた今となっては、彼の頭にあるのはリベドア帝国への復讐のみであるようだ。 

三つ巴の攻防

「人形の国」(弐瓶勉)4巻より、ウメが恒差廟に落下をはじめる
(「人形の国」4巻より) 

北合成スラブ地方の上空に浮かぶ「ウメ」はこの地域の天候調整機能を担っている。

地上に残された人々がまだ何とか暮らしていけるのもこの装置のおかげなのだが、カジワンはこれを帝国への攻撃手段として利用しようと考えていた。

今回はこの「ウメ」を巡って帝国・カジワン・エスローたちの3つの勢力が集結する。

カジワンは「ウメ」を帝国の首都に落とすために、エスローたちはそれを止めるために、帝国はこの機に乗じてAMBを奪うために。

成功しても失敗しても北合成スラブ地方は滅びそうだけれどね。

現在でも「ウメ」一つで賄いきれてはおらず、屋外では厳重な装備を必要としている状態。

これを失えば、エスローが暮していた白菱の梁のような環境におかれるのだろうか。

帝国の侵攻で土地を追われたイルフ・ニクの王が自らの手でとどめを刺そうとしているのは皮肉なものだ。

「人形の国」(弐瓶勉)4巻より、リベドア皇帝の能力は未来予知?
(「人形の国」4巻より) 

「ウメ」で帝都を狙えると考えているあたり、リベドア帝国の領土もそこまで大きくはないのかもしれない。

誤算があるとすれば、現在の帝国の首都は移動要塞であることか。

帝国の兵士たちのセリフから推測すると、おそらく首都は一度壊滅しているのだろう。

ただ、それだけの大きな出来事が知られていないのも考えにくいので、普段は定位置に留まっているのか、あるいは現行の首都も旧帝都から飛び立ったものである可能性もある。

「人形の国」(弐瓶勉)4巻より、カジワンの体から何かが出た
(「人形の国」4巻より) 

帝国の力も決して絶対的ではなく、これまで危機を脱してきたのが皇帝スオウニチコの能力によるものだとしたら…?

そこにカジワンが新たな第三勢力となるのか、というところ。

新しく生まれた自動機械の動向も気になる。

彼女に自我はあるのだろうか。

もしカジワンの意思を反映することに終止するなら危険な存在となりそうだが。

「人形の国」(弐瓶勉)4巻より、エスローの回復には長い時間が必要
(「人形の国」4巻より) 

次の5巻は、時代が進んでいるのではないかと思われる。

タイターニアの「とても長い時間」とはどのくらいのものなのか。

以前エスローがイーユとの戦いでヘイグス粒子を使い切った際には、目覚めるまで90日の期間を要していたが、今回はその比ではないだろう。

世紀を超えるまではいかないとは思うのだけど…

壮大な話になってきた。 

 

4巻は限定版はなしとのこと。

続きの25話は発売中の月刊少年シリウス 2019年5月号に掲載。 

関連記事

「きみが死ぬまで恋をしたい」8話(あおのなち)束の間の平和

$
0
0
「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)8話より、シーナとのおでかけを喜ぶミミ

「きみが死ぬまで恋をしたい」はあおのなちによる漫画作品。

コミック百合姫で2018年8月より連載を開始した。

 

前回はこちら。

とある日の午後

保健室に呼び出され、ミミに関する秘密を知らされたシーナであったが、だからといって何ができるわけでもない。

戦闘が苦手な彼女のような生徒が出撃を免れているのは、ミミが代わりに戦ってくれているおかげでもある。

せめてもの救いはミミがその事を苦にしていないことだろうか。

彼女は自分が戦うことはいいことだと信じている。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)8話より、シーナはお母さんみたい
(「きみが死ぬまで恋をしたい」8話より) 

オミ先生の魔法史の授業では、ちょうど禁止魔法を扱っていたが果たして偶然なのかどうか。

だが少なくとも今のミミにとって学校生活はとても充実したもののようだ。

身の回りのことを世話してくれるシーナはまるで母親のようであるし、制服を着てみんなと同じ教室で授業を受けたり食堂でご飯を食べたりできるのはうれしいらしい。

もう長いこと周囲から隔離され、窮屈で退屈な日々を送ってきたであろう彼女には、久し振りの人間らしい安らかなひとときであるに違いない。

いい方に考えれば、フラン先生の狙いもそこにあったのではないかというところか。

そうあって欲しいものなのだが、不穏な空気があることもまた否定はできない。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)8話より、ミミは学校創設前からいる
(「きみが死ぬまで恋をしたい」8話より) 

今回はそんなミミを外に連れ出す休み時間のエピソード。

午後の授業が休みになった二人は、裏庭の “お花畑” へとやってきた。

一面にデイジーが咲く野原でおしゃべりをするたわいもない時間。

これもまた友達らしい事のひとつに含まれるだろう。

何よりミミ本人が楽しそうなのが一番である。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)8話より、シーナからミミへ花冠のプレゼント
(「きみが死ぬまで恋をしたい」8話より) 

シーナに花冠のプレゼントをもらったミミの表情。

これはもしかしたら初めてなのかな?

 

学校では間もなく「返礼の日」がやってくるという。

施設の大掃除の日らしいのだが、クッキーを焼いたり先輩の服を貰えるかもしれないとのこと。

「きみが死ぬまで恋をしたい」(あおのなち)8話より、もうすぐ返礼の日
(「きみが死ぬまで恋をしたい」8話より) 

何らかの理由で着ることのなくなった服なのか、あるいはそのために用意してくれたものなのか。

シーナはわりと楽しみにしているようにも見えるので平和的なイベントなのかもしれないけど、片付けの最中に秘密を発見したりなんかして?

 

アリとセイランの部屋がちらっと出てくるけど、ベッドの使われ方がいいよね。 

 

関連記事

「ユリトラジャンプ」ウルトラジャンプ発の百合アンソロジー第2弾が発売!

$
0
0
ユリトラジャンプ~ウルトラジャンプ百合アンソロジー~ vol.2 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

ウルトラジャンプの百合アンソロジー「ユリトラジャンプ」の第二弾が発売された。

2018年と2019年に本誌に掲載された読切作品集である。

今回は100ページ近くの増量となる15作品を収録。 

 

収録作品:

「友達の友達は友達じゃない」(うたたね游) / 「西さんと東さん」(U-temo) / 「椿かわいや」(まるかわ) / 「あおいのうさぎ」(とこみち) / 「イタリアンビーフ」(青木潤太朗、品佳直) / 「FRIDAY IS THE DAY」(林家志弦) / 「仁義なき百合たち」(印度カリー) / 「YOUはリアルのVtuber!」(空木あんぐ) / 「二人の傷名」(色緒サトル) / 「まんが家ちゃんと編集さん」(まりん) / 「まるまるしかじか」(ふくまーや) / 「ギャルですが、クラスの地味子に求婚されています」(雪尾ゆき) / 「しまいぐらし」(おたき) / 「角を矯めて私を殺す」(道満晴明) / 「ブルー・ミゼラブルの城」(稚野まちこ)、表紙:川井マコト

 

前回はこちら。

「西さんと東さん」(U-temo)

「西さんと東さん」(U-temo)より、今日まだなんでやねん貰ってないよ
(「西さんと東さん」より) 

お笑い好きな東さんの最近の日課は、関西から転校してきた西さんから「なんでやねん」を貰うこと。

それは気になる女の子と話すきっかけでもあるのだが…

本当に欲しい言葉は別のセリフだったりしたりしなかったり?

ここの場面が、東さんがなんでやねん欲しがり過ぎみたいでかわいい。 

実際にそうではあるんだけど、気になる相手に言って欲しい言葉をテーマにうまくまとまっている。

「椿かわいや」(まるかわ)

「椿かわいや」(まるかわ)より、椿の精が夢枕に立つ
(「椿かわいや」より) 

地域活性化事業への転職のために田舎へ引っ越してきた山野シキ。

自治体が無料で提供してくれる古民家へ住めると喜んでいたのだが、そこは出る家だった。

彼女は庭に植えてある椿の木霊で、新しい住人に忠告するために現れたのである。

気難し屋で、寂しがりやで、ツンデレな彼女との生活はシキにとって大事なものになっていく。

「ギャルですが、クラスの地味子に求婚されています」(雪尾ゆき)

「ギャルですが、クラスの地味子に求婚されています」(雪尾ゆき)より、そんな所から会話に参加すんな
(「ギャルですが、クラスの地味子に求婚されています」より) 

見た目がギャルな女の子・花田は周りの生徒たちに怖がられている。

そんな中、彼女のことが大好きすぎるのがクラスメイトの山野。

花田のことをよく見ていて、髪の毛一本の変化さえ気付くほどである。

だから、彼女が本当は素直で優しい一面を持っていることも知っているのだった。

アプローチの仕方が少々変わっているが、その方が花田のかわいい反応を得られると考えてのことかもしれない。

唯一の友人の淡々としたツッコミが好き。

「角を矯めて私を殺す」(道満晴明)

「角を矯めて私を殺す」(道満晴明)より、クラス全員に角が生えた
(「角を矯めて私を殺す」より) 

とある学校のとあるクラスの生徒のみに起こっている頭にツノが生えてくる不思議な現象。

原因が何なのか誰にも分からない。

一年近くが経って特に害がないこともあり、今ではみんな普通に受け入れているようだ。 

ある日、クラスのひとり宗田カンナが角を無くしてしまった。

彼女はある秘密に気付いているようなのだが…

先月掲載されたばかりの新作がさっそく収録されているのはうれしい。

新刊「メランコリア」も傑作なのでそちらもおすすめ。

あとがき

一部だけ取り上げたけれど、今回は粒ぞろいでどれもよかった。

電子書籍限定なのでその点だけ注意。

 

関連記事

「異世界おじさん」1巻(殆ど死んでいる)17年振りに異世界から帰還したおじさんとのノスタルジック異文化コメディ

$
0
0
異世界おじさん 1 (MFC)

「異世界おじさん」は殆ど死んでいるによる漫画作品。

SNSでの公開を経て、2018年よりComic Walkerで連載を開始した。

17年振りに異世界から帰還したおじさんと、彼を引き取ることになった甥のたかふみの日常コメディ。

 

17年間の昏睡状態から目覚めたおじさんは、異世界からの帰還者だった……。甥っ子たかふみと共同生活を始めたおじさんが語る、新感覚異世界&異文化コメディ!

(「異世界おじさん 1 (MFC)」より)

おじさんは異世界からの帰還者

交通事故で17年間昏睡状態だった叔父が目覚めたと聞き、甥のたかふみが病室を訪ねると、そこには未知の言語を操るおじさんの姿があった。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)1巻より、病院で目覚めたおじさん
(「異世界おじさん」1巻より) 

看護師さんが全く動じてない所を見ると、そういう扱いなのだろう。

おじさんは17年の間「グランバハマル」と呼ばれる異世界にいたという。

剣と魔法の世界で冒険者として過ごし、ようやく帰ってこれたのである。

ただ、やはり17年は長すぎたようだ。

おじさんが眠っている間に世界は大きく変わり、喜んでくれるはずの家族はすでに離散してしまっていた。

差し当たっては生計を立てなければならないのだが、幸いおじさんには異世界で身につけた特技がある。

これは、なるしか…ないな? YouTuberに。

おじさんがYouTuberに?

たかふみの協力で新たな道を歩き出したおじさんには、こちらの世界でも有効な技の数々を使って動画配信に活かせるという強みがあった。

移動魔法や収納魔法、ちょっとした攻撃魔法なども便利そうだ。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)1巻より、おじさんの収納魔法
(「異世界おじさん」1巻より) 

これからおじさんが人気者になるのかどうか、そこは実は大した問題ではない。

本作は、異世界からの帰還者が元の世界での生活に適応していく物語でもあるのだが、そこもまあいい。

一番気になるのは表紙で目立っている女の子の存在なのである。

彼女は一体何者なのか? 

ツンデレエルフとおじさん

彼女はかつて危ないところをおじさんに救われたエルフの女の子。

それ以来、おじさんの周囲に現れては事あるごとに罵ってくるのだという。

旅立ちの当時17歳のゲームオタクでSE●A信者であったおじさんは、ツンデレの概念も知らず、女性心理にも疎かった。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)1巻より、おじさんのピンチを救ったエルフの女の子
(「異世界おじさん」1巻より) 

お世辞にもハンサムとは言い難く、美男美女だらけの異世界ではオークの亜種と見間違えられるほどで、ずっとソロプレイを続けてきたらしい。

なぜなら彼女を数に入れる考えはなかったようなのだ。

その言動を見るに、彼女は一生つきまとう気であり、明らかに彼に好意を抱いているのだが、そんなことを気にもかけないおじさんはことごとくフラグをへし折っていく。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)1巻より、パーカーを気に入ったエルフの女の子
(「異世界おじさん」1巻より) 

彼女の典型的なツンデレ反応に対するおじさんの眼差しの冷ややかさよ。

こんな扱いだからおじさんの異世界話の中でも省略されかけたりするのだけど、小出しにされる彼女の情報が気になってしょうがない。

その後の彼女は報われているのだろうか。

そしてそんなおじさんを似たような眼差しで見つめる人物がこちらの世界にも。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)1巻より、おじさんに殺意を抱く藤宮
(「異世界おじさん」1巻より) 

おじさんの存在を理由にルームシェアを断られた藤宮の闇の力がおじさんを狙う? 的な展開もありそうで楽しみである。 

 

関連記事

「空電の姫君」5話(冬目景)確かな一歩を踏み出した

$
0
0
「空電の姫君」(冬目景)5話扉絵

「空電の姫君」は冬目景による漫画作品。

月刊バーズで2016年より「空電ノイズの姫君」として連載を開始、同誌の休刊に伴い2019年よりイブニングへ移籍した。

5話は、アルタゴの出番がやってくる。 

 

前回はこちら。

アルタゴの登場と磨音覚醒!?

トリで出演予定だった対バン相手のDACE(デイス)と順番を交代したアルタゴ。

自分たちの出番の前にメインが終わってしまうということでもあるが、はたしてどうなるだろうか。

「空電の姫君」(冬目景)5話より、DACEの出番が終わる
(「空電の姫君」5話より) 

夜祈子が把握していないということはまともに告知できていないと思われるのだけど、これはだめでしょ。

出番が早まるよりは影響少ないはずだけど、都合がつかなくなる人が出てくる可能性があるのにまずい対応。

あるいはよほどチケットが売れてないのか。

残念ながらそのとおりであるようだ。

「空電の姫君」(冬目景)5話より、ガラガラの客席
(「空電の姫君」5話より) 

アルタゴ目当てで来たのは夜祈子だけなのかもしれない。

よくて隣の壁側のもう一人が追加されるかどうかだけどスマホ見てるあたり違いそう。

復帰二回目のライブでノルマ分も捌けない状況はかなり苦しい。

メンバー全員が他に友達いなさそうだからしかたがないか。

これが今の彼らの実力ということだね。

昔のアドバンテージはもはや無いと。

それはそれで腹を括るにはいいのかも。

あとは這い上がるのみだ。

「空電の姫君」(冬目景)5話より、磨音渾身のギターソロ
(「空電の姫君」5話より) 

この日の磨音の演奏を生で聴けなかったことを悔しがらせて欲しい。

ネットで一部の話題になったりする流れかもしれない。

少なくとも最後まで残ったお客を惹きつけることには成功したようで、その点は大きいと思う。

かえって強く印象づけたんじゃないだろうか。

アルタゴに足りていなかった自信と手応えを得て、確かな一歩を踏み出したというところかな。

ただ、このままだと経済的に苦しいね。

当面は辛抱が続くのか。

あとがき

今月、グランドジャンプにて「イエスタデイをうたって」のアニメ化が発表された。

どういう終わり方をするのか気になる。

原作は全11巻だし、多少省きつつラストまで描くのも可能かな?

詳細は分かりしだい追記する。

 

関連記事

「異世界おじさん」2巻(殆ど死んでいる)おじさんを狙う暗殺者登場?

$
0
0
「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻

「異世界おじさん」は殆ど死んでいるによる漫画作品。

SNSでの公開を経て、2018年よりComic Walkerで連載を開始した。

異世界から帰還しユーチューバ―として生計を立てるおじさんと、その甥っ子たかふみ。そして、たかふみに思いを寄せる幼馴染の藤宮さん。レギュラーメンバーが増え、やるせなさと面白さがさらに加速する第2巻!!

(「異世界おじさん 2 (MFC)」より)

 

前回はこちら。 

藤宮もレギュラー化

17年振りに異世界から帰還したおじさんとの共同生活をはじめた青年たかふみ。

文化の違いに戸惑うこともあるけれど、その奇想天外なエピソードの数々に興味は尽きない。

2巻に入って、おじさんに関する一番の驚きは、これまでの回想シーンが10代の頃のものだったということだろうか。

すでに伝説級のドラゴンを複数倒してるんですけど!?

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻より、酔ったおじさんを部屋に送るエルフ
(「異世界おじさん」2巻より)

驚異的な成長ぶりを見せるのは、ソロプレイを余儀なくされる過酷な環境に置かれたがゆえだろうか。

それに比べて対人関係のスキルがまだまだなのは仕方がない。

成人して祭りで初めての酒を味わった時には、例のエルフの女の子が最大のデレを見せるのだが、おじさんの対応は相変わらずだった。

あまりに不憫。

こんな体験を幾度も乗り越えておじさんの前に立ち続ける彼女はすごいよ。 

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻より、呑まなきゃやってられるかよ
(「異世界おじさん」2巻より)

最近部屋に入り浸るようになった藤宮も彼女には共感しかないようだ。

この鈍感さは甥のたかふみにもしっかり受け継がれてそうなので、他人事ではないのだろう。

幼馴染で親友認定されている分、いささかましであるくらいだが道のりは遠そうだ。

当初は恋路に邪魔そうなおじさんに殺気すら見せた彼女も、意外と協力的な反応に流されつつレギュラー化してきた。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻より、氷魔法を受ける藤宮
(「異世界おじさん」2巻より)

おじさんが特殊スキル持ちだということもすでに受け入れているが、むしろ疑う余地はないだろうなという気はする。

彼女の参加で鈍感な男性陣が見落としている点にもスポットが当たるかもしれない。

凍神剣のメイベル

今回の表紙になっているヒロインは氷の一族の末裔メイベル。

伝説のドラゴン・魔炎竜の封印を唯一可能にする凍神剣の守護者である。

彼女の凍てついた心を溶かすことで凍神剣を覚醒させるはずだったのを、おじさんが関わったばかりに引きこもりを悪化させてしまったのだった。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻より、メイベルに襲われるおじさん
(「異世界おじさん」2巻より)

その後の彼女が辿った道は想像に難くない。

村を旅立った彼女もやがて冒険者になる運命だろうか。

おじさんの周囲をうろつくにあたっては先人との衝突も危惧されるところではあったが、意外とうまくいきそうだ。

むしろおじさんの被害者の会みたいになってる?

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻より、メイベルとエルフの協定
(「異世界おじさん」2巻より)

さらに賑やかになる雰囲気であるが、これでも一人プレイだと言い切れるのか。

とりあえず第三のヒロインを楽しみにしたい。

次巻の表紙は藤宮という可能性もあるが。

 

関連記事


2019年4月に読んだおすすめ漫画まとめ

$
0
0
2019年4月に読んだおすすめ漫画まとめ

2019年4月に読んだ中で、おすすめの漫画をいくつか紹介する。 

注目作はクライマックスを迎えた「やがて君になる」。

 

前回はこちら。

「人形の国」4巻(弐瓶勉)

遺跡層に覆われた巨大な人工天体アポシムズ。

地上の覇権を狙うリベドア帝国に故郷を滅ぼされたエスローたちは、復讐のため旅を続けている。

4巻は、タイターニアの腕を奪ったイルフ・ニクの王カジワンが禁断の地とされる恒差廟(ごうさびょう)へ向かう。

彼の目的は、この地域の天候調整装置ウメをリベドア帝国の首都に落とすことであった。

かくして3つの勢力が恒差廟に集結することになる。

墜落までの緊迫感とAMBの争奪戦が熱い。

「人形の国」(弐瓶勉)4巻より、ウメ落下まで10秒
(「人形の国」4巻より)

タイターニアの要求が無茶振りっぽい。

今後カジワンが無視できない勢力に成長しそうな雰囲気で目が離せない。

「春とみどり」1巻(深海紺)

中学時代の親友の葬儀で出会った、彼女と瓜二つの女の子。

雪平みどりは、親類の人々の中で居心地の悪そうなその子に思わず一緒に暮らそうと提案するのだった。

「春とみどり」(深海紺)1巻より、みどりと春子の出会い
(「春とみどり」1巻より)

ぎこちなく始まる二人の同居生活をつなぐのは、お互いが知らないつぐみとの時間。 

春子は明るい性格で年齢のわりにしっかりしていてもまだ子供で、彼女の居場所をつくるために変わろうとするみどりと二人の成長を描いていく。

「五等分の花嫁」9巻(春場ねぎ)

学年一位の秀才が、家庭教師として教えることになった相手は、同級生の五つ子たち。

5巻は、新学期を前に一花が家賃の分担を提案する。

これによってアルバイト探しが急務となるが、むしろこれで公平なスタートラインに立ったと言えるだろう。

早くも決めたのは二乃&三玖。

フータローの働くケーキ屋を狙うが…

「五等分の花嫁」(春場ねぎ)9巻より、アルバイト先を選ぶ姉妹たち
(「五等分の花嫁」9巻より)

ここ最近の二乃がすごくいい。

姉妹の中では一番不利な立場にあるのだけど、そのことを自覚しつつ正面から向き合おうとするところは応援したい。

そして、一花は自滅する流れかな。

「化物語」5巻(西尾維新、大暮維人)

吸血鬼に魅入られた少年とその周囲に起こる怪異を描く物語。

5巻は、神原駿河に起こった怪異の事情を聞いた阿良々木が忍野のもとに彼女を連れて行く。

戦場ヶ原の側にいたいという、その願いの裏にある欺瞞を忍野は見抜いていて… 

「化物語」(西尾維新、大暮維人)5巻より、腕一本で解決するなら安い代償
(「化物語」5巻より)

その振れない厳しさはだからこそ頼りになる。

現実的な解決方法は神原の左腕を切断するか、阿良々木が命を差し出すかのどちらかだという。

二人は第三の解決方法を模索し戦いを繰り広げる。 

「青の島とねこ一匹」1巻(小林俊彦)

瀬戸内海の島へ教師として赴任した中村草太。

彼を迎えてくれたのは、下宿先の家の一人娘・青と猫のミケだった。

どうやら、父親である白神先輩は留守でいつ戻るのか分からないらしい。

「青の島とねこ一匹」(小林俊彦)1巻より、10年振りの再会
(「青の島とねこ一匹」1巻より)

10年振りに再会した青は見違えるほど成長していて、彼女との同居生活に戸惑うのである。

ちなみにこのミケがデキる猫で、送り迎えはもちろんのこと、迷子になった草太を見つけ出して案内してくれたりする。

もしやこちらが先輩か?  と思ったりもしたがそこまでファンタジーでもないらしい。 

「異世界おじさん」2巻(殆ど死んでいる)

17年振りに異世界から帰還したおじさんと、彼を引き取ることになった甥のたかふみの日常コメディ。

2巻の表紙は氷の一族の末裔メイベル。

伝説のドラゴン・魔炎竜の封印を唯一可能にする凍神剣の守護者であった。

「異世界おじさん」(殆ど死んでいる)2巻より、メイベルのその後
(「異世界おじさん」2巻より)

ある意味おじさんのおかげで引きこもり生活を脱した彼女は、冒険者として生きていくことを決意する。

おそらくはエルフのツンデレさんと一緒に周囲でよく見かけることになるだろう。

「幼女戦記」13巻(カルロ・ゼン、東條チカ)

統一歴1920年代、帝国と周辺諸国の戦争において、幼少ながら「ラインの悪魔」として恐れられた将校がいた。

13巻はアレーヌ市街戦。

帝国にとって西方方面軍の兵站を支える鉄道網の要衝であるが、もともと共和国寄りの土地柄なこともあり、反旗を翻した市民やパルチザンも含むことが考えられる。

長期化すると前線が干上がるため、迅速な作戦が必要であった。

問題となるのは「非戦闘員」が市内に存在しないとの解釈を引き出すこと。

「幼女戦記」(カルロ・ゼン、東條チカ)13話より、アレーヌ市街戦に挑む203航空魔導大隊
(「幼女戦記」13巻より)

大規模作戦が不可能とみて遅延戦闘を図ろうとする共和国に対し、ターニャ率いる第二〇三航空魔導大隊は法の抜け道を狙うのである。

今月始めに投稿されたツイートで少佐が女装との情報があったが、これはエイプリルフールのためのものだろうと思っていた。

まさか更に華やかに現実のものになるとは。

「アクロトリップ」2巻(佐和田米)

魔法少女ベリーブロッサムのことが大好きなオタクJCが、推しを輝かせるために悪の組織で奮闘するコメディ作品。

2巻は、風邪を引いたクロマの代理で地図子が変身デビュー。

クロマ自身のデザインしたコスチュームで、参謀ダンテとして華々しく活躍するするはずが… 

「アクロトリップ」(佐和田米)2巻より、フォッサマグナ参謀ダンテ変身デビュー
(「アクロトリップ」2巻より)

途中で遭遇した父に魔法少女と間違われ動揺してしまう。

ベリーブロッサムとの戦いまでたどり着けるのか。

クロマとマシロウが新人時代のエピソードも収録。

「ゆるキャン」8巻(あfろ)

オフシーズンに一人でキャンプをすることが好きな志摩リンと、富士山を見るためにキャンプ場にやってきた各務原なでしこ。

二人の出会いからゆるく始まるまったりキャンプ生活の輪。

8巻は、クリスマス以来の合同キャンプとして伊豆へ出発する。

今回は「チビイヌ子」こと犬山あかりも参加、さらに賑やかな道中になった。 

「ゆるキャン△」(あfろ)8巻より、なでしことチビイヌ子は相性バツグン
(「ゆるキャン△」8巻より)

なでしことは相性よさそうだね。

リンのバイクのメンテにあたっての家族のエピソードもよかった。 

「やがて君になる」7巻(仲谷鳰)

「好き」を口にしてからすれ違いが続いている侑と燈子。

誤解は解けないまま2年生は修学旅行へ。

7巻では沙弥香がついに告白を決意する。

と同時に「思いを伝える。その時は、もう来ている」は3人それぞれが自分の気持に向き合うことも意味していた。

「やがて君になる」(仲谷鳰)7巻より、燈子に思いを伝えた沙弥香
(「やがて君になる」7巻より)

カフェの店長・都にもひと目で見抜かれた程度にはわかりやすい沙弥香の気持ちに、燈子が気付いていないわけもなく。

牽制されつつも踏み込んだ沙弥香のモノローグ「育ち続けて胸を破った言葉は、たしかに燈子に届いたんだ」がよかった。

次の8巻で完結との予告ページも収録。

最良の形で締めてくれだろうとの安心感はある。

関連記事

「さよなら私のクラマー」36話(新川直司)ワラビーズ最大の危機

$
0
0
「さよなら私のクラマー」(新川直司)36話より、チームを落ち着かせる曽志崎

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

36話は、勢いに乗り出した興蓮館を相手に混乱するチームをフォローしようとする曽志崎だったが…

 

前回はこちら。

曽志崎が離脱!

藤江梅芽を中心とした興蓮館の攻撃に、蕨青南の守備が乱れ始めていた。

準決勝までのデータとは強さも戦い方もまるで違う相手。

序盤こそ何とか凌いでいたものの、傾いた流れは止まりそうにない。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)36話より、ファールで梅芽を止めに行く曽志崎
(「さよなら私のクラマー」36話より) 

このまま大量失点もあり得るのではとも思われたが、こんなときに頼りになるのはやはり経験豊富な司令塔の曽志崎である。

中学時代はキャプテンとしてチームを全国へ導き、世代別代表でもある彼女は強者と戦う際の心構えを理解している。

ファウルで作った時間で味方を落ち着かせる場面などは1年生とは思えぬ頼もしさだ。

蕨青南にとってなくてはならない存在であることは間違いない。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)36話より、曽志崎が退場に
(「さよなら私のクラマー」36話より) 

今回は、その曽志崎を欠いた状態で戦い抜かなければならない状況に置かれることになった。

まだ前半、リードを許したまま人数まで少なくなる緊急事態。

しかも相手は日本一になったばかりの最強の敵。

さすがにこれは無理でしょと思わざるを得ないところなのだが。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)36話より、何かを期待してるように見えますよ
(「さよなら私のクラマー」36話より) 

ここから逆転する目はあるのか、チーム最大の危機に選手たちの発奮は期待できるのか。

この絶望的な状況からなにができるのか見せてもらいたい気持ちはある。

カツオちゃん曰く、逆境でこそウチのダーリンはかっこいいんだからとのことなので、現役時代にそんな頼りになる姿を見てきたのかもしれない。

これから先、主力を怪我や出場停止で欠くことも当然出てくるだろう。

それをテストマッチでもあるこの試合で経験しておくのも結果的にはよかったと言えなくもない。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)36話より、試合の行く末を見届ける義務がある
(「さよなら私のクラマー」36話より) 

なんにせよ初めてのケースだ。

曽志崎のいないチームがどのような戦い方をするのか楽しみな部分もある。

少なくともここから勝つつもりでいる人間が二人はいるみたいだしね。

もしそれができるのならとんでもなく熱い展開になりそうだ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)36話より、恩田のスーパーゴール
(「さよなら私のクラマー」36話より) 

深津監督の見せ場でもあるだろうし、高萩監督との現役時代のエピソードも絡めて描かれるだろう部分が見てみたい。

 

単行本9巻の発売日は6月17日に決定。

来月号は久々に表紙に登場するとのことなのでこれが採用されるのかな?

ただし女子W杯応援特別イラストらしいので描き下ろしの可能性もある。

 

関連記事

「MAO」(高橋留美子)妖怪を追う青年と少女の出会いからはじまる怪奇浪漫!

$
0
0
週刊少年サンデー新連載「MAO」(高橋留美子)1話扉絵

「MAO」は高橋留美子による漫画作品。

週刊少年サンデーで2019年5月より連載を開始した。

境界のRINNE」以来1年半ぶりの新作は、妖を追う青年と少女の出会いから。

今度はシリアス怪奇浪漫!

交錯する二つの世界で二人は出逢う、やがて来る“運命”にそなえて――

シン・るーみっくわーるど、ついに開幕――!!

(「MAO」(高橋留美子)1話より)

死んだことがある女の子

黃葉菜花(きば なのか)は中学3年生の女の子。

事故で両親を亡くした後は祖父とお手伝いの魚住さんと一緒に暮らしている。

彼女自身には後遺症などはなさそうだが、見た目に反して人より運動が苦手なのが悩みどころだろうか。

「MAO」(高橋留美子)1話より、菜花は食後のスムージーが苦手
(「MAO」1話より) 

魚住さんが毎朝作ってくれる地獄の泥沼みたいな味のスムージーが健康の素かもしれない。

事故のあった場所はこの数年で寂れてシャッター街になり、近頃はユーレイが出るとの噂も流れるようになっていた。

菜花にとっては家への近道としていつも通る道のひとつでしかないのだが、ある日ここで他の人には聞こえない音を聞いてしまう。

それから彼女の身に不思議な事が起こり始め…

「MAO」(高橋留美子)1話より、化物に襲われる菜花
(「MAO」1話より) 

タイトルの「MAO」は、不思議な街に迷い込んだ彼女を助けてくれた青年の名前(摩緒)でもある。

このことをきっかけに彼の妖怪退治に協力していくのかと思いきや、何と妖は彼女自身であった。

しかも力が強いため何かで封じられているのだという。

「MAO」(高橋留美子)1話より、菜花は妖?
(「MAO」1話より) 

ベタな展開からセリフ一つで覆していくのはさすが。

事故が原因で妖が宿ったのか、それとも血筋なのか、魚住さんは人間なのかどうかとかいろいろ気になってくる。 

 

連載開始に合わせてTVCMも公開された。 

高橋留美子最新作『MAO(マオ)』TVCM(ナレーション:山口勝平、ゆきのさつき) - YouTube 

 

解説付きの別バージョンPVも。 

高橋留美子最新作『MAO(マオ)』PV 犬夜叉とかごめが第1話を解説!! - YouTube

 

開始前は最後の長期連載になるのでは? とも噂された本作だが、まだまだ先の話になりそうだ。

かつて「らんま1/2」でラブコメの洗礼を受けた身としては、日常系ラブコメを読んでみたいという気持ちはあるけれど。 

 

関連記事

「赫のグリモア」9話(A-10)近付く脅威

$
0
0
「赫のグリモア」(A-10)より、トンネルで待ち構える星川従徒隊

「赫のグリモア」はA-10(エーテン)による漫画作品。

別冊少年マガジンで2018年9月より連載を開始した。

乃恵留と共に『機構』の実戦訓練に参加した若葉は、大型の野良魔獣と遭遇するが…

大麦若葉は「魔獣」赤ずきんと死闘の末に契約。彼女は絵を具現化する力で人々を守る「書の魔導士」の使命を曾祖母・茜から引き継ぐ。魔導士の組織『機構』(ゲゼルシャフト)に加入することに決めた若葉。魔導士を襲う『兄弟団』(フラタニティ)が茜を殺したことを知り、若葉は彼らと戦う事を決意した。

(前回までのあらすじ:「別冊少年マガジン 2019年6月号」より)

 

前回はこちら。

野良魔獣駆除の任務

『機構』での初めての実戦訓練に挑むことになった若葉たち。

コンビを組む相手は従徒(スクワイア)主席の羽生乃恵瑠である。

訓練とは言っても、野良魔獣駆除の任務に参加する本格的なもの。

一歩間違えば命の危険もあるだろう。

「赫のグリモア」(A-10)より、他の魔獣と仲が悪い羽生詩枝瑠
(「赫のグリモア」9話より)

現場を担当する執行部2班の神田辺かんだべり隊には乃恵瑠とは姉妹の羽生詩枝瑠はにゅう しえるが所属している。

前回で姉妹間の確執が存在することが判明したが、自分とこの班でも口の悪さは相変わらずのようだ。

魔獣たちの返しもまた、これが日常的な光景なのだろうと思わせる。

それでいて班長補を任されているところを見ると仕事はきっちりやるタイプなのかもしれない。

「赫のグリモア」(A-10)より、魔獣と遭遇する星川従徒隊
(「赫のグリモア」9話より)

今回の作戦は、トンネルに潜伏している魔獣を一方から神田辺隊が追い込み、若葉たち星川隊が迎え撃つかたち。

「人造魔獣」という言葉が出てきていたが、戦時中に作られた破壊兵器のようなものだろうか。

見た感じ意思の疎通はできなさそうだ。

この辺は野良だからなのか人造だからなのかは不明。

現場に残された車などを喰らい肥大化する厄介な相手ではあるものの、危機等級は低めと新人向けに配慮はされているらしい。

一人前の魔導士からすれば楽な仕事なのかも。

「赫のグリモア」(A-10)より、若葉の前に現れる団長
(「赫のグリモア」9話より)

まだ戦闘慣れしてない若葉の場合は経験を積むことが急務である。

乃恵留がやっていたように武器や道具をデッキ化する方法は確かに合理的で、そういった基本的なことを学べるのも一緒に組ませた理由かもしれない。

描画スピードやセンスで補っている若葉もすごいのだけど、彼女の成長があかずきんの能力を引き出すことにつながるのであれば、まだまだ伸びしろは大きいだろう。

敵がそれを待っていてくれるとは限らないが…

「赫のグリモア」(A-10)より、魔獣を召喚した星川美冬
(「赫のグリモア」9話より)

次回が緊急事態に発展しそうで目が離せない。

兄弟団の団長は星河美冬管理官と旧知の仲のよう。

というより元『機構』の仲間なんだろうね。

同期だったりするのかな?

ちなみにTwitterでの情報によると星河管理官はJD設定ということが判明している。

意外と若い。

 

6月の新刊リストにも情報が載っていなかったので2巻は7月以降になりそう。

 

関連記事

「MAO」2話(高橋留美子)その力は妖の呪いか

$
0
0
「MAO」(高橋留美子)2話より、事故現場で妖に遭遇する菜花

「MAO」は高橋留美子による漫画作品。

週刊少年サンデーで2019年5月より連載を開始した。

妖に襲われたところを助けられた次の日から、自らの変化に気付いた菜花は再び街を訪れる。 

黃葉菜花(きば なのか)は運動が苦手な中学3年生。6歳の時、商店街の陥没事故に一家全員巻き込まれ自分だけ生き残る過去を持つ。ある日その商店街を通り明らかに現代でない地に着く。そこで出会った少年・摩緒に「妖」と言われ困惑する中、翌日の登校中に驚異的な身体能力を発動。さらに自身の眼にも変化が…

(前回までのあらすじ:「週刊少年サンデー 2019年24号」より)

 

前回はこちら。

菜花と摩緒の共通点

迷い込んだ不思議な街で、怪我をした腕の治療を受けてから、菜花のからだに異変が起き始めていた。

運動に関しては周りの子たちより鈍かった彼女が、人並み外れた動きを見せる。

摩緒の行った解毒が原因と思われるが、菜花の中に封じられているものは何だろうか。

「MAO」(高橋留美子)2話より、濃いめのスムージーを用意してもらう
(「MAO」2話より) 

今まで普通の生活ができていたのは、魚住さんが作ってくれているスムージーに秘密がありそうだ。

むしろ怪しいのがこれくらいなのだが、菜花が見ただけで逃げ出す味の飲み物は、一体なにでできているのか気になる。

祖父も魚住さんも、菜花の現状を把握しているのかどうか。

知っている方が自然ではあるけれど、スムージーのあまりの不味さに偶然抑えられている可能性もなくはない。

「MAO」(高橋留美子)2話より、再び街を訪れる菜花
(「MAO」2話より) 

商店街を訪れた菜花は、再びあの街に入ることに成功する。

そこでは、摩緖と従者の乙弥が街の調査を続けているらしい。

彼らもまた同じ日にたどり着いたこの街の謎に興味を持ったようだ。

結界の内側と外側との違いはあれど、両者には共通点がある。

「MAO」(高橋留美子)2話より、摩緒の血で溶ける妖
(「MAO」2話より) 

それは化け物を溶かしてしまう血の持ち主ということ。

このことが二人を同じ場所に引き寄せたのかもしれない。

摩緒はこの血の効果を猫鬼(びょうき)の呪いと呼び、背中には大きな爪痕が残っていた。

8年前、菜花が炎の中で見たものと関わりがあるのだろうか。

「MAO」(高橋留美子)2話より、猫鬼に呪われている
(「MAO」2話より) 

仮にそうだとして、摩緒にも同じような身体の変化が起こっているのか。

彼は陰陽師が生業らしいので、その知識で抑え込んでいる可能性もありうる。

もしくは彼女のものが呪いではなく猫鬼そのものが封印されていたりして。

その場合、そのことを知った摩緒はどうするだろうか。 

 

関連記事

Viewing all 772 articles
Browse latest View live