
2019年6月に読んだ中で、おすすめの漫画をいくつか紹介する。
注目は最終巻を迎えた「いそあそび」と新作の「ささやくように恋を唄う」。
前回はこちら。
「いそあそび」3巻(佐藤宏海)
海辺の町で一人暮らしをする訳ありの元お嬢様と同級生たちの自給自足生活、最終巻。
今回はついにセトさんの父親が登場、家族で再び暮らせるようになるのか。
再起を図っていた父が関わる一大プロジェクトが、星海町の再開発に関することだと知った彼女たちは、景観を守りつつ町の問題を解決する方法を模索するのだった。
セトさんの置かれている状況はあくまで一時的なものであり、いつかはこの生活が終わる時が来るのだろう。
最終巻を迎えるにあたり、その点にも決着が描かれている。

纏めない終わらせ方もあったのだろうけど、未来につながる結末でよかったなと。
初登場時のセトさんは自作の銛で魚突きをやろうとしていたが、結局彼女には一番向いている方法だったようだ。
このお嬢様らしからぬヤンチャさと笑顔が好きだった。
「さよなら私のクラマー」9巻(新川直司)
高校女子サッカーを舞台に、弱小蕨青南高校で奮闘する選手たちを描く群像劇。
9巻はインターリーグ決勝戦が開始、相手は久乃木学園と日本一を争う興蓮館高校である。
表紙は、チームを全国強豪に押し上げた功労者・藤江宇海(ふじえ うみ)と新たにチームの核となる梅芽(うめ)の姉妹。
もともとこの大会はインターハイ出場を逃した高校や強豪校の控え選手の実戦経験の場となっていて、興蓮館といえどもBチームのはずだったのだが…

どうしても出場を希望する選手たちがいたりして、どうやら手強い相手になりそうだ。
このへんが「さよならフットボール」のネタでなつかしい。
今、最も勢いのあるチームを相手にワラビーズの力がどれだけ通用するのか、そして深津監督の手腕が試される時でもある。
「ささやくように恋を唄う」1巻(竹嶋えく)
高校の新歓ライブをきっかけに出会った二人。
木野ひまりと朝凪依(あさなぎ より)はお互いに一目惚れをするのだが、その意味はそれぞれ違うものだった。
そのことに気づいた時にはもはや手遅れで…

これで付き合ってるわけではないのである。
甘々じゃないですか。
二人とも相手のことが大好きなのだけれど、そこに恋愛感情を持ちだしてしまったらどうなるのか。
あと、巻末のおまけが最高だった。
「ゆるさば。」3巻(関口太郎)
ある日突然、自分たち家族以外の人類がいなくなったら…
裕木家の四人が、廃墟となった東京でサバイバル生活を繰り広げる。
3巻は、自宅以外の活動拠点をつくるため別荘地を探す旅に出ることに。
子どもたちの希望は海!
お台場のあたりでホテルを再利用して、と考えるが、家から離れるほど年月が経過していることもあり、なかなか一苦労なのである。

そして、ツムギとモモの間で姉妹喧嘩勃発。
釣りを覚えてからタンパク源確保の大きな戦力となったモモに対して、まだ一度も狩りを成功させていないツムギはそのことを気にしていたようだ。
モモの煽りを受けて別行動になると思いきや…
結局ツムギがいないと心細いのだ。
二人の仲直りの仕方がかわいかった。
実際、命を奪うことへのハードルが段違いなのであるが、ここぞという場面では決めてくれるはず。
「私以外人類全員百合」1巻(晴瀬ひろき)
ある日、目が覚めると世界は女性だけになっていた。
しかもそのことを不思議に思っているのは茉莉花ひとりだけなのである。
隣のクラスの秀才美人・香散見りりと知り合ったことをきっかけに調査をすすめる茉莉花は、別の世界の自分と入れ替わったのではないかという仮説にたどり着く。

もしそうならば、元の世界に戻れる方法もあるのではないかと。
タイトルの圧の強さに、読まずにはいられない作品。
真実に近づくに連れ、どうしようもなく相手に惹かれていることに気付いていく点がみどころ。
最後はどんな選択をするのかな。
「ふしぎの国の有栖川さん」8巻(オザキアキラ)
過保護な祖父に育てられた箱入り娘の有栖川さんと、天然王子な野宮くんとの恋物語。
満を持して交際を始めた二人の前に、最後の障害として祖父が立ちふさがる?
夏祭りの一日だけ特別に門限の延長をしてもらった有栖川さんだったのだが、そのことが知られ以前より重い制限が課せられることに。
祖父への信頼を取り戻し、なおかつ交際にあたっての揺るがぬ意思を示さなければならない。

ちなみに監視役の慧は律の兄である。
堂島家との繋がりは彼がきっかけになったようだ。
律以上のドSで、祖父にあることないこと吹きこまれた手強い相手。
今後の二人にとって、ここが正念場となる。
巻末のあとがきで、次巻で完結することが示唆された。
「熱帯魚は雪に焦がれる」5巻(萩埜まこと)
四国の海沿いの街に転校してきた少女と水族館部の先輩の日々。
年が変わり、帆波先輩はもうすぐ受験生になる。
東京の海洋大学への進路を考えている彼女に対して、協力的な態度を見せる周囲の姿に少し寂しさを覚えるのだった。

今回は表紙に楓が登場、帆波先輩の相談役として出番が増えている。
子供の頃は姉たちにべったりで、長期休暇にも帰ってこないことに不満な妹としての側面も持つ彼女は、正に適役なのだ。
変わりつつある帆波先輩を応援しようとする家族の姿とかすごくいいんだけど、先輩としては自分がいなくなることをもっと寂しがって欲しいんだよね。
そのへんをうまく伝えられるといいのだけど。