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「魔王城でおやすみ」3巻(熊之股鍵次)魔王城に冬がやってきた

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「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)3巻 (少年サンデーコミックス)

「魔王城でおやすみ」は熊之股鍵次(くまのまたかぎじ)による漫画作品。

週刊少年サンデーで2016年より連載中。

スヤリス姫が魔物にさらわれてから月日が流れ、季節は冬になった。

お布団が恋しい時期である。

魔王によって人間の姫がさらわれた…! 人々は悲しみ、怒り、そして勇者は旅立つ! その時、囚われの姫・スヤリスは… 「寒いから…暖かくして寝たい…」 毛糸のぱんつで防寒対策はばっちりだし、新作のベッドは羽毛布団(ハーピィ)にぴったり!! 安眠を求めて自由気ままな人質(スヤリス)姫の睡眠ファンタジーコメディー、第三巻!

(あらすじ:小学館公式サイトより)

前回はこちら。

魔王城の冬

人間の国のスヤリス姫が攫われてから、初めての冬がやって来た。

ここは日の光の差さない魔王城。

魔界の住人以外が生きのびるには厳しい土地である。

それは城内の牢に閉じ込められている姫も例外ではない。

「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)3巻より、怠惰の魔具コ・ターツが欲しい姫
(「魔王城でおやすみ」3巻より)

禁断の魔導書によると、寒さから身を守るためのアイテムが存在するという。

その名は怠惰の魔具コ・ターツ。

周囲の全てを骨抜きにすると言われ、作ることが禁止されてしまった幻の器具である。

姫の安眠への情熱は、魔具を完成させることができるのか。 

姫の寒さ対策

今回の姫は、冬の魔王城でも快適に過ごせる環境を用意するために奔走する。

たとえば隠れた防寒着として定番の毛糸のパンツ。

実家の城にいた頃から愛用していたが、魔王城にそんな気に利いたものはない。

さっそく自作に取り掛かる姫であったが、彼女はその昔、初めての毛糸のパンツが嬉しくて城内を自慢して回ったことがある。

さすがに現在は乙女として憚られるため、口に出すことは控えているようだ。 

「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)3巻より、パンツのジェスチャー姫
(「魔王城でおやすみ」3巻より)

日頃の行いのせいか、ちょっとした誤解で騒動を引き起こしてしまうのだったが。

 

たとえば部屋の窓を改装するために地下深い洞窟を訪ねたり。

その鍛冶屋は作れないものはないと言われる凄腕の武器職人。

姫の部屋の窓は常に開かれていて、北風が身にしみるのだった。

彼ならばきっといい窓を作ってくれるだろう。 

「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)3巻より、伝説の武器職人に窓の製作を依頼
(「魔王城でおやすみ」3巻より)

この姫の無欲というか目的に向かって振れない意思は見事である。

ある意味最高の贅沢ともいえよう。

魔王城のイベント

そして冬のイベントと言えば、やはりクリスマスである。

魔族には人間界のようなサンタは存在しないが、毎年悪魔教会で行われる闇のミサがあるようだ。

プログラムのひとつ、ビンゴ大会で出される景品に興味を持った姫は、密かに潜入することに成功した。

「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)3巻より、闇のミサへ出席するスヤリス姫
(「魔王城でおやすみ」3巻より)

 

最近では、魔王とエリアボスによる勇者対策会議にも顔を出すようになった姫は、新魔王への道を着実に進んでいるようにも見える。

前回で次期魔王宣言も済ませたことだし、安眠のためなら魔王就任もやりかねない。

そんな姫が、不眠気味の魔王へ眠り方を伝授することになった。

「魔王城でおやすみ」(熊之股鍵次)3巻より、姫の子守唄で魔王を眠らせる
(「魔王城でおやすみ」3巻より)

ぐっすり眠れそうである。

あとがき 

任務で外に出払っていたと言われている女部隊が帰還し、エリアボスの一人としても登場した。

男臭かった魔王城にもやがて変化が見られるだろうか。 

 

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漫画版「幼女戦記」(東條チカ)平成のサラリーマンが幼女として戦場へ

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漫画版「幼女戦記」(東條チカ)1巻 (角川コミックス・エース)

「幼女戦記」はカルロ・ゼン(原作)、篠月しのぶ(キャラクター原案)、東條チカ(作画)による漫画作品。

月刊コンプエースで2016年6月号より連載を開始した。

超合理主義エリートサラリーマンが転生したのは、なぜか幼女だった!? 魔法と小銃の入り乱れる異世界で、軍での出世&安全な後方勤務を目指すが、なぜかエースとして祭り上げられ……?

(角川コミックス・エース公式サイトより)

あらすじ:白銀のターニャ

統一歴1920年代、帝国と周辺諸国の戦争において、幼少ながら「ラインの悪魔」として恐れられた将校がいた。

ターニャ・デグレチャフ、彼女は航空魔導士として類まれなる才能を持ち、徹底した合理主義のもと軍での地位を確立していく。

 

ターニャには前世の記憶がある。

西暦2010年代の日本でサラリーマンであったその人物は、リストラを告げた相手に逆恨みから線路に突き飛ばされ、命を落とした。

そこで転生する前に創造主ともいえる存在Xと対面することになる。

神への信仰心なき彼に課せられた問題は、現状から逆転した生をうけ、追い詰められた末に改心すること。

非科学的な世界で戦争の時代に女として生まれ、社会的な地位とは無縁の環境で育ったのがターニャである。

彼女は孤児だった。

幸か不幸か彼女には魔法の才能があり、仕官の道が開かれたが、そのことが彼女を過酷な環境へと導くことになる。

「幼女戦記」(東條チカ)1巻より、安全で簡単なお仕事
(「幼女戦記」1巻より)

士官学校を卒業し北方の国境付近の観測手として任務に着いた彼女は、協商連合の越境を確認し、敵魔導中隊に遭遇する。

安全なお仕事であったはずが、一気に絶体絶命のピンチである。

であったのだが、即応部隊到着までの遅延防衛及び自然な形での戦線離脱で安全を確保するという難題を、持ち前の合理的思考によって解決した結果、単騎での敵部隊撃破という目覚ましい戦果を得た。 

「幼女戦記」(東條チカ)1巻より、一命を取り留めるターニャ
(「幼女戦記」1巻より)

初陣でのエース認定、生前では稀と言われる銀翼突撃章の授与と、華々しい経歴とともに彼女は帝国の英雄となっていく。

そもそも彼女の望みは安全で快適な後方での出世コースを進むことである。

だが存在Xの介入か、彼女にそれが許されることはない。

最も危険で死と隣合わせの最前線、そこが彼女の居場所であった。

幼女の皮を被った悪魔

本作は2016年12月に1巻が出て以降、ハイペースでの刊行が続いている。(2017年6月までに6巻発売予定)

舞台は近代ヨーロッパによく似た世界であり、航空魔導士と呼ばれる存在が特徴である。

首から下げている「魔導演算宝珠」によって魔力を具現化し、貴重な戦力と成り得るが、能力を持つ人材が少ないために、砲兵隊の目標を定めるための観測手や他部隊の救援などサポートが主な仕事であるようだ。 

「幼女戦記」(東條チカ)1巻より、新型宝珠エレニウム九五式の呪い
(「幼女戦記」1巻より)

そんな中で革命的な存在とも言えるのがターニャであった。

新型宝珠「エレニウム九五式」は魔導核を四基搭載し破格の性能を持つが、魔力を際限なく消費させ、常に暴走の危険が付きまとう。

この人類にはまだ早すぎる技術も奇跡によって彼女だけが制御することが可能になった。

言わばチートである。

だがその代わり、常に地獄のような環境に晒され続ける羽目になるのだった。

 

1巻ではこの新型宝珠の完成と、ライン戦線への参加までが描かれている。

後に「ラインの悪魔」と呼ばれるようになる彼女も、まだ安全な生活を送れると考えていた。

「幼女戦記」(東條チカ)1巻より、今度こそ安全な後方でエリートコースへ
(「幼女戦記」1巻より)

漫画版の特徴は、ターニャの子供らしさが描かれているところにある。

嬉しさに思わずスキップをしてみたり、身長が足りずに椅子の上に立って作戦会議に参加したり。

中身はおっさんなのだが、殺伐とした戦争描写の中で貴重な微笑ましさである。

そんな彼女に対する上の答えはこれだ。

「幼女戦記」(東條チカ)1巻より、もちろん最前線へ
(「幼女戦記」1巻より)

はたして安息の日は来るのだろうか。

 

ちなみに2017冬アニメとして放送されたアニメ版はだいぶ先までストーリーが進んでいるので、先が気になる場合はそちらを観ておくのもいい。

現時点での最新刊(4巻)がアニメ版5話あたりである。 

あとがき

先月Netflixに追加された際にBGM代わりに流してみた結果、漫画版も最新刊まで集めることになってしまっている。

現在6巻までの3ヶ月連続刊行中で、11月に7巻が発売予定とのこと。

なにこのハードスケジュール。

 

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「舞妓さんちのまかないさん」1巻(小山愛子)憧れの世界を裏から支えるお仕事

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「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)1巻 (少年サンデーコミックス)

「舞妓さんちのまかないさん」は小山愛子による漫画作品。

週刊少年サンデーで2016年末より連載を開始した。 

京都のとある屋形(置屋)で働く新しい「まかないさん」は弱冠16歳の少女。 

舞妓志望からまかないさんへ

彼女はもともと、青森から舞妓に憧れてやってきた。

だが、残念ながら舞妓としては向いていなかったようだ。

稽古中も、周囲に見惚れてしまうことが度々あって、自分のことよりも夢中になってしまう。

ついには、おとめを言い渡される。 

「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)1巻より、舞妓の道が閉ざされたキヨさん
(「舞妓さんちのまかないさん」1巻より)

こういう場合は屋形のおかあさん(女将)と舞のお師匠さんへ許しを請いに行くことで稽古再開が可能らしいのだが、彼女の場合は向いていないとはっきり言われている。

好きの種類が違ったんだろうね。

自分がどうしても舞妓になりたいというよりは近くで見ていたい気持ちが強いらしい。

一緒に地元を出てきた幼なじみのすーちゃんが順調に上達していくのを喜ぶ一方で、自分が同期であることを忘れがちになるのんびりしたところがある。

そんな彼女にも取り柄があった。

「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)1巻より、キヨさんと舞妓さん
(「舞妓さんちのまかないさん」1巻より)

家事は田舎で一緒に住んでいた祖母に一通り仕込まれてきた。

彼女の作る料理は絶品と言えるわけではないが、素朴で普通のほっとする味。

大所帯の台所を一人で任されるだけの才覚とその性格からくる安心感。

今ではみんなからも頼りにされるまかないさんである。

「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)1巻より、ぬか床と会話するキヨさん
(「舞妓さんちのまかないさん」1巻より)

ぬか床の仕込みもばっちり。

 

そんな彼女の楽しみは、休みの日に外で食べるおうちカレーだったりする。

腰を痛めて辞めていった前のまかないのおばちゃんの家に、カレーを作らせてもらいに出かけたキヨ。

屋形では里心がつくようなメニューは禁止されているようで、こういった家庭的な食べ物が貴重なのだ。

「舞妓さんちのまかないさん」(小山愛子)1巻より、カレーが待ちきれないキヨさん
(「舞妓さんちのまかないさん」1巻より)

一刻も早く食べたくてしようがない様子。

本来なら料理をしなくていい日なのに、作ることが気晴らしになるくらいなのは、もう天職なんだろう。

 

まかないさんとしての再スタートを切ったキヨがこれから、裏方として好きな世界に関わっていくのがどう描かれていくのか楽しみである。

彼女の暮らす屋形「市」の人員構成も謎のままだしね。

キヨはここに来て一年かそこらのはずなので最年少の部類に入るはずなんだけど、そんな雰囲気ではないというのも不思議な点である。

あとがき

キヨの働く台所は、京都市にあるゲストハウスがモデルになっている。

再現度が高いようなので気になる人は探してみるのもいいかも。

 

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「人形の国」1巻(弐瓶勉)遠い未来の変身ヒーローもの

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「人形の国」(弐瓶勉)1巻 (シリウスコミックス)

「人形の国」は弐瓶勉(にへい つとむ)による漫画作品。

2017年2月より月刊少年シリウスで連載を開始した。

第1話が86ページの大ボリュームだったこともあり、早くも1巻の登場である。

遺跡層におおわれた巨大人工天体「アポシムズ」。危険な「自動機械」や「人形病」に侵された者たちが彷徨う極寒の地表で暮らすエオ、ビコ、エスロー達は行軍訓練のさなか、強大なリベドア帝国の兵士に追われる不思議な少女を助ける。少女から託された「コード」と「七つの弾丸」、それは世界の運命を大きく変えるものだった……!! 『BLAME!』『シドニアの騎士』の弐瓶勉が描くダーク・アドベンチャー・ファンタジー開幕!

(「講談社コミックプラス」より)

追われる少女

その日、エスローは生徒たちを連れて地下の遺跡層へ出かけていた。

アポシムズと呼ばれるこの人口の星で、極寒の地上に暮らす人々は、糧を得るために地下に潜る必要がある。

そこは深く、危険なものと遭遇する可能性もある場所だった。

さらに中心部には、超構造体の殻に覆われた地底世界があると言われている。

 

かつて戦争があり、敗れた人々が地表に取り残されて何とか生き延びていると伝えられるが、何十世紀も経った現在では詳しく知るものも少ない。

遺跡層の中で食料となるパイプの実の群生を発見した彼らは、予定より早めに切り上げ地上に出た。

そこで目にしたものは、何者かに追われている少女の姿。

「人形の国」(弐瓶勉)1巻より、リベドア帝国兵に追われていたタイターニア
(「人形の国」1話より)

追手がリベドア帝国の兵士である事を確認したエスローは関わらない方がいいと判断するが、生徒の一人が制止を振りきって向かってしまう。

少女はある物を持って逃げている途中だったのだが、それはリベドア皇帝の手に渡れば世界が終わるという危険な代物だった。

やむなく兵士たちを殺害したエスローは、これまで想像もしなかった争いに巻き込まれていく。

辺境の城

 

「人形の国」(弐瓶勉)1巻より、リベドア帝国から逃れるために移住を決定
(「人形の国」1話より)

エスローたちが暮らしているのは三方を崖に囲まれた建造物で、彼らは城と呼んでいる。

一族をまとめるのはゼゾ。

彼はこの中で唯一の正規人形であった。

 

タイトルにもある人形とは何者なのか。

現時点で分かっているのは、地上においてはこの正規人形が絶大な力を持ち、多くを抱える帝国が最大勢力らしいこと。

正規に対しては、逃げていた少女タイターニアのような自動機械や、アポシムズで蔓延している「人形病」に罹った機械化ゾンビのような存在がある。

 

報告を受けたゼゾは、全員の移住を決意する。 

彼は帝国の恐ろしさを知っていた。 

変身ヒーローもの?

本作の印象として、仮面ライダーみたいという意見をよく見かけるが、正規人形の戦闘は体を鎧化して行う。 

特に最初に登場する敵の正規人形のイーユは触角もあって虫っぽいかも。

エスローの相棒になるタイターニアが随時解説してくれる。 

「人形の国」(弐瓶勉)1巻より、エスローの鎧化した初の戦闘
(「人形の国」1話より)

胸元からちょこんと顔を出しているのがかわいい。

普段の彼女は小さな折りたたみ式の自動機械の姿。

1巻で重要な用語はエナとヘイグス粒子で、これは作者の過去作にも登場するスターシステム的なものらしい。

エナは外観に関わる物質で、本体が骨格剥き出しの正規人形に人間の姿や服、鎧を形作るもの。

その際必要なエネルギーがヘイグス粒子で、蓄積できる量は個人によって限度があるが、敵を倒してエナを奪うことで容量を増やすことが可能。

世界観も過去のシリーズを知っている人には入りやすいのかも。

今作が初めてなので用語集も調べてみたんだけど、その分量にめげそうになった。

 

「人形の国」(弐瓶勉)1巻より、タイターニアが消化のお手伝い
(「人形の国」2話より)

この世界では機械も飲食できるようだ。

弱って固形物を受け付けないエスローのためにタイターニアが液状化してくれる。

確かに機械だけど、人型はかわいい女の子だけど、シュールな絵面である。

 

これから二人の帝国と戦うための旅が始まる。

アポシムズはかなり巨大な天体だが、帝国以外の国はどうなっているのか。
対抗できるところはまだ残っているのだろうか。

地底の住人は人なのかとか気になるね。

 

以前公開された読み切り版ではエスローたちに出会う前のタイターニアが描かれていて、彼女が出会った少年は地底に人形の国があると信じていたが果たして。

 

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「嘘酔い少女」1巻(綾野綾乃)他人の嘘で酔ってしまう女の子と彼女を支える幼なじみの日常を描く

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「嘘酔い少女」(綾野綾乃)1巻

「嘘酔い少女」は綾野綾乃による漫画作品。

WEBコミックぜにょんで連載中。 

他人の嘘で酔ってしまう特殊体質の女の子と、側でフォローする幼なじみの女の子によるコメディである。

嘘で酔う特殊体質

道行く人々を振り返らせる美少女、神宮寺椿には秘密がある。

それは目の前で嘘をつかれると、その嘘で酔っぱらってしまうという特殊な体質。

原因は不明だが、子供の頃からいつも悩まされてきた。

彼女にとって幸いなのは、酔っていた間の記憶が残らないことだろうか。 

そして、いつも幼なじみの犬丸はなが側に付いていること。

「嘘酔い少女」(綾野綾乃)1巻より、犬丸はなの決意
(「嘘酔い少女」1巻より)

人が集まれば嘘のない環境を守ることは困難である。

女子同士のカラオケや、学校のテスト期間など、お世辞や見栄や心遣いなども原因になり得るのだ。

なかなか大変な日常である。

酔いを覚ますためには、嘘を取り消す発言をすることが必要になってくるのだが、そのために不都合が生じる可能性は否定できない。 

「嘘酔い少女」(綾野綾乃)1巻より、授業中の先生の嘘で酔う椿
(「嘘酔い少女」1巻より)

先生の信頼よ…

 

あるいは手っ取り早い方法としては、やはりあれ。

「嘘酔い少女」(綾野綾乃)1巻より、椿のリバース中学時代
(「嘘酔い少女」1巻より)

酔ったときはこれが効果が高いかもしれないよね。 

椿が普通の学校生活を送れているのは彼女の素早い対応のおかげだ。 

迷いのない友達思いな行動には頭が下がる。 

 

そんな彼女の事を見る目があるからかどうか、後輩のファンも登場する。

「嘘酔い少女」(綾野綾乃)1巻より、犬丸はなのファン小雪登場
(「嘘酔い少女」1巻より)

行動は若干ストーカー気味だが真っ直ぐなところは微笑ましくもある。 

そしてその影響で、椿とはなの関係にも変化が…

 

2巻収録分ではまさかの百合展開かと思わせるエピソードも予定されている。

 

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「恋情デスペラード」4巻(アントンシク)遠眼鏡城のメイド対決。紋子、メイドになる。

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「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻 (ゲッサン少年サンデーコミックス)

「恋情デスペラード」はアントンシクによる漫画作品。

荒野を一人、徒歩での旅を続ける女渡世人、紋子。

人呼んで「刃雷のお紋」。

第4巻は、紋子を狙う刺客、夜叉子が現れる。

 

前回はこちら。

メイド イン 死闘―デュエル―!

隻腕渡世人・紋子ちゃんの真剣ラブ道中★最新刊! 今回出会ったイケメンは、インテリジェンス系お殿様。紋子ちゃん、メイドコスに身を包み、ご主人様のためにエンヤコラ。立ちふさがるは、前巻登場の新たな追手“ブラック紋子”! その正体やいかにでまさかの事態にとんでもない大物まで巻き込んだ空前絶後の――――第4巻!!

(ゲッサンWEBより)

紋子を姫と呼ぶ女

“刃雷のお紋”を捕らえるために行方を追っていた幕府の役人、ディラン左エ門・六串が殺された。

彼は江戸のFBIとも言うべき「泣く子も黙る」八州廻りの一人であった。

それぞれがかなりの手練であり、その辺の無法者に倒せる相手ではない。

現在紋子を追っているのは、第13代ショーグン配下の八州廻りと、駿府のアーサーJr.配下の隠密部隊である。

前回の最後に登場した謎の黒装束の女、夜叉子。

彼女の姿は紋子のものとよく似ている。

紋子に対してかなりの執着を見せていたが彼女は何者なのか。

「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻より、紋子を姫と呼ぶ女、夜叉子は死人?
(20話「星を見る殿 二の幕」より) 

紋子の雷型の髪は二つ名“刃雷”の元になったものと思われるが、同じ特徴を持つ人物がもう一人いる。

駿府藩のダーク帯刀、隠密部隊の頭であり、紋子の命を狙う張本人。

姫と呼ばれる紋子の血縁者なのだろうか。

あるいは育ての親か。

生い立ちの秘密が少しずつ明らかになってくる。

紋子と夜叉子のメイド対決 

夜叉子が現れたその頃、紋子はメイドになっていた。

招かれた先の遠眼鏡城の台所を壊してしまった代償としてである。

「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻より、修繕費のためメイドになった紋子
(19話「星を見る殿 序の幕」より) 

初のスカート姿。そして隠れニーハイだ。

女の子らしい格好だからか、つらい別れを経験したからか、今回のトキメキはややおとなしめ。

久々のシーンだが、この感じ。

「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻より、紋子のトキメキ美少女風
(19話「星を見る殿 序の幕」より) 

なんだこれ。かわいいぞ。

流れで夜叉子との対決はメイドとしての内助の功対決となった。

予想外の展開だけど、早速命のやり取りをするには惜しいキャラだしね。

家事も完璧で実はかわいいもの好きという貴重な存在。

紋子にも妹分認定されてるし、いずれデレるところを見せてほしい。

「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻より、紋子と夜叉子のハグ
(22話「星を見る殿 大詰め」より) 

民の暮らしを守る暴れん坊探偵

組織「オリガミ」の一員として血と死にまみれた子供時代から、長ドスのおじさんに救われアーサーJrの前で右腕を失うまでの紋子になにがあったのか。

肌身離さずにいるお守りの秘密とは。

そんな彼女の過去を垣間見せてくれるエピソード。

悪徳商人エチゴ屋の鉱山の実態を調査していた探偵、ジョン新右衛門・徳永に協力を依頼される紋子。 

「恋情デスペラード」(アントンシク)4巻より、暴れん坊ショーグン「時代を変えるのは人の心」
(24話「オタフクズ・ゴールドマイン 後編」より) 

名前からなんとなく想像できるが、そういう事である。

鉱山の奥に眠るもの、エチゴ屋の目的、厄介な存在になりそうな雰囲気がする。

これは成敗しなきゃ。 

あとがき

まさかの夜叉子かわいいキャラ。

ダーク帯刀による強制退場とかは勘弁してもらいたいね。

 

現在、Kindle版1巻が90%ポイント還元セール中。 

 

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漫画版「リトルウィッチアカデミア」1巻(左藤圭右)アッコの入学から流星丸の後日談も

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漫画版「リトルウィッチアカデミア」(左藤圭右)1巻 (角川コミックス・エース)

「リトルウィッチアカデミア」のコミカライズ第3弾が発売された。

左藤圭右(さとう けいすけ)によって月刊少年エースで連載中である。

前作は、劇場版の後にアッコのルーナノヴァ入学まで遡ってオリジナルの展開をするものだったが、今回はTVアニメ版の流れに沿いつつ補完的なサイドストーリーを描いている。

アッコのルーナノヴァ魔法学校入学

子供の頃、シャイニィシャリオの魔法ショーを観て魔女にあこがれたカガリ・アツコは、ついに名門校ルーナノヴァ魔法学校のある地・ブライトンベリーへ到着する。

早速、この町と学校をつなぐ停留所を探すことにしたアッコだが、町の人は誰もその場所を知らないのだった。

冒頭部分は、TVアニメ版の第1話をそのまま再現している。

漫画版「リトルウィッチアカデミア」(左藤圭右)1巻より、アッコとスーシィの出会い
(漫画版「リトルウィッチアカデミア」1巻より) 

スーシィやロッテとの出会いや、アルクトゥルスの森でのコカトリスとの対決からシャイニィロッドの発見と入学式。

この入り方は、アニメ版を観たことのない人でも読み進めやすいようにとの配慮だと思う。

そして本作の魅力は各話の間を繋ぐオリジナルストーリーにある。 

その後の流星丸

ルーナノヴァ杯ホウキリレーでダイアナと優勝を争ったアッコ。

元々ホウキに乗れない彼女がそこまで頑張れたのは、伝説のホウキ流星丸の存在のおかげであった。

これはロッテの行きつけの魔道具カフェに展示されていたもので、とある魔女によって施された魔力が宿っている。

レースの後、ホウキをカフェに返しに行くのだが、そこでアッコは本来の持ち主に返すことを提案するのだった。 

漫画版「リトルウィッチアカデミア」(左藤圭右)1巻より、流星丸を持ち主に返したい
(漫画版「リトルウィッチアカデミア」1巻より) 

「ホラ、ろくでもない」 のセリフがスーシィらしくていい。

この頃のアッコは、アーシュラ先生にもらった初等部用の教科書を参考に、ホウキと親睦を深めようとしていた時期。

アニメ版だと中庭でホウキをなだめたり脅したりの連続ティアフレーレの場面。

そんな彼女だから流星丸も元の持ち主の所に帰りたがっているのではないかと考える。

流星丸の運命は。

アッコのアルバイト

ルーナノヴァの魔導石がドラゴンたちに持ち去られる事件の直前のエピソード。

ルーシィが誕生日を祝ってもらったことがないと聞いたアッコは、サプライズのためにアルバイトをすることになった。

学外に出るわけにはいかないので、寮のゴブリンたちの仕事を手伝うことに。 

漫画版「リトルウィッチアカデミア」(左藤圭右)1巻より、アッコのアルバイト
(漫画版「リトルウィッチアカデミア」1巻より) 

珍しいアッコのメイド姿。

梅昆布茶を飲まされ戸惑うダイアナだが、密かに気に入ったようだった。

このダイアナはデレやすそう。

友達思いなアッコの行動が周囲を巻き込んでいく。

あとがき 

スーシィの家族が少しだけ登場するが、公式設定はないのかも知れない。

前作との違いも比べてみるのもいい。

ちなみに、てりてりお版ではルーシィのやんちゃな妹たちが騒動を巻き起こす回があるし、藤原ゆか版ではアッコの子供時代の同級生の男の子が登場する。

 

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「たとえとどかぬ糸だとしても」1巻(tMnR)諦めるしかない恋にどう向き合う?

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「たとえとどかぬ糸だとしても」(tMnR)1巻 (百合姫コミックス)

「たとえとどかぬ糸だとしても」はtMnR(とものり)による漫画作品。

コミック百合姫で連載中。

初恋の相手は、もう手の届かない人になっていた。

ごくごく平凡な高校生、鳴瀬ウタには、人には言えない秘密があった。それは、実の兄のお嫁さんである薫瑠に恋をしていること。決して実らない恋だけど、日々の営みが嬉しくて、その一方で兄との新婚生活を見ていると胸が張り裂けそうで…。彼女は心を押し殺す。そっと心に秘めた恋心が、目を覚まさないように――。

(コミック百合姫 | 一迅社WEBより)

 

鳴瀬ウタがその気持ちに気付いたのは、兄の怜一が結婚する日のこと。

相手の女性、薫瑠(かおる)への想いが恋なのだと知った。

伝えることも叶わない、諦めるしかない相手である。

 

彼女は現在、兄夫婦と三人で暮らしている。

片思いの相手が仲睦まじい様子を、一番近くで見続ける立場。

行き場のない思いをどうしたらいいのだろうか。

「たとえとどかぬ糸だとしても」(tMnR)1巻より、クロちゃんに恋愛相談
(「たとえとどかぬ糸だとしても」1巻より) 

友人のクロちゃんは何度も相談されてきているようだ。

「もう聞き飽きたんですけど」とバッサリだが、いつも話を聞いてくれるやさしい子である。

そもそも、ウタ自身がどうしたいのかよく分からずにいる。

無理に気持ちを伝えて波風を立てたいわけでもない。

 

好きの種類は違うけれど、家族として毎日を一緒に過ごすことができているし、幼なじみとして義理の妹として、とても大事にされている。

これ以上望むべくもない環境ではあるのだが。

「たとえとどかぬ糸だとしても」(tMnR)1巻より、久し振りに手をつなぐ
(「たとえとどかぬ糸だとしても」1巻より)

彼女の想いは果たして恋なのだろうか。 

小さい頃から大好きだったお姉さんがお嫁に行く。

たった一人の兄が結婚して別の家庭を持つ。 

うれしい事であると同時に、自分だけ取り残されたような寂しさも感じているだろう。

距離が近いからこそ気持ちの整理がつかないところもある。

「たとえとどかぬ糸だとしても」(tMnR)1巻より、ウタの過去
(「たとえとどかぬ糸だとしても」1巻より) 

加えて、過去の出来事で空白の期間があることも示唆されている。

このあたりは2巻以降で語られていくだろうが、要するに兄夫婦が唯一の家族と呼べる存在である可能性が高い。

「たとえとどかぬ糸だとしても」(tMnR)1巻より、恋の順序
(「たとえとどかぬ糸だとしても」1巻より) 

次の段階など望めない。

関係を壊すわけにはいかない大事な家族だ。

ウタとしては気持ちの整理をするしかないのだが、どうなるか。

あとがき

モヤモヤするんだけど続きは気になる。

原因としては兄嫁に恋愛感情を抱くだけの説得力が乏しいことかな。

クロちゃんにしておけば皆幸せだったりしてね。

 

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「私は君を泣かせたい」1巻(文尾文)見守りたい、その泣き顔を

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「私は君を泣かせたい」(文尾文)1巻 (ヤングアニマルコミックス)

「私は君を泣かせたい」は文尾文(ふみお あや)による漫画作品。

2016年からヤングアニマルで連載を開始した。

君の涙が、私の心を融かしていく―。他人に弱みを見せない優等生と、自分を隠さない不良少女。決して出会うことの ない2人を「涙」が繋ぐ。「2017年、次にくる百合漫画!」と大評判の、優しいガールズストーリー。

(私は君を泣かせたい 1|白泉社より) 

仮面優等生と不良少女の秘密

相沢羊(あいざわ よう)は猫をかぶっている。

クラスメイトとの交流もそつなくこなし、教師からの印象も上々。

後々自分に帰ってくると思えば勉強も苦ではない。

そんな彼女が一番安らげるのは、放課後の映画を観る時間である。

幽霊部員ばかりの映画研究部で部長の肩書を手に入れ、悠々自適に過ごしていた。

 

その日、行きつけの映画館に訪れた羊は、偶然クラスメイトに遭遇する。

スカジャンにロングスカートの不良少女で、絶対に関わりたくないタイプ。

相手に気付かれないうちに立ち去るつもりだった。

「私は君を泣かせたい」(文尾文)1巻より、映画を観て泣く虎島ハナ
(「私は君を泣かせたい」1巻より)

彼女の大粒の涙を見るまでは。

 

仕方なくハンカチを差し出した事がきっかけで、羊は彼女・虎島ハナ(こじま はな)と関わることになっていく。

とはいえ、学校での彼女はよく目立つ。 

これまで優等生を演じてきた羊からすれば、異端児である彼女と親しくして同類だと思われるのは不本意だろう。

「私は君を泣かせたい」(文尾文)1巻より、教室で話しかけられたくない
(「私は君を泣かせたい」1巻より)

一方、ハナは外見に似合わず、人懐っこくて泣き虫だ。

羊にきつく当たられてキョトンとする表情や、優しくされて笑顔になるとこなど彼女の素直さが出ててすごくいい。

これは羊じゃなくても泣かせたくなってくる。 

「私は君を泣かせたい」(文尾文)1巻より、移動教室を教える相沢羊
(「私は君を泣かせたい」1巻より)

この二人は正反対のようでいて、周囲に弱みを見せたくないという点で共通している。

すでにお互いの本性を知っているため、一緒にいる部活の時間は素の部分を出せる貴重なひととき。

羊の方はまだ壁が見られるので、彼女が心を開いていく過程を描いているとも取れる。

とすれば、タイトルにある泣かせたい君は双方を指しているのかもしれない。 

「私は君を泣かせたい」(文尾文)1巻より、姫川さんの誤解
(「私は君を泣かせたい」1巻より)

百合要素はこの二人よりもクラスメイトの姫川さんのほうが持ってそう。

クラスに馴染んでいく過程で、彼女の存在は欠かせない。

公式の紹介で百合って言っちゃってるけど、ここまでは健全な友情ものだし、そのままでいいと思うんだよね。

「私は君を泣かせたい」(文尾文)1巻より、初めてハナを名前で呼んだ羊
(「私は君を泣かせたい」1巻より)

一方で、相手を泣かせたいというのはSっ気と独占欲の表れだし、自分だけが知る姿を見たいということでもあることだし。

なんというか、惹かれるタイトルだね。

 

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「さよなら私のクラマー」13話(新川直司)どうやったら勝てる?

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「さよなら私のクラマー」13話より、どうやったら浦和に勝てる?

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。

13話は、インターハイ県予選の浦和邦成戦でお地蔵さんと呼ばれた恩田希が本領を発揮する。

 

前回はこちら。 

浦和戦前半終了 

決勝トーナメント1回戦、蕨青南対浦和邦成戦の前半が終了した。

スコアはなんと0対0 。

終始圧倒されながらも奇跡的に失点を免れた。

曽志崎の捨て身の守りもあったが、これは誰もが予想外の結果である。

「さよなら私のクラマー」13話より、天馬夕のシュート
(「さよなら私のクラマー」13話より) 

能見ファンの天馬の活躍の機会を阻止。 

 

天候の為にピッチのコンディションが悪いせいもあるが、チームの士気は高い状態を保っている。

うまくなりたい、もっといい試合がしたい。

かつての弱小チームの姿はそこにはない。

「さよなら私のクラマー」13話より、高度な戦術を教えてもらえるのは嬉しいです
(「さよなら私のクラマー」13話より) 

このまま守り切って、ではない、勝つためにはどうしたらいいのかという事を当たり前に検討する。

久乃木戦からのチームの成長が伺える。

今後必要なのは監督のやる気だろうね。

興味のない学生の、しかも女子の弱小校への監督就任で燻っていた深津監督も、最近ではちょっと楽しくなってきているんじゃないのかな。

「さよなら私のクラマー」13話より、浦和戦ハーフタイム
(「さよなら私のクラマー」13話より) 

相変わらずの無愛想だが。

このチームのやる気が、そして越前が引き出すのかもしれない。

とりあえず、傘に入れてやれよと思うけど。

 

そして見所は、恩田がついに実力を発揮する場面が登場すること。

恩田への監督の指示は、「26番(チカ先輩)をぶっちぎれ」だった。 

「さよなら私のクラマー」13話より、あんたはお地蔵さんにぶっちぎられるまぬけになるんだから
(「さよなら私のクラマー」13話より) 

常勝チームの要のスーパーボランチを相手に煽る煽る。

オウンゴールに怪我にベンチ外と散々だった今大会での汚名を一気に晴らす活躍を期待したい。

来月が待ち遠しい。 

「さよなら私のクラマー」13話より、恩田希始動、リフティングドリブル
(「さよなら私のクラマー」13話より) 

あとがき

今月は月刊マガジンでも表紙になっていた。

浦和邦成のユニフォームは赤と黒なんだね。

中旬には単行本3巻が発売。

 

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「はじめてのひと」1巻(谷川史子)はじめてにまつわる連作短編集

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「はじめてのひと」(谷川史子)1巻 (マーガレットコミックスDIGITAL)

「はじめてのひと」は谷川史子による漫画作品。

いろいろなはじめてを詰め込んだ連作短編集になっている。 

月刊ココハナで連載中。

おとなになっても、たくさんの“はじめて”がある。
はじめて好きになったひと はじめて憎んだひと はじめて執着したひと はじめて私を傷つけたひと はじめて私を愛してくれたひと
みずみずしい気持ちを描いた読みきりシリーズ、刊行開始!!

(はじめてのひと 1|集英社マンガネットより)

 

博物館で働いている田中久緒には、付き合って3年になる恋人がいる。

週末の時間を一緒に過ごす、そんな日々をこのまま続けていければいい。

お互いに30代を迎え、そろそろ話を切り出す雰囲気になったりもするが、彼女はそれを避けてきた。

 

高校生の時、つきあった相手がいた。

久緒にとって初めての人であるが、それが恋ではなく、早く大人になりたいためであった事が今も彼女を苦しめている。

「はじめてのひと」(谷川史子)1巻より、二度と取り戻せないもの
(「はじめてのひと」1巻より)

愛情というものを粗末にした、そんな自分が相手をちゃんと愛せているのだろうか。

そんな思いから、結婚に踏み切ることが出来ない。

 

シリアスな題材で始まる1話は、本作のタイトルから最もイメージされるであろう事について描かれている。

10代の頃の初めての相手が、心から好きな人であったか、いちばん大切な人であったか、自信を持ってそう言える人はどのくらいいるのだろうか。

アラサーになり、結婚をためらうほどの心の傷として残るというのは、男性の立場からすれば想像しにくいというか想像するしかない繊細な感情であると思う。

現在の恋人を大切に思うからこそ、今になって出てきたものなのかもしれない。

彼女の恋人である進之介は難しい対応を迫られるのだが、そこが見どころになってくる。

 

次に登場するのは、久緒の働く博物館の仕事つながりで、デザイナーの鳥野とその恋人のOL目黒香菜。

彼女は、鳥野のことが好きすぎるようだ。 

「はじめてのひと」(谷川史子)1巻より、好きすぎてふるえる
(「はじめてのひと」1巻より)

ものすごく好きなようだ。

とても微笑ましいのだが、その温度差に悩むこともある。

相手の態度がそっけなく感じて、愛されているのか不安になったりするのだ。

 

香菜の姉と思われる浜島理香は予備校の講師をしているが、友人を引きあわせたところ、二人が想像以上に意気投合してしまい悶々とする。

「はじめてのひと」(谷川史子)1巻より、紹介した二人が仲良くなりすぎて嫉妬する
(「はじめてのひと」1巻より)

自分が参加していない交流の出来事もいちいち報告が来て、嫉妬を抑えられないことに悩むのだった。

 

個人的に一番気になっているのは、4話の登場人物。

これだけが続きもの。

久緒の大学の後輩で絵画修復の仕事をしていて、職場が隣の建物という橘与(たちばな くみ)。

久緒が鳥野に誘われた知人のライブに、欠員が出たために彼女が誘われる。

彼女は、出演者であったチェリストの諏訪内に徐々に惹かれていく。

「はじめてのひと」(谷川史子)1巻より、なんだか離したくないな
(「はじめてのひと」1巻より)

最初は、楽しかったから次のライブもいいかなって感じで、営業活動だよねって認識だったんだけれど。

人懐っこい笑顔や、大きな手や、この言動に、次第に存在を意識していく。 

相手は一回り以上も年上で、子供扱いされているようなところもあるのだが、大事にされていることがうれしくて、やがて恋に変わっていくのだった。 

「はじめてのひと」(谷川史子)1巻より、電話を終えた与ちゃん
(「はじめてのひと」1巻より)

その過程での彼女の様子がかわいい。 

このままうまくいくなら、それはそれでいいのだが、諏訪内が一人になった時に見せた表情であれっ?となる瞬間がある。

このへんの描写がうまい。

そういえば、彼が独身だという言及がどこにもないぞ、と。

ちょっと待てよ、となったところで2巻に続くのである。

あとがき

最初に表紙を見た時にはそんなに惹かれなかったんだけど、読んでみたらとても好みの作品だった。

さすがの安定感。

そして2巻が超絶気になっている。(Kindle版は6月23日発売)

作風からして後味の悪いことはないとは思うんだけどね。

どうなるの?

 

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「ぼくたちは勉強ができない」1巻(筒井大志)秀才男子が天才美少女の教育係に

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「ぼくたちは勉強ができない」(筒井大志)1巻 (ジャンプコミックスDIGITAL)

「ぼくたちは勉強ができない」は筒井大志による漫画作品。

週刊少年ジャンプで2017年より連載を開始した。

すべての教科を卒なくこなす秀才の高校生が、一点集中型の天才たちの教育係を任命されるハーレム型のラブコメである。

大学推薦を狙う、高校3年生の唯我成幸はなぜか天才美少女の文乃と理珠の教育係を任される。完全無欠に見えた二人だが実は意外な悩みを抱えていて……!?

(ぼくたちは勉強ができない 1|集英社マンガネットより)

秀才男子と天才美少女

一ノ瀬学園に通う唯我成幸(ゆいが なりゆき)は秀才である。

高校では部活も遊びもせず勉強に打ち込んできた。

その結果、ほぼ全教科で8割以上の成績を維持している。

彼のモチベーションを保っているのは、3年時に選ばれる特別VIP推薦にある。

それは、歴代の生徒のなかでも特に優秀と見なされたものに限り、その後の大学進学にかかる全ての学費を免除するシステム。

父親を亡くし、家計の苦しい中で家族を支えてやりたいと願う彼にとって、どうしても欲しい物であった。

「ぼくたちは勉強ができない」(筒井大志)1巻より、秀才男子が天才美少女の教育係に
(「ぼくたちは勉強ができない」1巻より) 

そんな彼に、千載一遇のチャンスがやって来る。

学園には、文系と理系にそれぞれ他の追随を許さない生徒がいるのだが、その進学へ向けた教育係を引き受けることを条件に、推薦を認めるとのこと。 

 

緒方理珠(おがた りず)と古橋文乃(ふるはし ふみの)の二人は、学園が誇る天才で、共に美少女として知られている。

「ぼくたちは勉強ができない」(筒井大志)1巻より、得意分野以外はポンコツ仕様
(「ぼくたちは勉強ができない」1巻より) 

ただし、得意科目以外はポンコツであった。 

これが苦手というレベルではなく、かなりひどい。 

担当してきた教師たちがみな匙を投げるほどなのだが、ここに彼の腕の見せ所がある。 

 

唯我も昔は勉強ができなかった。

現在の成績を残すまでには相当な努力と工夫をしてきているはずなのだ。

出来ない経験をしているからこそ出来ないものの気持ちがわかる。

そして、小さな姉弟がいることもあり、面倒見がいい。

「ぼくたちは勉強ができない」(筒井大志)1巻より、徹夜でアドバイスノートを作成
(「ぼくたちは勉強ができない」1巻より) 

徹夜で各自にアドバイスノートを作ってくるほどにマメな性格だったりする。 

この調子で彼女たちの成績を上げることができるのか。

 

注目は、途中から参加するもう一人の美少女。

武元うるかは唯我の中学からの同級生で、出場する水泳の大会でことごとく優勝している天才児。

「ぼくたちは勉強ができない」(筒井大志)1巻より、水泳少女・武元うるかもメンバーに
(「ぼくたちは勉強ができない」1巻より) 

彼女も壊滅的に勉強ができない様子。

スポーツ推薦とはいえ、英語が必要である彼女の教育係も追加されることになる。

そして、彼女は唯我に恋心を抱いているのだ。

彼女の参加でラブコメ展開にも拍車が掛かるかもしれない。

あとがき

ジャンプの単行本は久々に買った気がする。

電子書籍版は本来16日の予定だったのだが、発売即品切れ状態で緊急配信になったとのこと。

集英社は通常でも1ヶ月遅れの配信なので異例中の異例のことである。

 

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「空電ノイズの姫君」9話(冬目景)夏休みと磨音の決意

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「空電ノイズの姫君」(冬目景)9話より、夜祈子は磨音父のファン

「空電ノイズの姫君」は冬目景による漫画作品。

月刊バーズで連載中。

夏休みに入った磨音と夜祈子だったが、磨音はバンド加入の話を切り出せずにいた。 

 

前回はこちら。

1巻は8話まで。

夏休み突入

知人の紹介で知り合った、大学生の高瀬と日野のバンド「アルタゴ」に、流れで加入を了承した磨音。

彼女は父にそのことを言い出せないでいた。 

初対面時の彼らの印象がよくなかったこと、実力を伴っていなかったこともあり、いい反応はしないだろうと予想される。

父・拓海からすれば、愛娘を目の前で見下されたわけなので、内心かなりご立腹だったはず。

 

そのうち学校は夏休みに突入したようだ。

「空電ノイズの姫君」(冬目景)9話より、磨音と夜祈子の夏休み
(「空電ノイズの姫君」9話より) 

高校生の夏休みの定番といえばバイトに海だが、冬目景作品で水着の登場はちょっと記憶にない。

夜祈子のバイト先もゲイバーだし、どうなることか。

夜祈子、保坂家を訪問

そんなある日、夕飯を磨音の家で一緒に食べることになった夜祈子は、磨音の父と対面する。

「空電ノイズの姫君」(冬目景)9話より、夜祈子と磨音父の対面
(「空電ノイズの姫君」9話より) 

実は彼女は拓海の昔のバンド、「The Amber Jack」のけっこうなファンだったらしい。

いつもクールな彼女が取り乱すほどに。

でも実の娘からすればただのオジサンなんだね。

喜ばれるのはうれしいだろうけど。

 

磨音と夜祈子はいずれ一緒に組んで音楽をやっていくと思っているのだが、そうすんなりとはいかないのかもしれない。 

「空電ノイズの姫君」(冬目景)9話より、夜祈子の歌に興味を示す磨音父
(「空電ノイズの姫君」9話より) 

これは父に見込まれそうな流れじゃないのだろうか。

磨音がバンドのことを言い出せないうちに、夜祈子を持っていかれる可能性もある。

メンバーの死から、もうバンドはやらないと決めていた拓海が再び活動する原動力になり得るのか。

磨音、ギター購入を決意

一方、「アルタゴ」の磨音と日野は全体練習の日に高瀬にすっぽかされていた。

高瀬は一度集中しだすと他のことが目に入らなくなるタイプ。

作曲ができるという一点を除けば、もうどうしようもない。 

「空電ノイズの姫君」(冬目景)9話より、高瀬が音信不通
(「空電ノイズの姫君」9話より) 

演奏者としては引退してもらって、得意分野に集中させたほうがいいのだろうけれど。

でも意外と腐女子からの評判は悪くないようでもある。

なるほどそっち方面の需要ね。

 

磨音はこれまで父のギターを借りて演奏していたが、バンド活動を行うにあたり、自分のギターを買うことを決意する。

表紙にもなっているレスポール・スペシャルも似合っていたけど、新しく手に入れるとなると、バイトを始める流れかな。 

「空電ノイズの姫君」(冬目景)9話より、ギターを買う決心をする磨音
(「空電ノイズの姫君」9話より) 

父の説得へのハードル上がってる。 

 

先日、本作についての作者のインタビューが掲載された。

バンドものというよりは磨音と夜祈子、2人の女の子の友情というか関係性を描きたいというのが軸ですね。もともと磨音のキャラクターは、「ギターのうまい女の子を描きたいな」と、けっこう前から短編用に温めていて。

(「特集 冬目景×玉置勉強対談 - コミックナタリー」より)

この考え方からすれば、必ずしも同じバンドである必要はないのかもね。

掛け持ちとかもあってもいいわけだし。 

 

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「さよなら私のクラマー」3巻(新川直司)浦和邦成との再戦へ

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「さよなら私のクラマー」(新川直司)3巻 (月刊少年マガジンコミックス)

「さよなら私のクラマー」は新川直司による漫画作品。 

月刊マガジンで連載中。

3巻は、1年生チームのフットサル大会参加とインターハイ県予選開始。

ユニフォーム代を稼ぎ出すため参加したフットサル大会。恩田達は、人数不足を補うため久乃木の佃と井藤を巻き込み、即席チームを結成! 大会を順調に勝ち上がるが・・決勝戦で待ち構えていたのは井藤を敵視するプレイヤーだった!

(『さよなら私のクラマー(3)』|講談社コミックプラスより)

 

前回はこちら。 

3巻は8話から11話までを収録。

フットサル大会への参加

優勝賞金を手に入れるため、都内のフットサル大会に参加した恩田たち四人であったが、白鳥たち他のメンバーの遅刻により、出場も危ぶまれる事態となった。

そんな時にちょうど通りかかったのが、久乃木学園の1年生コンビ、佃と井藤である。

練習試合での対戦から、意外と早い再会であった。

二人の協力を得られるのは願ってもないこと。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)3巻より、スーパーゴレイロ佃真央
(「さよなら私のクラマー」8話より) 

現状で考えられる最高の豪華メンバーで大会への参加が決定した。

彼女たちは賞金を手に入れることができるのか。

 

「さよなら私のクラマー」8話(新川直司)フットサル大会決勝へ

作戦完遂

順調に勝ち進んだワラビーズ(仮)の決勝戦の相手は、ハイリーズと名乗るチームであった。

メンバーの一人、九谷は井藤や佃とかつてのチームメイト。

高校女子サッカー日本一の久乃木学園で、1年生にして10番を背負う井藤が中学時代まで無名だったのはなぜなのか。

そして、九谷が井藤を敵視する理由は? 

「さよなら私のクラマー」(新川直司)3巻より、フットサル大会での井藤と九谷の対決
(「さよなら私のクラマー」9話より) 

恩田と出会ったことで、井藤も影響を受けつつある。

再び試合で相まみえるのは関東大会か、それとも全国か。

 

「さよなら私のクラマー」9話(新川直司)作戦終了と新しいグラウンド

県予選開幕

高校総体埼玉県予選が始まった。

今年の蕨青南高校は一味違うことが知られるだろう。

新チームでどこまで勝ち上がれるか。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)3巻より、念願のユニフォーム
(「さよなら私のクラマー」10話より) 

自分用のユニフォームを受け取るのは、恩田にとって本当に久しぶりのことだ。

公式戦のピッチに立つことは、長い間の念願だった。

だからこそ、この二人の表情は感慨深い。

なお、FWの白鳥がついに活躍する。 

 

「さよなら私のクラマー」10話(新川直司)インターハイ予選開幕

浦和邦成登場

県予選決勝トーナメントに進んだ蕨青南が、次に戦う相手は浦和邦成。

昨年、周防と曽志崎が見学した練習試合で対戦している。

当時は田勢の孤軍奮闘ぶりが目立つばかりの一方的な結果だった。

「さよなら私のクラマー」(新川直司)3巻より、浦和邦成のキャプテン財前奈々美
(「さよなら私のクラマー」11話より) 

しかも、登場していたメンバーからして浦和側は1年生チームだった可能性もある。

それでも、現在のキャプテンの財前奈々美は蕨青南を侮ってはいない。

大会9連覇へ向け、久乃木学園との再戦、さらには日本一になるために確実に勝ちに来ている。

強豪で選手層も厚いのだろう、専門の偵察隊が存在する様子。 

分析されるワラビーズの中で、存在が明らかになっていないのは、予選リーグで調子の悪かった恩田だが、それを試合に活かせるか。

 

「さよなら私のクラマー」11話(新川直司)埼玉の絶対王者

あとがき

久乃木戦での劣勢の印象が強いものの、ポテンシャルは高いものを持っているワラビーズ。

試合毎に強くなっているとは言え、まだ浦和に勝てるだけの力はないだろうが、番狂わせもあるかと思わせる展開になっている。

1年生組の活躍次第か、できれば田勢キャプテンにも活躍の機会が欲しい。

 

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「百年のワルキューレ」1巻(三月薫)百年に一度の恋が世界を狂わせる

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「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻 (少年マガジンエッジコミックス)

「百年のワルキューレ」は三月薫(さんがつ かおる)による漫画作品。

少年マガジンエッジで連載中。

百年に一度選ばれるという、絶大な力を持つ剣の乙女をめぐる物語。

帯の言葉は「この世界は一人の女に狂っている」。

かつての革命で全てを失ったローレシアの皇子・ニコライ(クラウス)は、数奇な運命の巡り合わせで、新たな「剣乙女」と出会う。

百年に一度の運命の恋が、世界に戦乱を呼ぶ――。

(少年マガジンエッジ公式サイト | 百年のワルキューレより)

革命と剣の乙女

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、ワルキューレの誕生
(「百年のワルキューレ」1巻より)

この世界では、百年に一度の「ギフト」と呼ばれる光とともに、剣の乙女ワルキューレが選ばれる。

絶大な力を与えてくれる女がいる

「天に見初められ 閃光の祝福を受けた 百年に一度の女は 人の理を外れ 神鉄の剣を抱く」 

伝承がそう謳う女は、その日から不変の姿で生き、生涯で一人の男に剣を授ける

最北の国ローレシアで起こった革命により、人々はワルキューレの神剣の力を目の当たりにした。

難攻不落と云われた要塞も一晩で陥落し、皇帝の一族は処刑される。

第一皇子のニコライと弟のアレクセイも、その日命を失うはずであったが、リーダーの男の気まぐれで生き延びた。

絶望でも希望でもないその眼が映す未来を見てみたいという理由。 

あえて禍根を残す決断は、男が神剣保持者として絶対的な力を有しているからでもあった。

神剣イリヤを持つ新たな王ヴィクトルと皇子ニコライによる対立は、この後の世界に何をもたらすのか。

雪山の出会い

7年後、隣国ハイデルブルグから越境した軍人の中に、ニコライの姿があった。

今ではクラウス・フィンブルと名乗っている。 

百年に一度のギフトの光が再びローレシアに落ち、その調査のための潜入である。

季節は冬、寒さの厳しい雪国の山中で、彼らは何者かに追われる裸の少女と遭遇する。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、アーシャとの出会い
(「百年のワルキューレ」1巻より)

見つかるわけにはいかない任務ではあったが、目の前で助けを求める相手を放って置けるはずもなかった。

そして、彼女こそがギフトに選ばれた五人目の剣乙女(ワルキューレ)であった。

これによって両国は彼女を手に入れるために動き出すことになる。

神剣をめぐって

潜入調査に参加したクラウスたちは、そのまま彼女の護衛の任に着く。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、クラウスと仲間たち
(「百年のワルキューレ」1巻より)

このコマが彼らのキャラがよく表れていると思う。

アリューゼ・ランツェとユリア・ナイト、そして奴隷だった少女アーシャ。

 

前回の神剣誕生からわずか7年、おそらくこれまでで最も間隔の短いものとなるだろう。

伝承によると、力を授けられるのは剣乙女が選んだ一人だけであり、その後は持ち主と運命をともにする。

神剣誕生の条件や方法は明言されていないので憶測ではあるが、「百年に一度の運命の恋」が持ち主を選ぶことと同義であると思う。

そして、神剣は乙女が一度だけ姿を変えたものであるかもしれない。

悲恋と取るのか成就と取るのかは難しいところだが。

4人目のイリヤが長い間持ち主を選ばなかったのは、人の姿で見届けたかったのかもね。

そうだとすれば酷な運命である。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、激昂するクラウス
(「百年のワルキューレ」1巻より)

いつかクラウスが神剣を手にすることになるのだろうか。

彼は祖国でのことを忘れたことはない。

仇の一人・イヴァンを見つけて感情的になる場面も見られる。

ただ、ヴィクトル王とその仲間たちへの復讐が祖国の為になるかというとそれは違うかもしれない。

なぜ革命は起こったのか。

「百年のワルキューレ」(三月薫)1巻より、クラウスとヴィクトルの再会
(「百年のワルキューレ」1巻より)

ヴィクトル王がその気になれば、力尽くで剣乙女を奪うことは容易だろう。 

だが現時点では彼は悪役キャラには見えないのだ。

彼が王位に就いてからローレシアの国民の暮らしはよくなったと思われる節もある。

 

2巻ではクラウスの7年間が描かれるだろうか。

帝国滅亡後に弟アレクセイと二人、縁戚だった隣国に保護されたが、その扱いには差がある。

戦う力を付けるのは彼の希望でもあるかもしれないが、身分も名前も隠しているのはなぜなのか。

あとがき

本作が好きな人は同誌の「流星傘下」も気に入るのではないかと思ったが、そちらは来月の3巻が最終巻になるとのこと。

掲載誌の注目度が低いのもあるんだろうけど、無事に続いて欲しいと思う。

 

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「とんがり帽子のアトリエ」11話(白浜鴎)ココとアガットの救助作戦

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「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)11話扉絵

「とんがり帽子のアトリエ」は白浜鴎による漫画作品。

月刊モーニング・ツーで連載中。

11話は、ココとアガットが崖下に転落した少年の救出に挑む。

 

前回はこちら。

ココとアガットの救出作戦

キーフリーとオルーギオによって川に流されそうになっていた所を助けられた旅人たち。

多少の怪我はあったものの無事に済んでいたのだが、そのうちの一人、クスタス少年が荷物を取りに崖下に降りようとして崩落を招いてしまう。

ココとアガットは困難な状況に立たされた。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)11話より、アガットからあわせ指輪を受け取るココ
(「とんがり帽子のアトリエ」11話より) 

足場の悪い環境で彼を助けるには魔法を使うしかないのだが、一緒に落ちたココは魔法道具と一緒に水に浸かってしまっている。

加えて、大岩の除去と人々の視線を解決する必要がある。

 

この世界では魔法を使用するところを魔法使い以外に見られてはならないという規則があった。

1話の時のように大きな魔法陣が必要な際は空間を遮断するしかないが、日常的なものであれば解決する方法があるようだ。

ただし、試験に合格しなければならない。

アガットもそのための練習をしていると話していたことがある。

だが今回は魔法を使うのはココなのだ。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)11話より、注意を逸らせるアガットの魔法
(「とんがり帽子のアトリエ」11話より) 

アガットがみんなの注意を逸らすために使った魔法は成功し、後はココに委ねられた。

ここぞという時のアガットは頼りになるね。

また、ココの確かな成長も見られる。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)11話より、浮遊魔法で少年クスタスを救出するココ
(「とんがり帽子のアトリエ」11話より) 

弟子入り試験の時に見せた浮遊魔法の応用でクスタスを救出。

怪我人を背負いながらの微妙なコントロールを要するが、調理での訓練の甲斐もあり、調整が可能になっている。

 

そして、リチェの壁崩しの魔法を使ったこと。

ドラゴン事件の時、自分だけ魔法を使えない悔しい思いをしながらも、熱心に見学して何度も何度も練習した。

彼女のクスタスを助けたいとの強い思いがうまく作用したのかもしれない。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)11話より、リチェの壁崩しの魔法を思い出した
(「とんがり帽子のアトリエ」11話より) 

だが、ここで一件落着とはいかない。

ココとアガットに魔警団が接触。

そもそも今回の事故には不審な点が見られる。

これは罠なのか。

キーフリーたちは間に合うのだろうか。

「とんがり帽子のアトリエ」(白浜鴎)11話より、魔警団に拘束されるアガットとココ
(「とんがり帽子のアトリエ」11話より) 

あとがき

今月号で第2巻の発売日と表紙のラフが公開された。

8月23日、けっこう先だね。

表紙はアガットになる予定。

おそらく10話までの収録になる。

 

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「はじめてのひと」2巻(谷川史子)この恋はどこへ向かうのか

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「はじめてのひと」(谷川史子)2巻 (マーガレットコミックスDIGITAL)

「はじめてのひと」は谷川史子による漫画作品。

月刊ココハナで連載中。

はじめてにまつわる連作短編集であるが、前回から続く橘与(たちばな くみ)編から始まる。 

 

こんな風に人を好きになったの、はじめて──
恋の始まりを思い出させてくれた16歳上のあのひと 大きな手で素敵なチェロを弾いて 朗らかで笑った顔が少年みたいで 人懐っこくて、でも時々ちょっと淋しそうで いつだってやさしく頭を撫でてくれる 好きだといったら俺もだよ、と返してくれたのにごめんねって言ったのは、どうして…?

(はじめてのひと 2|集英社マンガネットより)

前回はこちら。

 

美術館で絵画修復の仕事をしている橘与(たちばな くみ)は、先輩の田中久緒に誘われていったライブで、チェリストの諏訪内(すわない)と出会う。

彼のライブに通う内に、その言動に、だんだん惹かれていく。

彼女の日常は色づき始めていた。

「はじめてのひと」(谷川史子)2巻より、与と大家さんの朝の会話
(「はじめてのひと」2巻より)

大家さんにもかわいがられているようだ。 

敷地内の離れを借りて住んでいるため、一人暮らしの割には広いうちで、雨戸も自分で開け閉めしている。

産みたての卵での朝ごはん、部屋も整っていて、丁寧な暮らしをしていることがうかがえる。

「はじめてのひと」(谷川史子)2巻より、諏訪内のことを考えて浮かれる与
(「はじめてのひと」2巻より)

最近の彼女は浮かれていた。

彼のことを考えるだけでとても幸せそうで、周りにも何かいいことがあったなとバレバレなんだけど、仕事にはむしろいい影響を与えているようでもある。

「ささやかだけど、好きな人と約束をした未来がある。
それだけでこんなに嬉しくなること、頑張れること、世界が輝くこと、
はじめて知った気がする。」

問題は、諏訪内が独身なのかどうかということ。

16歳年上の人である。

すでに結婚していても不思議はない。

彼は弦楽器奏者なので指輪では判断しにくいし、これまで家族の話には触れていない。

ライブハウスの知りあいらしき人も、いい年してこの人は、くらいの反応であった。

「はじめてのひと」(谷川史子)2巻より、与と諏訪内の関係を心配する久緒。不倫なのか。
(「はじめてのひと」2巻より)

何より、与は妻帯者がちょっかいを出してくるわけがないと思いこんでいる。

大事に育てられてきた彼女は人を疑ってみることがあまりないのかもしれない。

そんな彼女を久緖は心配する。

かわいい後輩が変な男に引っかかったりしないか、しかも自分が誘ったことが原因で、与を傷付けることになったりしたら後悔では済まない。

言葉に気を使いながらも的確に与に伝えるところはさすが先輩である。

「はじめてのひと」(谷川史子)2巻より、与の家を訪問する諏訪内
(「はじめてのひと」2巻より)

そのことを本人に確かめたらなんと答えるか。

与は覚悟を決めるのだった。

諏訪内め。

 

今回は1巻まるごと与と諏訪内二人の話である。

そして3巻もそんな雰囲気なので、もはや連作短編集とは言えないのかもしれない。

表紙で察せられるように、予想される通りなのだが、どう転んでも与が泣く流れになりそうなのがつらいね。

最終的には彼女が幸せになる結末になるといいけどね。

次は1年後かな。

 

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「ふしぎの国の有栖川さん」2巻(オザキアキラ)大人の階段登っちゃう?

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「ふしぎの国の有栖川さん」(オザキアキラ)2巻 (マーガレットコミックスDIGITAL)

「ふしぎの国の有栖川さん」はオザキアキラによる漫画作品。

別冊マーガレットで連載中。

過保護な祖父に育てられた有栖川さんは、ちょっと変わった女の子。

古風に育てられた有栖川鈴は完璧イケメン・野宮宗介と出会いウシさんの如くゆっくりなペースでそれはもうやんごとなく、ゆっくりと絆を深めていきます。2巻は野宮くんのイケメンシーンが盛りだくさん! いじらしいふたりの恋物語、お楽しみあれ。

(ふしぎの国の有栖川さん 2|集英社マンガネットより)

 

前回はこちら。

二人の関係にも進展が

有栖川鈴は悩んでいた。

友人たちにも「プライベートの過ごし方が晩年」とまでいわれた彼女の日常に、大きな変化が訪れている。

初めて同世代の男の子の友達ができ、それぞれの友人同士で遊びにも出かけるようになった。 

「ふしぎの国の有栖川さん」(オザキアキラ)2巻より、メールアドレスを交換した有栖川さん
(「ふしぎの国の有栖川さん」2巻より) 

水族館に行った際には、野宮とメールアドレスも交換してしまった。

そんなことでも彼女にとっては大事件である。

野宮と過ごす時間が、メールの何気ないやりとりが、楽しすぎて怖いくらいだという。

自分が間違った道に進んでいるのではないかという気がしてきていたが、幼なじみのなっちゃんによると、それは恋であるとのことだった。

二人の関係に、さらなる進展が待ち受けているのだろうか。 

「ふしぎの国の有栖川さん」(オザキアキラ)2巻より、こりゃついに抱かれるな
(「ふしぎの国の有栖川さん」2巻より) 

今回は、鈴の高校の球技大会に始まり、許嫁登場、みんなで勉強会、夏休み突入と盛りだくさんである。 

距離を縮めるには持って来いなイベントではあるが、有栖川さんにかかればそう簡単にはいかないのである。

ただ、自分の気持ちに気付き始めている彼女は、野宮のことを意識してしまう。

周囲からすればいいかげん付き合っちゃえばいいのにという状態なので、あとは告白を待つのみなのかな。

ちなみに海へは行きません。 

「ふしぎの国の有栖川さん」(オザキアキラ)2巻より、海へは行きません
(「ふしぎの国の有栖川さん」2巻より) 

野宮も天然なところがあるので告白まで遠そうな気もするが、友人の菅谷(メガネ)に言われた今の立場では何かあっても文句は言えないとの言葉で、動き出しそうな予感はある。

終盤ではついに二人きりでのデートが実現する。

「ふしぎの国の有栖川さん」(オザキアキラ)2巻より、有栖川さんは好きな人いるの?
(「ふしぎの国の有栖川さん」2巻より) 

有栖川さんの、顔に出ちゃってるこの感じ。

このあとどうなるの?

 

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「大上さん、だだ漏れです。」1巻(吉田丸悠)思春期の妄想がほとばしる

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「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻 (アフタヌーンコミックス)

「大上さん、だだ漏れです。」は吉田丸悠による漫画作品。

月刊アフタヌーン2016年12月号より連載を開始した。

わたしのアソコ、あばかないでっっ!!  「男子のアレって仕組みどうなってんの?」 エロいことに興味しんしんだが、それをひた隠しにしている女子高生・大上さん。こんなのバレたら生きてけない……肩身が狭いながらも平和に過ごしていたはずが、クラスの柳沼(やぎぬま)くんと接したことで、リビドーがモロ出しになってしまう! さわりたいけど、さわれない! 純情な妄想が暴発する思春期エロラブコメ、全力発射!!!

(講談社コミックプラスより)

特異体質男子と妄想女子

高校に入学してから2ヶ月が経とうというのに、大上芽衣子(おおがみ めいこ)には友達がいなかった。

教室でもいつも読んでいるのが性に関する本だなんて、誰にも知られたくない。

思春期まっただ中の彼女は、異性のことが気になって気になってしょうがないのだが、中学時代の出来事がトラウマとなり周囲に壁をつくってしまっていた。

うっかり誰かと仲良くなったりして、脳内妄想を口走ってしまったら目も当てられない。

「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻より、ちんこ見せて
(「大上さん、だだ漏れです。」1巻より)

そんなある日、クラスで同じように一人で過ごしている柳沼くんと関わるようになる。

きれいな顔立ちをしていて穏やかな性格の彼は、皆にも嫌われているわけでもないのに、周囲との接触を避けているようなのだ。

その原因は彼の体質にあった。

「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻より、触れると本音を口走ってしまう
(「大上さん、だだ漏れです。」1巻より)

原因はわからないが、彼の身体に触れた者は、その意志に関係なく本音を口走ってしまうという。

幼い頃から他人の本音を聞かされてきた彼は、すでに達観している。 

男の人も女の人もそういうものだと思っているので、今さら大上さんのセクハラ発言で動じることはない。

代わりに、お互いの状況を知ったところで友達の練習をすることを提案するのだった。

「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻より、本音があれとかピュアかよ
(「大上さん、だだ漏れです。」1巻より)

1話での「ち◯こ見せて」がインパクトが大きいが、全体的にはなかなか真っ当な青春ものになっている。 

見た目は恐いが手芸が得意なピュア男子・松隈くんや、クラスのリア充女子・根津さんも登場し、ぼっち生活から広がっていく。

柳沼くんを介して顕になる彼らの妄想は、この年代の子たちには当たり前の異性への興味や、些細なものだが聞きにくい悩みだったりする。

他の人も同じことを考えたり悩んでたりするんだと気付ければずいぶん楽になる。

「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻より、袋とじを覗く動き?
(「大上さん、だだ漏れです。」1巻より)

コンビニの雑誌コーナーで、袋とじが気になる根津さんと察する大上さん。

同類かな?

彼女は男子にとってのワキ毛とは何なのか知りたがっていた。

このことがきっかけで彼女は大上さんと意気投合することになる。

興味をもつのは恥ずかしいことではないし自然なこと。

口にするかどうかの違いだったりする。

柳沼くんの特異体質と、彼に勇気を与える?大上さんによって周囲の人々にも変化が表れる。

もともと自己肯定感の低かった二人の再生と成長の物語と言えるかもしれない。

「大上さん、だだ漏れです。」(吉田丸悠)1巻より、いつかきっと確かめたいの
(「大上さん、だだ漏れです。」1巻より)

とりあえず大上さんにはこのまま突っ走ってもらいたい。

 

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「エルフさんは痩せられない。」1巻(シネクドキ)ぽっちゃり系亜人さんたちのダイエット生活

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「エルフさんは痩せられない。」(シネクドキ)1巻 (ガムコミックスプラス)

「エルフさんは痩せられない。」はシネクドキによる漫画作品。

コミックガムで2016年12月より連載を開始した。

異世界の住人たちの悩み、それは人間世界の食べ物が美味しすぎることであった。

エルフさんの場合

世界は運動不足、ストレス、そしてカロリーに溢れている。

その日、整体リラクゼーション「スマイリーボア」の閉店前に現れた不審な人物、絵留札さんは初めての客だった。

彼女の悩みは、お腹周りのお肉が気になること。

「エルフさんは痩せられない。」(シネクドキ)1巻より、お腹周りのお肉が気になる
(「エルフさんは痩せられない」1巻より)

かつて野山を駆けていた頃と違って、最近になってぽっちゃり体型になってしまったという。

その正体はエルフなのであるが、彼女がこちらの世界へ来た理由はフライドポテトを食べるためだった。

実家の森に住んでいた頃は調理法も少なく調味料も貴重だったため、質素な食生活を送っていたのだが、こちらの世界の食文化に触れた今では、すっかりその虜である。

「エルフさんは痩せられない。」(シネクドキ)1巻より、フライドポテトを食べるためだ
(「エルフさんは痩せられない」1巻より)

なかでもフライドポテトに関しては神が与えし食べ物とまで崇めるほど。 

その結果が掴めるぷにぷにのお腹につながっている。

元の世界に帰るゲートは重量規制があるため、なんとしても痩せなければならないのだ。

大好きなポテトを断ってでも。

かくして、エルフさんの過酷なダイエットが始まることになる。

「エルフさんは痩せられない。」(シネクドキ)1巻より、エルフさんのダイエット
(「エルフさんは痩せられない」1巻より)

ちなみにこの世界には、 絵留札さん以外にもダークエルフ、メロウ(人魚)、アルラウネ(マンドレイクの亜種)、オーガ、ライカンスロープ(狼人間)といった異世界の住人が移り住んでいる。

知らないうちにけっこう身近なところで暮らしているのかもしれない。

そして、それぞれの理由で痩せたいと願っているらしい。

1巻ではそんな彼ら(彼女ら)の日常が紹介される。

中でもダークエルフの黒枝さんは、こちらの世界に順応している一人だろう。

頑張っている彼女を見ていると、絵留札さんの残念さが際立ってくる。

「エルフさんは痩せられない。」(シネクドキ)1巻より、ダークエルフはコンビニバイト
(「エルフさんは痩せられない」1巻より)

ダイエットに欠かせないのは食事と運動だが、絵留札さんは運動することを嫌がっているわけではない。

むしろ積極的に他の亜人たちを誘って活動するだけの行動力とやる気をみせる事すらある。

かつては大自然の中を走り回っていた彼女だ。

あの頃の生活に近づけることで、スリムであった昔のようになれるかも知れない。

果たして彼女は本来の姿を取り戻すことが出来るのか。

「エルフさんは痩せられない。」(シネクドキ)1巻より、走った後のポテトは美味い
(「エルフさんは痩せられない」1巻より)

…これ痩せる気ないな?

 

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