「ガールズ&パンツァー 樅の木と鉄の羽の魔女」 はむらかわみちおによる漫画作品。
ComicWalkerで2018年11月より連載を開始した。
福島県にあるとされる伯爵高校の戦車道部の活躍を描くスピンオフである。
全国大会に出場しないため、高校戦車道界では無名存在である、伯爵高校戦車道部。それが今、全国屈指の強豪・サンダース大付属高校との練習試合に挑んでいる。戦車道部の2年生、小檜山野咲(こひやま のえみ)にとっては、III号戦車N型の車長に抜擢されてから初めての試合。車長用ハッチから身を乗り出して見る風景も、肌に感じる風も、すべてが野咲にとっては初めてのもの。戦いの場の緊張感を肌で感じるとき、野咲が思い出すのは“魔女先輩”と過ごした時間--。
伯爵高校 vs. サンダース大学付属高校
伯爵高校戦車道部には、次の車長を卒業生が指名するという伝統がある。
2年生になる小檜山野咲(こひやま のえみ)は、魔女先輩から3号車の車長を引き継いだ。
模範特待生ストリーガの魔女称号を毎年授与されていた先輩は、野咲にとって憧れの人。
自分がその後をうまくやれるのか不安の方が大きかった。

前車長の魔女先輩は卒業し、砲手と装填手の関係だった五十嵐先輩は7号車の車長を任されている。
現在の乗員は操縦手として同学年の舛倉杏奈(ますくら あんな)と、砲手と装填手を務める双子の1年生・那知上恵梨花(なちがみ えりか)と花梨(かりん)を加えた四名。
若いチームを率いる彼女の責任は重大なのである。
本作では、新編成となった伯爵高校戦車道部が、強豪・サンダース大学付属高校との交流戦に挑む様子を描いている。
かつての魔女先輩の勇姿を思い起こす野咲は、その理想に近付けるのか。

公式戦にほぼ出場しないため無名校の扱いであるものの、弱小というわけではないらしい。
年に数回、他校との交流試合を行う中で、不思議な存在感を示しているようなのである。
それは、伯爵高校最大の特徴である魔女科の存在が理由だろう。
ルーマニアには魔女が職業として残っていると言うけれど、この学校でも自然科学の分野の一つとして学んでいると思われる節がある。
農業科の野咲にも魔女先輩を介してその心を伝えられているようだった。

正直よくわからないのだが、「魔女にとって鉄は植物」、「肌感覚を大事に」というあたりが野咲が先輩から引き継げた部分であり、彼女に期待されていた素質なのではないかと思う。
自然の中での変化を読み取り、活かすこと。
確かに彼女にはその力があるようだ。
ただし、全身で集中するため最中の無防備さが弱点か。
先輩だったらもっとスマートにやってみせたのだろうか。

他校に捉えどころのない相手だと思われているのは、彼女たちにとって学びの実践の場としての扱いだからなのかもしれない。
「伯爵高校の車長は魔女の心を継いでいければいいの」のセリフはおそらくそのことを示している。
公式戦ではないとは言え、極端に試合数が少ないことが理由ではなく、定石を定石と見ていないのだろう。
その点、タロットカードと民族舞踊カルシャリを駆使した独特のリズムの存在に気付いたサンダースの隊長はさすがだった。

おなじみの三人組も登場する世代。
ちなみに伯爵高校の隊長はコウモリをモチーフとした帽子とドラキュラのマントのようなケープが特徴である。
部員たちには厳しい面も見せるが、非情に徹しきれない所にツンデレの波動を感じる。
本編では出てこないが、設定資料にある「本当はマリナちゃんと呼ばれたい」の部分が好き。

野咲の独断を許容した判断が吉となるか?
単行本での巻数表記が上なので、次が最終巻であることが判明した。
あとがきによると当初は単巻の予定だったそうで、むしろ読める機会が増えていることは喜ばしい。
でも本当はもっとじっくり読みたいタイプの作品なので、サンダース編以外も別の形で描いて欲しいな。