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「繭、纏う」(原百合子)新入生へ贈られる伝統の制服の秘密をめぐる群像劇

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コミックビーム新連載「繭、纏う」(原百合子)1話扉絵

「繭、纏う」(まゆ、まとう)は原百合子による漫画作品。

月刊コミックビームで2018年2月より連載を開始した。

これが初の連載とのことだが、1話目から掲載誌の表紙を飾り期待の大きさがうかがえる。

初コミックス『熱海の宇宙人』で鮮烈な印象を残した新鋭が贈る、大注目の初連載作!!
「制服が息する音、聞いたことある?」 森に隠されるように建つ星宮女学園高等学校。少女たちが纏う伝統の制服は、まるで“生きている”かのように美しく……。ビームデビューの才能が紡ぎだす、まばゆく切ない青春群像劇。

(「コミックビーム OFFICIAL WEB SITE」より)

星宮女学園の伝統

都心から電車で二時間、深い林の中にある星宮女学園。

12月の冬休みが近づいた午後、長い間受け継がれてきたこの学園の伝統の行事が始まろうとしていた。

「繭、纏う」(原百合子)1話より、星宮学園の伝統は新入生に制服を作ること
(「繭、纏う」1話より)

高等部では、新入生へ手作りの制服が贈られる。 

それは、このために入学してくる生徒も多いというほど魅力的で、大切に守られてきた伝統であるようだ。 

3年生の横澤洋子もその一人。 

彼女は、制服が息をしているのがわかる気がするという。 

「繭、纏う」(原百合子)1話より、制服が息をしているのがわかる
(「繭、纏う」1話より)

自らの心と連動して、嬉しかったり、しんどかったり、浮かれていたりとかを、制服も感じているように思えるらしい。 

人のはわからないというから、自分の体の一部のように緊密な感覚であるのかもしれない。 

制服が生きている、その感覚はこの学園の伝統と大きく関わっている。

繭の君

クラスには最近寮に篭りぱなしの生徒がいて、教師たちも口出ししないらしい。

学園長の孫娘で名は星宮だが、繭の君とあだ名されるようになった。

彼女はなぜ引きこもっているのか。

おそらくその理由が、この学園にこれから起こる事件のきっかけとなるはずだ。

「繭、纏う」(原百合子)1話より、あの窓を期にしていること
(「繭、纏う」1話より)

洋子と特別親しい佐伯華も、繭の君の住む寮の窓が気になるようである。

理由を知っている? それとも…

 

現時点では学園ドラマなのかサスペンスなのか展開が読めないが、百合要素は期待できそうだ。

髪の毛や制服の繊維感がこだわりを持って描かれている。

「繭、纏う」(原百合子)1話より、突然の風に舞うもの
(「繭、纏う」1話より)

中庭に突然吹く風の中、彼女たちの目に繭の君の部屋での異変が映る。

それは学園の伝統を揺るがしかねない出来事。

繭の君とはどんな人物なのか。

「繭、纏う」(原百合子)1話より、繭の君の窓から異変が
(「繭、纏う」1話より)

青春群像劇とのことなので、これからそれぞれの視点で描かれていくのが楽しみである。

 

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「SWEET SIDE」前編(紀伊カンナ)笑顔のまぶしいメイド登場【シリーズ連載】

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「SWEET SIDE 前編」(紀伊カンナ)より、扉絵(メイド喫茶の少女キキ)

「SWEET SIDE」は、紀伊カンナによる漫画作品。

FEEL YOUNG 2018年 03月号に掲載されている。

もともと同誌で2016年から不定期連載されているシリーズ物の一編でもあるようだ。

2016年7月号(6月8日発売)「誰だってスカイラーク」34頁
2017年1月号(12月8日発売)「魔法が使えなくても」44頁+センターカラー+表紙
2017年7月号(6月8日発売)「パラダイス!」30頁+センターカラー
2017年12月号(11月8日発売)「杉並区にて」32頁
2018年3月号(2月8日発売)「SWEET SIDE」24頁+センターカラー

(「鳥と海賊(紀伊カンナ公式ブログ)」より)

通称はまだない様子。

次の後編あたりまでで1冊目出るかも。

アニメーターの千代は、バンド活動をしているたまきと同棲中の同性カップル。千代の元・同僚で、現在無職の岸は、想いを寄せていた千代に無神経なことを言ったことでビンタされ、傷心の為に実家に帰省した。

(前回までのあらすじ)

 

今回は、岸を心配した友人が彼を外に連れ出すエピソード。

どちらかと言うと傷ついているのは無神経なことを言われたらしい千代の方であるはずなのだが。

「SWEET SIDE 前編」(紀伊カンナ)より、千代を慰めるたまき
(「SWEET SIDE」前編より)

自分のことよりも恋人のたまきの事を悪く言われたことに怒っている。

前回までを読んでいない立場からすると、全面的に彼女が正しいだろうなと。


一方の岸という男、実家に帰省したはいいものの、家業を手伝うでもなく、家事を手伝うでもなくゴロゴロしているだけの日々を送り、とうとう妹に追い出されてしまう。

戻ったボロアパートでは無気力にゲーム三昧で電話にも出ない。

何が悪かったのかにも思い至らず、周囲に八つ当たりしたりするのだった。

ただ友人には恵まれたようだ。

「SWEET SIDE 前編」(紀伊カンナ)より、いつまで絶望してんだよ
(「SWEET SIDE」前編より)

家まで押しかけた鶫(つぐみ)は元同僚でもあり、いつも彼をはげましてくれていたらしい。

今度も彼をコンセプトカフェへ誘い連れ出してくれる。

扉絵のメイド姿の女の子キキは、そこの店員であった。 

「SWEET SIDE 前編」(紀伊カンナ)より、キモイしめんどい客来た
(「SWEET SIDE」前編より)

初対面の岸を的確に表現するとこはさすが。

ほんと超キモイよな?

彼女は地下アイドルをしながらこの店で働いている。

接客マニュアルなんてお構いなしの自由さで、それでも憎めないキャラでたくましい。

近々デビューらしく、イベントの営業も忘れない。

「SWEET SIDE 前編」(紀伊カンナ)より、チェキの売上がキキのお給料だよ
(「SWEET SIDE」前編より)

少々雑なところはあるけどそれもご愛嬌。

こんなこと言われたらチェキ撮っちゃうね。

彼女がこの店以外でやっていけるのかは分からないのだが、ひとつ言えるのは、地に足をつけて生きている。

まだアイドルだけでは食べていけないことが理由ではあるのだけれど、嫌々やっているわけでもない。

今の自分にやれることをやって頑張っている。

「SWEET SIDE 前編」(紀伊カンナ)より、アイドルだってお仕事さ
(「SWEET SIDE」前編より)

いじけた中途半端な野郎にはまぶしい笑顔だ。

後編はそんな彼女の笑顔を見た岸が復活する流れかな。

会う機会があるなら千代にも謝らないとね。

それより気になるのは、今後キキの出番はあるのかということなんだけど。

どうなんですかね。

 

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「丁寧に恋して」1巻(サワミソノ)台湾への修学旅行をめぐり交錯する想いと秘密

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「丁寧に恋して」(サワミソノ)1巻 (HARTA COMIX)

「丁寧に恋して」はサワミソノによる漫画作品。

2017年3月より、ハルタにて連載を開始した。 

台湾行きの修学旅行前夜。明かしてはならない、ラブ・トライアングラー。
この学校には、日本で暮らす台湾人の美少女がいた。彼女の名は丁寧(ディン・ニン)。クラスきっての魅力的な女の子だが、彼女の家は貧しくて台湾行きの旅行代が払えない。あきらめた丁寧のために代金を立て替えた男がふたり。ひとりはクラスメートで、もうひとりは先生。恋ゆえか、それとも愛か――。そして秘密の修学旅行が始まる!

(「丁寧に恋して 1巻 サワミソノ:コミック | KADOKAWA」より)

 

台湾への修学旅行を前に、一人の生徒が職員室を訪れる。

彼はクラスメイトの女の子に想いを寄せていた。

相手の丁寧(デインニン)は家庭の事情で修学旅行を諦めようとしているのだが、代わりに費用を立て替えたいと申し出たのだった。

「丁寧に恋して」(サワミソノ)1巻より、永松の申し出に感動する同僚の教師
(「丁寧に恋して」1巻より)

テスト前には授業ノートのコピーが出回るくらい几帳面で、周囲からも文字通り丁寧(ていねい)と呼ばれるいい生徒なのである。

担任の豊田も今回の件では憂慮していた一人であるし、できればなんとかしてやりたい。

高校の修学旅行は一生の思い出にもなるかも知れず、しかも彼女にとっては故郷でもある。

永松の申し出はありがたい話であるはずだった。

「丁寧に恋して」(サワミソノ)1巻より、モヤッとする豊田先生
(「丁寧に恋して」1巻より)

ただ、彼の差し出した金額では足りていないのだ。

それでも高校生にとってそれを用意するのは大変だったはず。

その気持ちを汲んで不足分を埋めてやるのが自分の役割かもしれないと思いつつも、豊田はモヤっとする気持ちを抱えていた。

 

事はそう単純ではない。

本人とその家族にはどう説明するのか、他の行けない生徒への対応はどうするのか、他の教師との口裏合わせも必要になる。

あげくに手柄は全部持って行かれる。

実に損な役回りなのだが、彼の葛藤が本作の大きな見所でもある。 

「丁寧に恋して」(サワミソノ)1巻より、豊田先生のストレス解消法はカフェでスイーツを食べること
(「丁寧に恋して」1巻より)

一方の永松も、秘密にしてほしいと言いながら言動が危ういところがある。

彼女と一緒に行きたいあまりに申し出た経緯から、その後の動向が気になってしょうがない。

現時点ではただのクラスメイトなので、この機会に仲良くなりたいと思ってもいる。

「丁寧に恋して」(サワミソノ)1巻より、丁寧と豊田先生の会話が気になる永松
(「丁寧に恋して」1巻より)

それぞれの思惑を胸に、秘密を共有している彼らを各自の視点から描いていく。

多少の納得いかないことはあっても、あとで後悔することに比べたら些細な事かもしれなかった。

忘れられない思い出になりそうな旅行には、さらなる問題が待ち構えていた。

費用を分担したことが裏目に出そうな流れである。

「丁寧に恋して」(サワミソノ)1巻より、母が積立貯金をしてくれていた
(「丁寧に恋して」1巻より)

それぞれの金額に対する認識が違うことが事態を複雑なものにするだろう。

板挟みにあった豊田は無事切り抜けられるのか。

1巻は約280ページと珍しいサイズなんだけど前後編みたいになるのかな。

 

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「とんがり帽子のアトリエ」18話(白浜鴎)ココの好きな魔法

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「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)18話より、ココはリチェの魔法が好き

「とんがり帽子のアトリエ」は白浜鴎による漫画作品。

月刊モーニング・ツーで連載中。

17話は、それぞれの魔法に対する接し方の違いが描かれる。

 

前回はこちら。 

魔法使いを目指すことになったココは、魔法使い・キーフリーに弟子入りすることに。だが、母親を石の魔法から解くべく連日無理をして魔法を学んでいたことがたたって、倒れてしまう。担ぎ込まれた病院で再会したのは、魔法使いになることを諦めていた魔材屋の少年タータだった。タータの看病の甲斐あって、ココは無事に回復し、アトリエに戻った。

(「前回までのあらすじ:とんがり帽子のアトリエ」より)

ココの得意な魔法は

回復して元気になったココは、相変わらずアトリエで魔法陣の練習をする日々が続いている。

少しでも早く成長したくて無理をしていたのも、目標の設定が不明瞭な点もあっただろう。

だが一つの希望が見えたことで、ココの精神も穏やかさを取り戻した。

彼女の描く魔法陣は、以前に比べるとだいぶ安定してきたようだ。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)18話より、ココの得意はまっすぐ描くこと
(「とんがり帽子のアトリエ」18話より)

その中でもついつい同じ陣を使ってしまう事があり、そういった無意識に出てくるものこそ得意と呼べるものかも知れない。

かつて村で母の手伝いをしていた頃、彼女の採寸の手際は素晴らしく、その正確でブレない線はキーフリーも目を見張ったほどであった。

道具に慣れてくることで、彼女の本来の持ち味も表れるようになった。

でも一番の良さはその素直さにあるのだろうなというところ。 

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)18話より、賞賛のための語彙力が乏しい
(「とんがり帽子のアトリエ」18話より)

魔法陣の構成を覚えて自分にも使えるようになればなるほど、本に描かれている陣のすごさが理解できてきた。

ただし語彙力はまだまだの様子。 

書物で新しいものを知ることが好きなココと違い、リチェはそういったことが苦手らしい。

この辺は彼女がこのアトリエに来る以前の出来事と関係あるようだ。 

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)18話より、リチェは描きたくないものを描かされるのが嫌
(「とんがり帽子のアトリエ」18話より)

魔法試験の話が出てきた時も態度がおかしかったけども、トラウマになるようなことがあったのか。

キーフリーのセリフで、リチェが以前は別の魔法使いに弟子入りしていたことが触れられていた。

センシティブな問題らしく、キーフリーやオルーギオも慎重に対応している。

テティアとは動機こそ異なるが、彼女も自分の魔法を追及したいと思っているようである。

ココの反応で少しずつ癒されていくのかも。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)18話より、オルーギオの新作魔法器
(「とんがり帽子のアトリエ」18話より)

ちなみにオルーギオは久々の登場。 

新しい魔法器を完成させて部屋から出てきた。

キーフリーやココが寝不足を心配して安眠できるアイテムを作っていたらしい。

ツンデレさん。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)18話より、アガットの試験の日が決定
(「とんがり帽子のアトリエ」18話より)

そしてアガットの第2の試験の日程が決まった。

大講堂から連絡が来たばかりだが、3日後に行われることに。

時間がないが、本人は待ちに待った報せ。

すでに準備はできているだろう。

あとがき

2月23日に単行本3巻が発売される。

今回は紙の場合のみ限定版が登場。メモ帳&付箋ブックが同梱されるようだ。

また、続きが今月号で追えるようになっているが、アンケートプレゼントとしてアクリルジオラマセットやQUOカードが抽選で用意されている。(電子書籍版も応募可能)

ちなみに紙版では着せ替えカバー付き。

欲しい。

 

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「モブ子の恋」2巻(田村茜)初めての休日デート

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「モブ子の恋」は田村茜による漫画作品。

月刊コミックゼノンで2017年3月より連載を開始した。

脇役の恋に急展開…!?

第2巻では、田中さんが想いを寄せる入江くん目線のお話も収録!正直、1巻よりもキュン度はかなりアップしています!少しずつ近づいていく2人の距離、その一つ一つの行動全てにキュンとすること間違いナシ!

第1巻発売直後に売り切れ店続出!知っている人は知っている、今一番応援したいラブストーリー、待望の第2巻☆

(あらすじ:モブ子の恋 ② | 徳間書店より)

 

前回はこちら。 

 

スーパーでアルバイトをしている大学生の田中信子は、人見知りで地味な女の子。

働き始めて1年が経つものの、仕事以外でのやり取りは緊張する。

いつも考えすぎてしまい、他人との距離感をつかむのが苦手であった。

そんな彼女のいいところは、他の人が見過ごすような些細なことにも気を配れること。

「モブ子の恋」(田村茜)2巻より、落とし物届に四つ葉のクローバーが
(「モブ子の恋」2巻より)

来店していた小さな女の子が無くした、母へのプレゼントの四つ葉のクローバーを、誰かの落し物と考えて保管していたこともあった。

最近入ってきた新人の安部さんの影響で、少しずつ積極的になっていく様子が見られる。

明るく、人見知りもしない安部さんは、趣味も独特であることも判明したが。

「モブ子の恋」(田村茜)2巻より、安部さんの趣味は個性的

(「モブ子の恋」2巻より) 

今回は、アルバイトのメンバーでの水族館行きを経て、信子が気になっている入江君との二人でのデートがメイン。

同い年の入江君も恋愛には疎く、自分には縁のないものだと思っていた様子。

好きな人と出かけることなんて、一生に一度だって無いと思ってたという信子と似た者同士である。

そんな二人が、ぎこちなくも未知の世界に踏み込んでいく。

「モブ子の恋」(田村茜)2巻より、デートの服装選びをがんばる信子
(「モブ子の恋」2巻より) 

「デート 服装」で検索することにすら後ろめたさを感じる心配性な信子。

恋人同士じゃなくてもデートでいいのだけど、考えすぎてしまう。

対する入江君も、自分は相手を褒められる立場じゃないとスルーしてしまう。

でもそういうことがマイナスにならないほどの初々しさ。

別れ際に手を振ることを覚えたばかりなので、これからゆっくり進んでいけばいい。

「モブ子の恋」(田村茜)2巻より、靴擦れして絆創膏を貼ってもらう
(「モブ子の恋」2巻より) 

彼の恋愛面への疎さには利点もある。

履きなれない靴でかかとを痛めた彼女に絆創膏を貼ってあげる場面。

こういった気遣いを当たり前にできる事はかなりの好印象だ。

2話での、自転車から庇って抱き寄せてしまう場面もいい。(個人的にはこれで購読を決めた)

彼女の目には頼りになる男の子として映っているが、先輩の金子から「田中さんの前だとしっかりしてんだね」との発言も飛び出したことから、無意識のうちに姿を追っていた可能性も浮上した。

「モブ子の恋」(田村茜)2巻より、自分の恋を自覚する入江君
(「モブ子の恋」2巻より) 

彼女への恋心に気付いた入江君の行動がどうなっていくのか。

あとがき

巻末の特別編では篠崎さんのキャラが伺えるエピソードが収録されている。

先輩同士で仲良さそうだけどそのへんも今後のお楽しみ。

2巻の表紙は前回とは逆の立ち位置。

パーカーの紐を握りしめたままだが、顔を上げて前を向いた目線と背景色で積極性を表している。

ちなみに続きの11話はギリギリ最新号の月刊コミックゼノン2018年3月号で読めるが、4月号は明日(2月24日)の発売である。

 

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「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」1巻(川村拓)当選金と家族を守れるか?先輩vs妹、第1ラウンド。

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「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」(川村拓)1巻(角川コミックス・エース)

「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」は川村拓による漫画作品。

月刊少年エースで2017年10月より連載を開始した。

冴えない高校生活を送っていた柏木伊月が、一縷の望みをかけて買った宝くじ。

思いがけず高額当選をしたことにより、その日々は波乱の毎日へと変わる。

当選金を狙う先輩や同級生たち、妹を名乗る転校生の登場。

秘密を、家族の生活を守り切ることができるのか。

 

前回はこちら。 

先輩vs妹、第1ラウンド

高校生になって七億円を手に入れた。

周りの人間の何かが変わって…父が消え…

三億五千万円をたった一夜で失って、とっても怪しい妹ができた。

当選後に突然現れた初対面の女の子に、妹だと告げられた伊月。

いくらなんでもタイミングが良すぎじゃないかと疑ってはみるものの、示された証拠が彼女が妹であることを物語っている。

恋人のいたことのない伊月にとって、貴重な出会いであったかもしれないのだが、いくらかわいくても妹ではしかたがない。

「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」(川村拓)1巻より、「残念だったね、かわいい私が妹でさ」
(「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」1巻より)

だがこの怪しい妹が、柏木家を守る切り札となる。

失踪した父が、頼りない息子の代わりに送り込んだのかもしれないのだ。

七億円を狙う先輩、高峰こむぎの追求をかわすためには、妹・夏乃の存在が欠かせない。

1巻後半の見所はこの二人の対決にあるだろう。

「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」(川村拓)1巻より、先輩VS妹第1ラウンド
(「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」1巻より)

先輩は修羅場もくぐってそうな表情である。

幼い頃、伊月にお嫁さんになってあげると言っていた少女と同一人物とも思われない。

この10年の間の彼女に何があったのか。

みんなにそう言っていた可能性もなくはないけどね。

「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」(川村拓)1巻より、先輩の探りをかわす夏乃
(「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」1巻より)

この狡猾な先輩は伊月が当選者だとアタリをつけて揺さぶりをかけてくる。

彼一人であったなら、騙されて即落ちしていてもおかしくない。

父に対する信頼の無さも問題かもしれないが。

そもそも妹の発言もハッタリである可能性もある。

「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」(川村拓)1巻より、カマをかける先輩
(「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」1巻より)

表面上は飽くまで笑顔で、穏便に対話は進んでいくが、このまま先輩があっさり引くはずはない。

学校内にも外にもコネを持っていそうであるし、単独でも十分怖いのだ。

第2、第3の 手を打ってくるだろう。

あるいは別に黒幕がいて、先輩を味方に引き込む可能性があったりするのだろうか。

「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」(川村拓)1巻より、七億円見ーつけた
(「七億円を手に入れた僕にありがちなこと。」1巻より)

この人が味方なら頼もしい限りだけど、代償も高そうな気がするね。

むしろ学校中がこんなのばっかりだったりして。

柏木家の前途はまだまだ多難である。

 

続きの6話が同日発売の少年エース 2018年4月号に掲載されている。

 

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「ゆるキャン△」5巻(あfろ)それぞれの年越し

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「ゆるキャン△」(あfろ)5巻(まんがタイムKRコミックス)

「ゆるキャン△」はあfろによる漫画作品。

まんがタイムきららフォワードで2015年より連載を開始した。

TVアニメ2018年1月放送開始! 楽しかったクリスマスが終わり、大晦日、お正月が近づいて…。 過ごし方はそれぞれ違うみたいだけど、やっぱりリンは一人でキャンプに…? あなたは次の初日の出、どう見ますか?

(ゆるキャン△│漫画の殿堂・芳文社より) 

前回はこちら。 

せまる年の瀬

クリスマスキャンプを終えて迎えた年末、野クルのメンバーはアルバイトに励んでいた。

なでしこも、斉藤に紹介された郵便局の臨時の仕事を始めている。

キャンプ道具で欲しい物があるようだ。

以前行ったアウトドアショップ「カリブー」で見つけたガスランタン。

リンが持っているものと同じタイプのコンロの棚にあったもの。

小さな焚火みたいで一目惚れしたのだが、その時のなでしこには手が出ない値段だった。

最初のキャンプの記憶が焚火とカップラーメンである彼女にとって、思い入れのある買い物になるかもしれない。

「ゆるキャン△」(あfろ)5巻より、振り返りリン
(「ゆるキャン△」5巻より) 

この5巻では、それぞれの冬休みの過ごし方が描かれる。

リンだけはしっかりキャンプへ出かけているが。 

もともと閑散期のソロキャンプが好きな彼女には絶好のタイミングでもあるだろうか。

場所によっては初日の出目当てで賑わう可能性もある。

当初は伊豆行きを予定していたが、御前崎経由で磐田方面へ。

海を見て珍しくはしゃぐ姿も見られるのは内陸出身者らしいが、だいぶなでしこに影響されてきているようだ。

初日の出を見に

一方、野クルメンバーは年賀状の配達があるなでしこの代わりに、犬山あおいの妹・“チビ犬子”が参加し身延山へ初詣に出かけている。

「ゆるキャン△」(あfろ)5巻より、イヌ子たちの初詣
(「ゆるキャン△」5巻より) 

身延山は標高1000mを越える山で、山頂へはロープウェイで行くことができ、山梨県で一番人気の初詣スポットらしい。

気軽に見晴らしのいい場所で初日の出が見られるとなるとそれも納得できるね。

今回はなんとグビ姉がお酒を飲まないのだが、素面の彼女は本当に面倒見のいい先生であった。

初めて見せる顧問らしさと言ってもいいかもしれない。

年が明けて

年明けのなでしこは浜松にある祖母の家に来ていた。

「ゆるキャン△」(あfろ)5巻より、おばあちゃんちで正月を
(「ゆるキャン△」5巻より) 

初登場の幼馴染・土岐綾乃と、予定より足を延ばしたリンと一緒に正月を過ごす。

引っ越してからもこまめに連絡をとっていたらしく、キャンプの写真でよくリンの姿を見ていたという。

おそらくリンと綾乃は立場的に近いものがあって共感できることが多いのだろう。

バイク乗りでもあるので、そのうち遠出してなでしこのキャンプに参加する姿が描かれるはず。

でもバイクにまたがるなでしこの似合わないこと。

いずれ原付免許くらいは取るんだろうか。

スピンオフ「へやキャン△」での未来の姿(想像)では空飛んでたけどね。

「ゆるキャン△」(あfろ)5巻より、来年はもっとキャンプを
(「ゆるキャン△」5巻より) 

いつものリンだったら、キャンプは1月までで終わっていたとのこと。 

2月は雪とかで大変そうだし、暖かくなったら人が増えてきそうだしかな。

なでしこを通して仲間もできて、今度の春はこのまま続いていきそうである。

むしろ活発化していくのかもしれない。

「ゆるキャン△」(あfろ)5巻より、斎藤さんと初日の出
(「ゆるキャン△」5巻より) 

あとがき

次の6巻はなんと電子書籍が先行配信。

紙の単行本は一週間遅れの3月12日予定。

やるな芳文社。

 

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「さよなら私のクラマー」22話(新川直司)久乃木を倒したチーム

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「さよなら私のクラマー」(新川直司)22話より、勝つのは私達だ

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

22話は、インターリーグ準決勝、相手は久乃木学園を破った栄泉船橋である。

 

前回はこちら。 

栄泉船橋戦、開始

準決勝に進んだ蕨青南は、謎の多い栄泉船橋と対戦する。

関東大会で高校日本一の久乃木学園を破りながら、全国への切符を手にできなかったチーム。

彼女たちが大番狂わせを起こしたのはなぜなのか。

これからその実力が明らかになるだろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)22話より、栄泉船橋の過去戦績
(「さよなら私のクラマー」22話より) 

過去の大会での戦績は、失点の少なさと、最小失点差での勝利が目立つ。

能見コーチは「典型的な堅守のチーム」と判断するが、もちろんそれだけではない。

久乃木学園も守備に定評のあるチームであり、そこからより多くの点を取るのは容易ではないはず。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)22話より、栄泉船橋の守備の秘密
(「さよなら私のクラマー」22話より) 

その秘密は、フィールド・プレイヤー全員での守備にあった。

徹底された組織力による堅守速攻のスタイル。

興味があれば以下の記事を参考にしてもらうとして。

アトレティコ、“世界最強の4-4-2”。シメオネが解決した構造的弱点。3段式の守備構築【西部の4-4-2戦術アナライズ】 | フットボールチャンネル

問題は、これを指導者を持たない高校生が行っているということである。

深津監督も能見コーチも驚愕のクオリティ。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)22話より、久乃木と栄泉は相性が悪い
(「さよなら私のクラマー」22話より) 

もちろん全国の舞台には届かないということは、まだまだ改善の余地はあるのだろうけれど。

監督の方針としてロングボールを制限している久乃木学園はこれに苦戦した模様。

そんなチームに蕨青南の攻撃が通用するのかというところ。

恩田ー曽志崎ー周防で抜け出しそうな場面もあったが、佃の言うところのマッシュルームコンビに遮られた。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)22話より、暗躍する浦川茜
(「さよなら私のクラマー」22話より) 

栄泉で曲者の選手は、3年生でキャプテンの浦川茜であった。

生来の天邪鬼だった彼女が、子供時代に感じた「ボールなんか持たなきゃいいんだ」の思いを貫き通したチームである。

指導者のいないチームで戦術への理解を徹底させるにはかなりの時間と努力を要したはずだ。

天邪鬼なのに真っ直ぐという、熱いフットボーラーである。

ちなみに能見ファンと思われる描写もある。 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)22話より、浦川茜の宣戦布告
(「さよなら私のクラマー」22話より) 

彼女たちもまた、女子サッカーの未来を担う選手になるのだろうね。 

それはそうと国府妙はなんだったんだろう。

来月以降で描かれるか。

 

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「ゆるキャン△」6巻(あfろ)初めてのお給料と冬の山中湖

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「ゆるキャン△」(あfろ)6巻 (まんがタイムKRコミックス)

「ゆるキャン△」はあfろによる漫画作品。

まんがタイムきららフォワードで2015年より連載を開始した。

△TVアニメも大好評!▲ゆる〜いキャンプコミック第6巻△ キャンプのためになでしこは新しいバイトを探すことに。 一方で千明、あおい、そして恵那が一緒にキャンプをするみたい…?

(ゆるキャン△│漫画の殿堂・芳文社より)

前回はこちら。 

なでしこ、ランタンを買う

駅前のアウトドアショップ「カリブー」でガスランタンに一目惚れして以来、足繁く店に通うなでしこ。

店員にもすっかり顔を覚えられ、密かに取り置きしてもらっていたようだ。

「ゆるキャン△」(あfろ)6巻より、ガスランプを見てニヤける各務原なでしこ
(「ゆるキャン△」6巻より)

訪れて目にするたび、自然に顔がニヤけてしまう。

初めてのアルバイトを経験して、自分の給料で時間をかけて手にするのだから喜びもひとしおである。

キャンプで実際に使う日の事を考えるだけで楽しみで仕方がないだろう。

「ゆるキャン△」(あfろ)6巻より、初めてのバイト代で姉へのプレゼント
(「ゆるキャン△」6巻より)

そして、いつも何かとお世話になっている姉の桜へのプレゼントを忘れないところもしっかりしている。

寒さに弱いらしい姉には、暖かくすごせる贈り物を。

顔には出さないけど、妹のことが大好きだよねこの人は。

今回も、新しいアルバイトを探すなでしことのエピソードはほっこりした。

そのうち、なでしこが一人でキャンプしたいとか言い出したらどんな反応するんだろうか。

「ゆるキャン△」(あfろ)6巻より、キャンプ道具の手入れをする志摩リン
(「ゆるキャン△」6巻より)

キャンプは一休みして道具の手入れをするリン。

特に焚き火グリルとバイクは活躍した分汚れも目立ってきている。

それまでの近場でのひとりキャンプから、県境を越えて遠出するまでに世界を広げてくれた相棒。 

普段なら彼女的にはシーズンオフに入るのだろうけど、暖かくなっても野クルメンバーと活動することが増えてきそうなので今のうちにきれいにしておかないとね。

6巻は珍しくリンがキャンプしないが、今後の未知のシーズンへ向けての準備期間てとこかな。

「ゆるキャン△」(あfろ)6巻より、山中湖へキャンプに向かう斉藤・犬山・大垣の三人
(「ゆるキャン△」6巻より)

一方、大垣・犬山・斉藤の三人は、冬の山中湖へ出発する。

クリスマスキャンプを経験したことで、冬キャンプにも慣れてきたつもりでいた彼女たちだったが、油断は禁物。

前回の朝霧と今回の山中湖との標高の違いや、雪が降った後だというのも含めてしっかりした装備で挑まなければならなかった。

設備に関しては初心者の高校生には厳しいので、キャンプ地選びの時点で経験豊富な人に相談するべきだね。 

せっかく顧問もできたことだし。 

「ゆるキャン△」(あfろ)6巻より、親子キャンパーに救われて鍋パーティー
(「ゆるキャン△」6巻より)

リンからの連絡を受けてピンチに駆けつけた鳥羽先生はかっこよかった。 

でもやっぱり飲むよね。 

現地で知り合った親子キャンパーのように、薪ストーブも必要になってくるのだろうけど、鳥羽先生とこにあったり?

コテージを利用するパターンもあっていいのかも。 

あとがき

6巻は電子書籍が一週間先行で配信されている。

これまでとの売れ方の割合が変わるのかどうか気になるところ。

 

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「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」(水木由真)神出鬼没の不思議な古道具屋・慈空堂をめぐる物語。

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「まがいの器」(水木由真)単行本表紙

「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」は水木由真(みずき ゆま)による漫画作品。

2017年に月刊キスカにて集中連載された。

作者が過去に同人誌で発表していた慈空堂シリーズから『まがいの器』『時間幽霊』の2編と、新作を加えた7編の連作短編集である。

 

訪れる者に必要な時と場所を選んで現れるという、不思議な古道具屋・慈空堂をめぐる物語。 

街の片隅にひっそりとたたずむ古道具屋・慈空堂――。そこに並んだ商品は、全てその客に今、必要なモノである。古道具が見せる不思議な体験をご堪能れ!!! 表題作を含む珠玉の短編連作!! 古道具が繋ぐ人の絆の物語。

(「まがいの器 古道具屋奇譚|コミック|竹書房 -TAKESHOBO-」より)

収録作品は『まがいの器』『時間幽霊』『或るペン軸の生涯』『赤い石』『あなたしか見えない』『7月のノイズ』『Interview 〜ある古道具屋の物語〜』。

まがいの器

表題作は、訪問者の父が生前買い求めた一つの壺に秘められた謎にまつわるエピソード。

永田真人*1は、父の葬儀に向かう途中、探し続けていた古道具屋の入り口を発見する。

晩年の父はその店で購入した壺がとても気に入った様子で、日がな一日ながめては独り言をつぶやいていたという。

問題は、その日を前後して三千万円と母の形見の宝石が消え、取引に間に合わなくなってしまったこと。

返金を求め怒鳴り込んだ彼に、店主は骨壷となったそれを中身ごとなら応じると答えるのだった。

「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」(水木由真)より、道具への思いを語る店主・音澄(ねずみ)
(「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」より)

唖然とする永田であったが、そのことが物にそれ以外の価値を見出していることも示している。

彼の父親がその壺に見た価値とは何だったのか。

それは永田唐十郎がまだ若かった頃に遡る…


「まがいの器」が単行本のタイトルとして発表された時は意外な気がしたが、ここでの店主の考え方はこの店の存在理由であり、シリーズを通して引き継がれていくので、最初のエピソードに持ってきたのも頷ける。

「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」(水木由真)より、壺を売った理由
(「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」より)

一番好きな場面はここかな。

角度を変えてみれば、同じものでも違った見え方をすることがある。

不可解な行動でも、本を正せば誰かを思ってしたことかもしれないのだ。

意図通りに伝わるとは限らないけれど、時には拗れてしまったりすることもあるが、それはそれで味わい深いものかもしれない。

タイトルの経緯やデザインの変遷は作者のTwitterでも解説されている。

イラストは同人誌版「慈空堂へおいで」の表紙。

道具にまつわる人々の思い

店を訪れる人たちは、住む場所も時代も様々だが、共通しているのは彼らに今、必要なタイミングであったことである。

或るペン軸の生涯

デビュー前から20年間愛用しているペン軸を失くした漫画家の岬ヨシズミにとって、それは身体の一部であった。

長い時間をかけて自分の癖に合わせて擦り減った、使い慣れた道具は、それが無いと不安になるほどのもの。

「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」(水木由真)より、欠けたペンがもたらすもの
(「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」より)

連載も打ち切りになり、再起を図ろうかという矢先の出来事に、途方に暮れるのだったが、それはまた未知の世界へ踏み出すきっかけになるだろうか。

あなたしか見えない

人形好きの曾祖母が特に大事にしている一体の人形には、秘密がある。

片方の目に、人間用の義眼が入っていること。

遠い昔、彼女の恋人であったガラス職人が使用していたものであった。

「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」(水木由真)より、曾祖母と一緒に燃やされる人形
(「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」より)

神戸さくらは愛の執着の凄まじさを目の当たりにし、また同じ職人の手による作品を手に入れる運命にあった。

これは後日談が二段階で描かれているが、彼女の友人の最後の一言で救われる。

7月のノイズ

居場所がなくなったと感じた時、無条件で自分を受け入れてくれる人がいる。

そのことがうれしくて、ただそれだけだったのに、居心地の良さで距離感を間違えたのか。 

「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」(水木由真)より、皆恋のよう
(「まがいの器 〜古道具屋奇譚〜」より)

本当に欲しい物は何なのか。

「自分の欲しいものの形を分からないままの人も多い」と店主は言うけれど、それは分かっても手に入れにくいものかもしれない。

文月真知がそれを手に入れるのはもう少し先のこと。

このエピソードで、慈空堂の小さな男の子・久真(くま)が背負っているクマのヌイグルミが外れている所が描かれるのだが、その正体もいずれ判明するのかな。 

前作、「くくりひめ」について 

「くくりひめ」(姫野春、水木由真)1巻より、湯豆腐を囲む菊理・三門・紬
(「くくりひめ」1巻より) 

古より続く呪われた双子の巫女の伝説――新感覚の傑作怪異譚。神谷神社の見習い巫女、姫野菊理(くくり)には、11年前に生き別れになった双子の姉、九九里(くくり)がいた。双子の巫女の哀しい伝説に終止符を打つため一人、菊理は生まれ故郷の姫神村へと向かう――。

(「くくりひめ - 双葉社」より)

神谷神社に住み込みで働く巫女・菊理には不思議な力がある。

彼女の血に反応する、異界から現れる無数の白い手。

宮司の三門に保護されてからは穏やかな日々を過ごしていたが、双子の姉・九九里が現れた日から止まっていた時間が動き出す。

巫女さん×ツンデレ少女のダブル・ヒロインによる和風ファンタジー。

これ読んでから、うちでは湯豆腐率が上がりました。

全3巻。

あとがき

同人時代の頃からの集大成とも言える作品。

本作の後は、しばらく活動が抑えめになるとのことなのでゆっくり続編を待ちたい。

過去の作品は入手困難な様子。

「慈空堂へおいで」と「彼女と小さな白い犬」は取り寄せ中なので届いたら追記しようかと思う。

 

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*1:直人の表記もあるが、作者の手書き部分では真人となっている。

「先生、好きです。」1巻(三浦糀)生徒に告白されたらどうする?

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「先生、好きです。」(三浦糀)1巻 (週刊少年マガジンコミックス)

「先生、好きです。」は三浦糀(みうら こうじ)による漫画作品。

週刊少年マガジンで2017年12月より連載を開始した。

──初恋は、生徒でした。年齢=彼女いない歴の新米教師・樋口の職場はなんと女子校。担任しているクラスの市川さんから、まさかの告白!! 彼女の純粋でまっしぐらな「好き」に、翻弄されっぱなしの日々が始まる!!

(「『先生、好きです。(1)』(三浦 糀)|講談社コミックプラス」より)

マガポケ・週マガと2度に渡る読切作品としての掲載を経て、人気投票で連載化が決まったため、1話は3つのバージョンが存在する。

帯の言葉は、「結論、女子校教師はモテる!!」「生徒の告白から始まる、一途な切実な純度100%恋物語!!」

クラスの生徒からの告白

樋口夕樹は高校教師になって3年目。

夢だった職には就いたものの、まだ生徒に頼られるまでにはなっていない。

真面目で誠実なところが取り柄ではあるが、生徒たちとの距離をいまいち縮めることができずにいた。

それは職場が女子校で、彼が童貞だったことにも理由があるかもしれない。

「先生、好きです。」(三浦糀)1巻より、積極的に授業に参加する市川さん
(「先生、好きです。」1巻より)

そんな彼が担任の、2年桜組の生徒・市川さんが最近積極的だ。

授業に熱心なのは喜ばしいことであるし、生徒に慕われるのも教師としては嬉しいだろう。

彼女は性格も明るく、周囲への気配りもできる優しい女の子。

ただし勉強は苦手のよう。

でも困ったことが一つ。

「先生、好きです。」(三浦糀)1巻より、異性として先生が好きなんです。
(「先生、好きです。」1巻より)

教師としてではなく、異性として好きと言われてしまうのだった。

これは樋口先生も困った。

もちろんOKするわけにはいかないし、邪険にするわけにもいかない。

連載版では、彼女に加え、もう一人のヒロインが登場する。

「先生、好きです。」(三浦糀)1巻より、遺伝子レベルで相性がいいのかも?
(「先生、好きです。」1巻より)

同じクラスの渡辺さんも彼のことが好きらしく、授業中にみんなの前で宣言してしまう。

毎回テストは学年トップの真面目な生徒なのだが、むしろだからこそだろうか。

彼女なりの覚悟の表れであると言えなくもない。

そして三角関係へ

面白いのは彼女たちのタイプと行動が相反していること。

好きという気持ちを抑えられないという市川さんは、周囲にはバレないように、先生に迷惑が掛からないように気を遣っている。

対して渡辺さんは、冷静で感情的にはなりにくいものの、添い遂げるためには度量が必要だと周囲に隠そうとはしない。

「先生、好きです。」(三浦糀)1巻より、市川さんと渡辺さんの恋の種類
(「先生、好きです。」1巻より)

こんな二人に迫られるなんて、実にけしからんのだけど、樋口先生の答えには好感が持てる。

彼女たちの気持ちは受け入れた上で、社会のルールは守りつつ、好きということはどういうことなのかを一緒に学んでいこうする姿勢。

だって、おそらく三人共初恋だから。

わからないことに対して、安易に結論を出すのではなく、飽くまで真摯に向きあおうとするところ、いい先生なのである。

「先生、好きです。」(三浦糀)1巻より、樋口先生の試練
(「先生、好きです。」1巻より)

そして、それぞれの関係がギクシャクしないのもいいなと思っている。

次巻以降では、彼女たちがなぜ好きになったのかを掘り下げたエピソードも見たい。

個人的には月刊誌で連載して欲しいかな。

あと、パンチラに対する情熱がすばらしい。

 

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「ソウナンですか?」2巻(岡本健太郎、さがら梨々)無人島での探検と謎の人影

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「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)2巻 (ヤングマガジンコミックス)

「ソウナンですか?」は岡本健太郎(原作)、さがら梨々(作画)による漫画作品。

2017年1月より週刊ヤングマガジンで連載を開始した。

修学旅行へ向かう途中に飛行機事故に会い、海上で遭難した女子高生たちの本格サバイバル・コメディ。

帯の言葉は、「毎日冒険、無人島っ……」「『山賊ダイアリー』の作者原作。名もなき島での本格JKサバイバル!」。

事故で流れ着いた島で始まった、JK4人の共同生活。名もなき島でのサバイバルは、乙女の青春に足りないものばかり…。だからこそ、みんなで作る! みんなで食べる! 生存と闘争の無人島JKサバイバル第2巻。あたしたち、まだまだ元気です!【第2巻収録内容】ナイフ作り、日焼け止め作り、ウサギ狩り、島探検など…。

(「講談社コミックプラス」より)

前回はこちら。 

島内の探索開始

修学旅行中の遭難から無人島に辿り着いて10日程が経ち、鬼島ほまれたち四人はここでの生活に適応しつつあった。

捜索活動は続いているはずであり、しばらく耐え切れば救助が来るであろうと思われたのだが、残念ながら進展はない。

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)2巻より、島内の調査を開始
(「ソウナンですか?」2巻より) 

浜から離れないように、狼煙も欠かさないようにしているものの、長期戦になるのであればそれなりの準備が必要になってくる。 

そこで、島内の調査をして情報を集めて来たいところ。

 

今回は1巻の時に比べるとインパクトは少ないが、それは彼女たちがサバイバル生活に慣れてきているせいだ。

まだ数日とは言え、救助が来るまで生き延びるためには覚悟も決めなければならない。

特にメガネっ娘の天谷睦(あまたに むつ)の成長が著しい。

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)2巻より、睦は苦労人
(「ソウナンですか?」2巻より) 

というより性格かな。

メンバーの中でも真面目な彼女は、苦労も背負い込むタイプなのだが、その分適応が早いのだろう。

ほまれからも結構頼りにされているようだ。

待望の発見

彼女たちの普段の行動範囲は、浜から1km程の水汲み場が最も遠いところだろうか。

小さい島であっても、全体を把握するためには数日掛かりになるだろうし、これまでは救助を待つためあまり遠くへは行っていないはず。

島内が完全に無人なのか、人が生活していた痕跡がないか一度確認しておいたほうがよさそうだ。

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)2巻より、ほまれはナイフを手に入れた
(「ソウナンですか?」2巻より) 

金属を欲しがっていたほまれは、壊れた刈り込み鋏を発見して大喜び。

分解してナイフを2本手に入れた。

石器ナイフからの大幅なグレードアップで、これからの狩猟が捗りそう。

なぜ刈り込み鋏がここに、というのは気になるところではあるけれど。

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)2巻より、無人島の温泉で柚子湯を堪能
(「ソウナンですか?」2巻より) 

また、年頃の女の子としては温泉の発見も嬉しいだろう。

海に面している場所だが、石を組んでお湯がたまるように作ってあった。

かつて誰かがここに住んでいた事がありそうだ。

柚子が自生していることといい、日本近海である可能性が高いのだが、救助が遅れている理由は何なのか。

そして、彼女たちを見つめる人影が。

「ソウナンですか?」(岡本健太郎、さがら梨々)2巻より、他の人影が
(「ソウナンですか?」2巻より) 

果たして今後の接触はあるのか?

 

絶望的な状況から、ちょっと本格的なキャンプくらいになっている印象だが、安心して読めるのが本作のいいところでもある。

今は夏だから衣服にも困らないが、長期化すると環境も厳しくなってくるだろう。

次の3巻の予告ではイノシシも登場しそうであるし、余った肉で保存食づくりも見られるかもしれない。

 

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「メランコリア」上巻(道満晴明)ゆるやかに始まる終末へのカウントダウン

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 「メランコリア」(道満晴明)上巻 (ヤングジャンプコミックス)

「メランコリア」は道満晴明による漫画作品。

月刊ウルトラジャンプで2017年より連載を開始した。 

1話読み切り形式で、Aから始まりZまで続くオムニバス。 

帯の言葉は、「繋がる、世界。侵食する、憂鬱。」

ショートストーリーの名手・道満晴明が描くメランコリックオムニバス! 世界の終わりが近づく中、人は何を思うのか!? 楽しいだけじゃ、穏やかなだけじゃ、幸せなだけじゃ、人生はつまらない。「憂鬱」それは甘くて苦い蜜の味――…。読むほどに絡み合っていく、巧妙なストーリーギミックとじわじわと心を侵すメランコリックな物語!!・このマンガは高い中毒性があるので、どうぞ心してお読みください。

(「メランコリア 上/道満 晴明|集英社コミック公式 S-MANGA」より)

前回はこちら。

前回で3話までを紹介したので、今回は前半13話の中から気になったのをいくつか取り上げたい。

Do not disturb 入室を禁ず

ホテルのドアに掛けられ続ける「Do not Disturb」の札。

そこは作家ボグダノヴィッチが泊まっている部屋で、もう一週間も清掃ができていない。

衛生面から、せめてシーツだけでも交換したいところであった。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、部屋に入ってしまった新人メイドのマルタ
(「メランコリア」上巻より) 

ホテルヴォイニッチの新人メイド・マルタは、先輩のエレナが鍵を取りに行っている間、怪しげな室内に誘い込まれるように入ってしまう。

机の上には、彼女の行動を予知しているかのような原稿が置かれていた。

 

前作「ヴォイニッチホテル」の後日譚であり、番外編でもある一編。

ボグダノヴィッチと言えば、映画「ペーパー・ムーン」や「ニッケルオデオン」の監督の名である。

この謎の人物の罠により、マルタは部屋に閉じ込められ、代わりに小説を執筆することになるのだった。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、一晩で小説を書き上げたマルタ
(「メランコリア」上巻より) 

作者によれば、マルタはエレナが日本へ向かった不在中に雇ったメイドとのこと。

ホテルにとっては待望の新人だったのだが、彼女は無事部屋から出ることができるのか、それとも第二のボグダノヴィッチとなるのか。

Handspinner ハンドスピナー

半年後に地球に最接近すると言われているメランコリア彗星。

天文部の依田(よりた)は、教室には行かずに部室に引きこもっている生徒。

そんな彼の所へ毎日通うクラスメイトの八百津(やおつ)は、密かに想いを寄せているようだ。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、メランコリア彗星を天体観測
(「メランコリア」上巻より) 

君の名は。」を思わせるやり取りも、彼女なりの伝わりにくい告白のようなものだったのかもしれない。 

そして、この時はまだ、彗星が地球に衝突するなんて本気では思われていなかった。

このエピソードでは意外なアイテムが意外?な機能を持って登場するのだが、現実はなかなか上手く行かないものなのか。

落ちのあっさり感が好き。

Melancholia 憂鬱

地球に迫りつつあるメランコリア彗星により、人類の滅亡も時間の問題となった。

一時期はパニックにおちいったらしい人々も、いつもどおりの日常を取り戻しているようだ。

それでも終末は確実に近づいている。

余命幾ばくもない少女が、病院を抜け出した先で出会った元刑事に、登山の同行を依頼する。

巨大な流れ星に、願い事をしたいらしい。

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、人類の滅亡が見られますように
(「メランコリア」上巻より) 

彼女の願いは叶うだろうか。 

内容はともかく、それは彼女の生きる希望となるはずだ。

 

道中で、とある理由により一人になる時間があるのだが、心細そうにする彼女の様子がかわいかった。  

「メランコリア」(道満晴明)上巻より、山の中で待機する女の子
(「メランコリア」上巻より) 

点滴スタンドが手放せないのはお約束。 

世界はゆるやかに繋がっている。

エピソードが進むにつれ、終末感も濃くなってきた。

タイトルがアルファベット順なのも、カウントダウンみたいなものだったんだね。

残り13話でどう収束していくのか。

世界の行方を見届けよう。

 

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「とんがり帽子のアトリエ」19話(白浜鴎)第二の試験、間もなく開始

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「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)19話より、第二の試験に挑む魔法使い見習いたち

「とんがり帽子のアトリエ」は白浜鴎による漫画作品。

月刊モーニング・ツーで連載中。

19話は、魔法使いの試験である通称「五芒星試験」の二つ目の試験を受けることになったアガットが会場へ向かう。

 

前回はこちら。 

魔法使いを目指すことになったココは、魔法使い・キーフリーに弟子入りすることに。だが、母親を石の魔法から解くべく連日無理をして魔法を学んでいたことがたたって、倒れてしまう。しかし、魔材屋の少年タータの活躍もあって無事に回復した。そして、同じアトリエの弟子・アガットに「第二の試験」のしらせが届いた。

(「前回までのあらすじ:とんがり帽子のアトリエ」より)

試験会場へ

大講堂からの報せで試験の日が決まったアガットを連れ、キーフリーは会場のロモノーン岬にある”蛇の背洞窟”へ向かっていた。

他の弟子たちも一緒である。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)19話より、オルーギオの新作魔法器のおかげでよく眠れたアガット
(「とんがり帽子のアトリエ」19話より)

オルーギオが作ってくれた新作魔法器のおかげで、移動中の羽根馬車の中でもぐっすり眠れたようだ。

無理しがちな彼女にはちょうどいいだろう。

体調さえ良ければ、試験の方は問題ないはずという安心感がある。

この日のために、誰よりも努力を続けてきたのだから。

 

試験の各段階にはそれぞれ名称があって、今回の第二の試験は「騎士の忠誠」と呼ばれている。

人前でも魔法を使えるようになるための試験であることは予め知らされていた。

 

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)19話より、第二の試験会場に巨大なフデムシ登場
(「とんがり帽子のアトリエ」19話より)

!?

 

会場に一番乗りした彼女たちから少し遅れて登場した試験官は、なんと巨大なフデムシの姿。

もちろん正体は魔法使いであるが、これを見た時のココの喜びようは想像に難くないだろう。

キーフリーも思わず「あっ、すごい」と漏らすほどの感動ぶりであった。

そしてこれが今回の試験の重要なポイントなのである。

魔法を使用するところだけではなく、人間であることも知られてはいけない。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)19話より、第二の試験はメルフォンの護衛
(「とんがり帽子のアトリエ」19話より)

試験監督アライラの説明によると、第二の試験「騎士の忠誠」とは、海獣鳥(メルフォン)を”蛇の背洞窟”の向こうまで無事に送り届ける護衛任務である。

「結託の日」以前の魔法遺跡で、廃墟となった今でも獣たちの渡りのルートと使用されており、彼らを魔法の影響から守ることが環境を歪めてしまった魔法使いの責務の一つとして考えられているよう。

 

”影借りの鏡外套”は、纏った者の姿を擬態するアイテム。

これで相手に気付かれずに任務を遂行することも可能になる。

ただし大きさまでは誤魔化せない様子。

護衛するだけとは言っても、洞窟がどこへ通じているのか、入り口を塞ぐ対策をしない所を見ると原始的な扉窓のような存在の可能性もある。

やっかいな仕掛けがあったりとかね。

相手が人間ではない分、予想外の行動をしそうなところで難易度が高いのかもしれない。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)19話より、受験するようリチェを説得するキーフリー
(「とんがり帽子のアトリエ」19話より)

今回はその試験にアガットと一緒にリチェの申請もされていた。

受けたがらないリチェを説得するキーフリー。

この時ココの方をチラッと見るのがいいね。

彼女は以前リチェの魔法を好きだと言ってくれた。

 

リチェは、魔法使いとして一人前になることが、自分らしさを失うことにつながると思っている節がある。

他人の魔法はいらないとの頑なな態度を取らせる理由はなにか。

夢で登場した彼女の兄と関係しているのは確かだろう。

自分の魔法を認めてくれていた兄と弟子入り以降会えなくなっているのか、それとも以前とは変わってしまった姿を見ているのか。

性格としての表れ方は違うけど、リチェとアガットは自分の魔法を認めさせたい相手がいるという点で似ている。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)19話より、試験会場の蛇の背洞窟へ向かうアガット
(「とんがり帽子のアトリエ」19話より)

蛇の口を通って洞窟へ入っていくアガット。

そこで待ち受けているものは何か。

第二の試験、開始。 

 

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「イジらないで、長瀞さん」1巻(ナナシ)気が付くと彼女の虜。歪なからかい系ラブコメ誕生。

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「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)1巻(マガジンポケットコミックス)

「イジらないで、長瀞(ながとろ)さん」はナナシによる漫画作品。

マガポケで2017年11月より連載を開始した。

帯の言葉は、「最恐の“Sデレ少女”現る!!!」 。

気弱な高校生男子と後輩のドS少女を描いたラブコメである。

「後輩の女子に泣かされた……!!」ある日の放課後、たまに立ち寄る図書室で、スーパー“ドS”な後輩に目をつけられた! 先輩を、イジって、ナジって、、はしゃぐ彼女の名前は──『長瀞さん』! 憎たらしいけど愛おしい。苦しいのに傍にいたい。あなたの中の何かが目覚める、“Sデレ少女”の物語。丸ごと2話の描き下ろしを加えて、待望の単行本化!!

(「『イジらないで、長瀞さん(1)』(ナナシ)|講談社コミックプラス」より)

長瀞さんと先輩

いつものように宿題を終わらせようとやって来た図書室は、普段は誰もいない穴場であったのだが、その日は彼の苦手なタイプの女子グループが先客だった。

目立たないように関わらないようにしていれば、何事もなく過ごせると思っていた所、運悪く目をつけられてしまう。

彼女は1年生の長瀞さん。

「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)1巻より、センパイをいじめる長瀞さん
(「イジらないで、長瀞さん」1巻より)

笑顔の似合う女の子。

この日以来、彼の周りには彼女の姿を見ることが多くなった。

放課後の美術部の部室や登下校時、休み時間など、何かと絡んでくるのだ。

 

SデレだのドSだの言われているが、元々は2011年頃から発表されたシリーズで、そちらはなかなかハードな内容であったらしい。

この1巻に関して言えば、一般向けにマイルドに抑えられていて安心して読めるようになっている。

むしろ真っ当なラブコメへの道を進んできており、長瀞さんかわいいなと思うまでになるはずだ。

「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)1巻より、漫画の役を演じる長瀞さん
(「イジらないで、長瀞さん」1巻より)

先輩のことをイジり倒してはいても、それは主に彼のキャラや反応に対してであり、美術部としての創作や趣味で描いている漫画をバカにすることはない。

それどころか実演してダメ出ししてくれる事まである。

出会ったばかりの頃はいくらかきつい部分はあるものの、徐々に印象が変わってくる。 

「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)1巻より、スカートのポケットに手を入れる
(「イジらないで、長瀞さん」1巻より)

個人的には3話あたりのタイミングで週刊マガジンに出張掲載されたこの場面がきっかけだった。

ポケットの中のスマホの位置を確認しているんだけど、ここいいよね。

この時の長瀞さんの、こんな表情もできるんだとのギャップにやられてしまった。

それまでが悪い顔してたからね。 

「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)1巻より、本気でやってない人間には興味がない
(「イジらないで、長瀞さん」1巻より)

そんな彼女も、チャラい男には興味がない。

寄ってくる中途半端な連中にはこのクールな対応。

イジる相手は先輩だけなのだ。

それがうれしいかどうかだけど、先輩の方もまんざらではない。

そのあたりは彼女もしっかり距離を測っている描写もあり、本当に嫌がることはやらないように気を付けている。

ただ興に乗ると、ちょっとやり過ぎてしまう傾向もあるのが玉に瑕。 

「イジらないで、長瀞さん」(ナナシ)1巻より、やり過ぎて反省する長瀞さん
(「イジらないで、長瀞さん」1巻より)

各話のおまけページでは、その事で反省する長瀞さんの姿が描かれている。 

 

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「恋の撮り方」1巻(たなかのか)笑わない先輩の、笑顔の写真を残したい。

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「恋の撮り方」(たなかのか)1巻(電撃コミックスNEXT)

「恋の撮り方」はたなかのかによる漫画作品。

月刊コミック電撃大王で2017年5月より連載を開始した。

帯の言葉は、「ファインダーを覗けば、いつだって先輩がいる。そう、いつだって。」 

 「恋をするとカメラにはいつも、恋をしてる人の姿が写るんだ」
何があっても笑わないと囁かれている写真部部長の佐々木つぐみ。
新入生の河島まもるは、彼女の笑顔を卒業アルバムに残すことを頼まれる。
そんな彼がファインダー越しに見たのは、つぐみの隣で微笑みを浮かべる“もうひとりの”つぐみの姿だった。
想い人が棲むカメラを手に、少年の全力片想いが幕を開ける―――。

(「恋の撮り方 (1) たなかのか:コミック | KADOKAWA」より)

写真部との出会いと先輩

どんなことがあっても笑わない「凍てつきの女神」の異名を取る三年生の写真部部長、佐々木つぐみ。

彼女が撮影した入学案内の写真を見て、この学校を選んだ新入生がいた。

実際の風景は印象よりきれいなものではなかったが、むしろそのことが彼に写真の魅力を感じさせることになる。

「撮った人の心も撮れているのかな。だったら僕はこの人の目で世界を見てみたい。」

その日から、河島まもるの写真と向き合う日々が始まっていく。

「恋の撮り方」(たなかのか)1巻より、恋をすると常に恋してる人の姿が写るんだ
(「恋の撮り方」1巻より)

彼に直接教えてくれるのは、二年生のライカ先輩。 

彼女は部長のつぐみ先輩が大好きで、撮影対象もつぐみ先輩専門のほとんどストーカーのような部員なのだが、好きなものを撮るということにかける情熱は誰にも負けない。 

そのためか、本作での印象的な言葉は多くがこのライカ先輩によるものだったりする。

「恋の撮り方」(たなかのか)1巻より、恋は光だよ
(「恋の撮り方」1巻より)

たとえば恋は光。「恋は光だよ!」

写真が光によって描くというのなら、彼女にとっての光はつぐみ先輩らしい。

その思いはもはや恋なのかもしれない。

そして河島も、入部してはじめてつぐみ先輩の姿(表紙参照)を撮った瞬間から、彼女への恋を自覚する。

偶然とは言えこんな表情を捉えてしまったら無理もない。

二人は、卒業アルバムにつぐみ先輩の笑顔を残すというシンプルながら未知の難題へ向け協力していくのである。

ファインダーの中の女の子

「恋の撮り方」(たなかのか)1巻より、カメラの中のなかみ先輩
(「恋の撮り方」1巻より)

まだ見ぬ先輩の笑顔を追いかける河島には、カメラの中にいるもう一人のつぐみ先輩の姿が写っている。

比喩ではなく彼には実際にそう感じられるらしい。

本物とは制服の色が逆転しており、別人のような表情を見せる。

これは彼の恋心ゆえか。

まだ表に出てきていない先輩の内面がカメラを通して現れているのだろうか。

恋をすると世界の見え方が変わると言ったりするけど、ある意味最初の言葉が叶った形かな。

先輩がいつから笑わなくなったのかとか、過去にこのカメラを使用していたこととかにも秘密がありそうだが、2巻以降でのお楽しみ。

これは確かに。

 

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「レンタルおにいちゃん」1巻(一色箱)孤独な少女に家族のぬくもりを

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「レンタルおにいちゃん」(一色箱)1巻(ガンガンコミックスpixiv)

「レンタルおにいちゃん」は一色箱(いちいろ はこ)による漫画作品。 

ガンガンpixivで2018年3月より連載を開始した。

もともとはSNSを中心に発表されていたものらしく、それまでのストック分に大幅な描き下ろしページを加え今回の1巻発売となっている。

帯の言葉は、「少女がレンタルしたのは偽兄(ニセモノ)との温かく優しい幸せな時間」。

表紙の仲のよさそうな兄妹の姿も、制限時間付きのものである。

両親の他界…優しかった兄の豹変…独りぼっちで傷ついた少女は昔の兄の優しさを求め、“おにいちゃん”をレンタルする―――お金で。「レンタルでも、私は“家族(ぬくもり)”がほしい。」pixiv&Twitterの超話題作が待望の書籍化!!! 本書限定70P以上の描き下ろしを収録!!!

(「レンタルおにいちゃん 1 | SQUARE ENIX」より)

叶実とおにいちゃん

立花叶実(たちばな かなみ)には両親がいない。

二年前に交通事故で亡くしてから、兄と二人で暮らしてきた。

「レンタルおにいちゃん」(一色箱)1巻より、レンタルおにいちゃんとお出かけ
(「レンタルおにいちゃん」1巻より)

休日には、デパートで買い物をしたり、レストランで食事をしたり、普段の寂しさの分を取り戻すかのようにはしゃぐ姿が見られる。

しっかりしているとは言え、まだまだ甘えたい年頃なのだ。

そんな彼女を温かく見守る彼も、年の離れた妹を溺愛する優しい兄のようであった。

時間が来るまでは。

「レンタルおにいちゃん」(一色箱)1巻より、レンタルの時間は終了
(「レンタルおにいちゃん」1巻より)

実はこの二人は兄妹ではない。

彼女と契約を交わしているレンタルおにいちゃんなのだ。

 

タイトルから予想できることではあるが、アラームが鳴った時の彼女の表情がこわばるのが不憫だ。

血の繋がらない他人との交流が、今の彼女の精神的な支えとなっているらしい。

確かにお金の受け渡しを除けば、傍目には仲良し兄妹のようにしか見えないくらいであるし、その幸せそうな時間が続けばどんなにいいだろう。

そんな一時に頼りたくなるほど、彼女の日常はハードモードなのか。

「レンタルおにいちゃん」(一色箱)1巻より、豹変したお兄ちゃん
(「レンタルおにいちゃん」1巻より)

実の兄は両親の死から別人のように冷たくなった。

部屋に引きこもり誰とも関わりたがらない。

たった一人の妹ですら、近付くことを拒絶する。

彼をここまで豹変させたものは何だろうか。

お金目当てで近寄ってくる親戚に失望している場面はあったが、この辺の描写が薄いので掘り下げてほしいところ。

「レンタルおにいちゃん」(一色箱)1巻より、レンタルを提案する慎
(「レンタルおにいちゃん」1巻より)

1巻では重めの展開が続くが希望はある。

このレンタルおにいちゃんのシステムが彼の好意から来ているということ。

叶実の、優しいお兄ちゃんに戻って欲しいという願いを尊重して接していること。

彼も過去に似たような経験をしていそうだが、追々描かれていくだろう。

「レンタルおにいちゃん」(一色箱)1巻より、お金を払いたいんです
(「レンタルおにいちゃん」1巻より)

彼女はまだ諦めていない。

レンタルおにいちゃんへの気持ちが本物のお兄ちゃんを超えてしまわないように、お金を払っているのは彼女なりの線引きのようだ。 

一番の愛情を注いでくれるのは家族であって欲しい。

実の兄との関係が修復されることに越したことはないのだが、彼女が笑顔でいられる時間が増えていくといいよね。

2巻の予告での雰囲気が救いだ。

そして新キャラのお姉さんが気になる。

 

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「さよなら私のクラマー」23話(新川直司)流れを変えるチャレンジ

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「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、曽志崎のフォームに見惚れる宮坂

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

月刊少年マガジンで2016年5月より連載を開始した。

23話は、栄泉船橋の固い守備に攻めあぐねる蕨青南。

流れを変えるきっかけは、後方の選手たちの頑張りだった。

 

前回はこちら。 

浦和を超える守備

インターリーグ準決勝の相手、千葉の栄泉船橋は守りに定評のあるチーム。

FWも含めた全員参加の組織的な守備は、簡単には突破できそうもない。

後ろからパスを繋いで組み立てていく蕨青南にとっては、この分厚さはやっかいなのだ。

サイドから切り崩そうにも、守備ブロックは維持したまま前線の選手が下がって対応するため窮することになる。

深津監督も、彼女たちの守備を浦和邦成より固いと評価していた。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、栄泉船橋のカウンター
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

一旦ボールを取られたらこのカウンターが待っている。

ワラビーズの守備陣もよく耐えている方だろう。

今大会での躍進も深津監督の指導による守備力向上が大きいのだが、好プレーで度々ピンチをしのいでいる場面が見られる。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、敵のナイスプレーに喜ぶ国府
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

栄泉船橋の国府は、いいプレーが見られることには敵味方の区別なくうれしいタイプらしい。

ちょっと既視感あるね。

越前をアホの子にしたような感じかな。

彼女自身の実力は未知数のままなのでそこが気になるところ。

2年生組の活躍

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、流れを変えるチャンス
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

今回、活躍するのはワラビーズの2年生組。

栄泉船橋が警戒しているのはロングボールで、曽志崎は特にマークされているし、他の中盤の選手もフリーになることほぼ無い状況。

比較的動きやすい外側から仕掛けられれば、流れを変えるきっかけになるかもしれない。

DFの宮坂にとっては苦手な分野なのだが、練習中に深津監督にも「お前は蹴んねぇよな」と指摘されてもいた。

試合を重ねるうちには、いつもの戦い方がうまくいかないときも来る。

そんな時のためにプランBとしての対応ができることも必要となってくるが、今がまさにその時なのだろう。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、お前の足を信じろ
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

いつも曽志崎のフォームを見てきているのでイメージはできている。

小さい頃から田勢を相手に蹴ってきた。

頼れる相棒を、これまでの経験を信じてチャレンジする時。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)23話より、喜ぶ宮坂
(「さよなら私のクラマー」23話より) 

この笑顔が物語っているが、ひとまず合格だったようだ。

このところのワラビーズは、攻守のバランスが取れてきて安心感すらある。

次回あたりで試合も決着かな?

決勝では全国2位の興蓮館(2軍?)が順当に勝ち上がってくるんじゃないかと思われる。

栄泉船橋も過去の因縁があるようだが、ワラビーズも久乃木戦からの成長を試したいところだろう。

恩田もなんかたくらんでそうだったし、いい流れきてるよね。

あとがき

今回までが6巻の内容になりそう。

ここまで単行本発売前には月刊マガジンの表紙になっているけど、来月は「かくしごと」らしいのでどうだろうね。 

休載を挟むとすれば7月あたりに出そう。

 

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「図書館の大魔術師」1巻(泉光)“本の力で世界を繋ぐ物語” 本の都を目指し、少年は旅に出る。

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「図書館の大魔術師」(泉光)1巻(アフタヌーンコミックス)

「図書館の大魔術師」は泉光(いずみ みつ)による漫画作品。

月刊good!アフタヌーンで2017年より連載を開始した。

本編での図書館の表記は「圕」(囗に書)である。

帯の言葉は、「転生でもない、最初から勇者でも英雄でもない、一から始まる王道ファンタジー!!」 。

アムンという小さな村に暮らす耳長の少年は本が大好きであったが、耳長で貧乏だった為、村の図書館を使うことができなかった。そんな少年は差別が存在しない本の都・アフツァックに行くことを夢見る。ある日、少年は憧れのアフツァックの図書館で働く司書(カフナ)と出会う。この司書との出会いが、少年の運命を大きく変えることに──。孤独な少年が未来を切り拓く、異世界ビブリオファンタジー堂々開幕!!

(「講談社コミックプラス」より)

本の都に憧れる少年

書を護ること、それ即ち世界を護ること也 

本の都アフツァックにある中央図書館には、大陸中の全ての本が揃っていると言われている。

その膨大な蔵書を管理する専門の職員は司書(カフナ)と呼ばれ、人々の尊敬を集める存在であった。

彼らの普及活動のおかげで、辺境の小さな村でも図書館がつくられ、人々に開放されている。

アムンの村に住むシオは、本が大好きな少年である。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、村の図書館から追い出されるシオ少年
(「図書館の大魔術師」1巻より)

特に、正義の海賊シャグラザットの冒険物語は、この村で窮屈な思いをしている彼には心躍るものであったらしい。

周りの人間とは違う髪の色や長い耳を持ち、貧民街に育ったことで、不当な扱いを受けてきた。

いつかはこの村を出て、外の世界を見てみたい。

そんな彼の転機は、村にカフナが視察に訪れた時の事。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、村に中央図書館からカフナがやって来た
(「図書館の大魔術師」1巻より)

その内の一人、守護室のセドナとの交流が彼の未来を決定付けることになる。

彼女は、やや芝居がかった物言いで、本編の人物紹介でも「かっこつけてるのがうっとうしいことも」と書かれるくらいなのだけど、この時の少年には、それが強く印象に残っただろう。

家族以外に好意的な言葉を掛けられたことがほとんどない彼には、物語の中のように外の世界へ連れ出してくれる“主人公”みたいに映ったかもしれない。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、本が読まれたがったのかも
(「図書館の大魔術師」1巻より)

そもそも本作は「風のカフナ」という原作がある体裁で描かれている。

“風の” という言葉は(冒険の)旅をイメージすることも出来るが、シンプルにセドナのことを指していると考えていいと思う。

物語の始まりとなった人物である。

司書(カフナ)の仕事

カフナに関してはまだまだ謎に包まれている。

地方の図書館でも司書の言葉は使われているが、カフナと呼ばれるのは中央図書館の司書のみのようだ。

12の部署が存在すると言及されていて、現時点で明らかになっているのは3つ。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、カフナによる本の修復作業
(「図書館の大魔術師」1巻より)

今回アムンの村にやって来たのは修復室、渉外室、守護室のカフナ達。

遠征部隊としては分かりやすい編成だろうか。

依頼のあった本の回収に来た彼女たちは、それぞれの仕事振りを見せてくれるが、守護室はちょっと特殊な業務のようだ。

本やカフナ達を護るために、相手をするのは人間だけではない。

この世界には魔術書と呼ばれる本が存在し、取り扱いには細心の注意を必要とする。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、大気を操る風のカフナ、セドナ
(「図書館の大魔術師」1巻より)

セドナは、大気をコントロールする風の魔術師。

まだ若いが、この技術に関しては守護室でも敵なしと言われている。

まさに風のカフナ、主人公に相応しいキャラである。

彼女に預けられた一冊の本、世界のために戦った大魔術師と図書館の物語を読んで育った少年は、やがて本の都アフツァックを目指す。

今度は自らがカフナになるために。

「図書館の大魔術師」(泉光)1巻より、一つの物語が始まるんです
(「図書館の大魔術師」1巻より)

セドナの最後のセリフが好きだ。

性格半分、演出半分てとこなのかな。

彼女の言葉で、少年は夢を持った。

誰かが連れ出してくれるのではなく、自分の力で切り開いていける夢を。  

あとがき

1巻はちょうどきれいに終わっている。

ページ数もだいぶ多めで、物語のプロローグとしてキリのいいところまで収録されているので安心して買って欲しい。

そして2巻を楽しみに待とう。

初版は帯に白浜鴎(「とんがり帽子のアトリエ」)の推薦文付き。

今のところ、今年一番の期待作。

 

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「空電ノイズの姫君」18話(冬目景)ギターを弾かない日々

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「空電ノイズの姫君」(冬目景)18話扉絵より、保坂磨音

「空電ノイズの姫君」は冬目景による漫画作品。

月刊バーズで2016年より連載を開始した。

18話は、アルタゴのギタリストとして初ライブを終えた磨音だったが、思うような演奏が出来なかったことをまだ引きずっていた。

 

前回はこちら。 

その後のアルタゴ

ライブの日から一週間が経っても、磨音は立ち直れていない。

まだギターを触る気にもなれていないようだ。

「空電ノイズの姫君」(冬目景)18話より、一週間ギターを弾いていない磨音
(「空電ノイズの姫君」18話より)

子供の頃から自然に弾いてきた彼女にとって初めての経験らしい。

父の背中を見て遊びの延長で始めたギターも、いつしか生活の一部となっていて、触らない日が続くと不安になる。

それでもライブでのショックが大きかったと見えて、バンドの練習も休んでいた。

やるべきことは分かっている。

この借りはライブで返すしかないのであり、 こんな所で立ち止まっている場合ではない。

ただ、彼女の場合は気持ちさえ戻ればどうにかなると思える部分もある。

「空電ノイズの姫君」(冬目景)18話より、新曲作りに励む高瀬
(「空電ノイズの姫君」18話より)

磨音より精神的に弱そうな高瀬は、もう次のために動き出していた。

新曲を、それも演奏や歌にとやかく言わせないくらいのいい曲をつくろうと。

実際は曲でも作っていないと不安であるという理由らしいのだが、ここ最近の彼の様子を見ると現状を把握した上で前を向こうとしていることが分かる。

ようやくである。

ちなみに、練習のことは頭になかったようなので、日野はずっと待ちぼうけということになるが…

夜祈子のデビューが近づく

「空電ノイズの姫君」(冬目景)18話より、高瀬の部屋の違和感
(「空電ノイズの姫君」18話より)

初ライブと言えば、もう一人の夜祈子もそろそろである。

拓海の後輩の何とかいうバンドのコーラスとしての出場で、最初の予定よりも出番が増えていると話していた。

メンバーにも気に入られていたし、見せ場を作ってもらっている可能性もある。

「空電ノイズの姫君」(冬目景)18話より、ライブ前日の夜祈子
(「空電ノイズの姫君」18話より)

夜祈子の方が耳の肥えた客層を相手にすることになるが、彼女なら物怖じせずクールにこなすだろう。

そんな姿を見て磨音が立ち直ることになる流れなんだろうね。

どうせなら買い物も付いてけばいいのに。 

あとがき

今回の月刊バーズは表紙で巻頭カラー。

先月発売された単行本2巻の続きが読めるようになっている。

 

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