「図書館の大魔術師」は泉光(いずみ みつ)による漫画作品。
月刊good!アフタヌーンで2017年より連載を開始した。
本編での図書館の表記は「圕」(囗に書)である。
帯の言葉は、「転生でもない、最初から勇者でも英雄でもない、一から始まる王道ファンタジー!!」 。
アムンという小さな村に暮らす耳長の少年は本が大好きであったが、耳長で貧乏だった為、村の図書館を使うことができなかった。そんな少年は差別が存在しない本の都・アフツァックに行くことを夢見る。ある日、少年は憧れのアフツァックの図書館で働く司書(カフナ)と出会う。この司書との出会いが、少年の運命を大きく変えることに──。孤独な少年が未来を切り拓く、異世界ビブリオファンタジー堂々開幕!!
(「講談社コミックプラス」より)
本の都に憧れる少年
書を護ること、それ即ち世界を護ること也
本の都アフツァックにある中央図書館には、大陸中の全ての本が揃っていると言われている。
その膨大な蔵書を管理する専門の職員は司書(カフナ)と呼ばれ、人々の尊敬を集める存在であった。
彼らの普及活動のおかげで、辺境の小さな村でも図書館がつくられ、人々に開放されている。
アムンの村に住むシオは、本が大好きな少年である。

特に、正義の海賊シャグラザットの冒険物語は、この村で窮屈な思いをしている彼には心躍るものであったらしい。
周りの人間とは違う髪の色や長い耳を持ち、貧民街に育ったことで、不当な扱いを受けてきた。
いつかはこの村を出て、外の世界を見てみたい。
そんな彼の転機は、村にカフナが視察に訪れた時の事。

その内の一人、守護室のセドナとの交流が彼の未来を決定付けることになる。
彼女は、やや芝居がかった物言いで、本編の人物紹介でも「かっこつけてるのがうっとうしいことも」と書かれるくらいなのだけど、この時の少年には、それが強く印象に残っただろう。
家族以外に好意的な言葉を掛けられたことがほとんどない彼には、物語の中のように外の世界へ連れ出してくれる“主人公”みたいに映ったかもしれない。

そもそも本作は「風のカフナ」という原作がある体裁で描かれている。
“風の” という言葉は(冒険の)旅をイメージすることも出来るが、シンプルにセドナのことを指していると考えていいと思う。
物語の始まりとなった人物である。
司書(カフナ)の仕事
カフナに関してはまだまだ謎に包まれている。
地方の図書館でも司書の言葉は使われているが、カフナと呼ばれるのは中央図書館の司書のみのようだ。
12の部署が存在すると言及されていて、現時点で明らかになっているのは3つ。

今回アムンの村にやって来たのは修復室、渉外室、守護室のカフナ達。
遠征部隊としては分かりやすい編成だろうか。
依頼のあった本の回収に来た彼女たちは、それぞれの仕事振りを見せてくれるが、守護室はちょっと特殊な業務のようだ。
本やカフナ達を護るために、相手をするのは人間だけではない。
この世界には魔術書と呼ばれる本が存在し、取り扱いには細心の注意を必要とする。

セドナは、大気をコントロールする風の魔術師。
まだ若いが、この技術に関しては守護室でも敵なしと言われている。
まさに風のカフナ、主人公に相応しいキャラである。
彼女に預けられた一冊の本、世界のために戦った大魔術師と図書館の物語を読んで育った少年は、やがて本の都アフツァックを目指す。
今度は自らがカフナになるために。

セドナの最後のセリフが好きだ。
性格半分、演出半分てとこなのかな。
彼女の言葉で、少年は夢を持った。
誰かが連れ出してくれるのではなく、自分の力で切り開いていける夢を。
あとがき
1巻はちょうどきれいに終わっている。
ページ数もだいぶ多めで、物語のプロローグとしてキリのいいところまで収録されているので安心して買って欲しい。
そして2巻を楽しみに待とう。
初版は帯に白浜鴎(「とんがり帽子のアトリエ」)の推薦文付き。
今のところ、今年一番の期待作。