
2019年7月に読んだ中で、おすすめの漫画をいくつか紹介する。
今月は注目作が多くて読むだけでもいっぱいいっぱいなのだけど、ひとつ選ぶとするなら「うらら迷路帖」かな。
デザートの新連載も楽しみ。
前回はこちら。
「あやめとあまね」(道満晴明)
愛情が重すぎる神条さんとクラスメイトの千穂とのほっこり日常百合コメディ。
紙版の発売日から1年、ようやく電子書籍でも読めるようになった。
ただし販売しているストアはまだ限られているので注意。
表紙の絵からも分かるように、この二人はハートが作られるには至っていない。
神条さんの一方的な気持ちを千穂が押し止める形で、それでも完全に拒絶するわけではなく友人としていい関係を保っている。

心の中にヤクザしかいない設定が好き。
よくある天使と悪魔のようにせめぎ合う余地もないのだが、その分神条さん本人が押される形でささやかな理性を発揮しているのでは?という気もする。
彼女の原動力の一つでもあるだろう。
「それでも歩 は寄せてくる」1巻(山本崇一朗)
自称将棋部部長の八乙女うるしと後輩の田中歩は、放課後一緒に将棋を指すことを日課にしている。
将棋で先輩に勝つことができたら告白するつもりの歩は、好きであることを頑なに認めようとはしないのだが…
先輩の方も、まんざらでもないのがポイント高い。
毎回のようにかわいいと言われ続けて照れる姿がかわいいのだ。

ここまで言っておきながら好きだと認めない歩を、どうにかして認めさせようとする先輩との駆け引きも見どころ。
対局シーンのある回はすべて棋譜が収録され、歩の成長を一緒に見守ることができる。
「くノ一ツバキの胸の内」3巻(山本崇一朗)
忍の里の学園に通うくノ一たちの日常を描くコメディ作品。
3巻の表紙はベニスモモを始めとする未班のメンバー。
前回の鬼ごっこの訓練において、ツバキが髪紐を奪うことで生徒たちの夕食抜きが回避された件について、ベニスモモは訝しんでいる。
自分と同じくらいの強さのツバキが、どうやって先生の攻撃をくぐり抜けられたのか。

その秘密を探るため、ツバキがリーダーを務める戌班のリンドウをさらってスパイに仕立てようと画策するのである。
今回は新登場の生徒もいたりして、それぞれの個性豊かな班の活動にもスポットが当たっている。
年少者への指導やモチベーションの維持に効果を上げているようだが、班が決められたのはそんなに昔のことではないようだ。
サザンカがツバキを姉のように慕うきっかけになったエピソードも描かれる。
「SPY×FAMILY」1巻(遠藤達哉)
東西の平和を脅かす危険人物の動向を探るため、名門イーデン校の懇親会へ潜入を命じられた凄腕のスパイ、コードネーム「黄昏」。
おそらくは長期間の任務となるため、保護者として参加することが好ましい。
そのために必要なのは家族である。
厳しい入学試験を突破できる子供と、名門に相応しい気品を持つ妻。
準備のための猶予は一週間。
そして実際に集まったのは、孤児の境遇を抜け出したい好奇心旺盛なエスパー少女と偽装のための恋人役が欲しい天然な殺し屋だった。

それぞれの思惑と秘密を抱えた擬似家族が、受験を通して本当の家族になっていく。
もう任務が終わってもずっと一緒に幸せに暮らせばいいよ。
連載が開始するなり注目を集め、直後に始まった次にくるマンガ大賞では早くもノミネート作品に残るなど期待の大きい作品である。
「赫のグリモア」2巻(A-10)
屋敷の隠し部屋で魔獣と出会った少女が魔導士たちの戦いに巻き込まれていくダークファンタジー。
若葉たちの前に現れた謎の組織『機構』(ゲゼルシャフト)の目的とはなにか。
彼女が曾祖母の後を継ぐことになった真の理由も判明し、新章突入といった感じ。
2巻では新キャラ羽生姉妹の登場が見どころ。
乃恵瑠の腹黒さや詩枝瑠の歪んだ愛情が楽しい展開になりそうでわくわくさせてくれる。

このへんで表紙に登場する竜胆雫(りんどう しずく)の印象も変わってくる。
「Fate/Grand Order 英霊剣豪七番勝負」1巻(渡れい)
人気ゲームFGOの1.5部の各エピソードを、複数の出版社で同時コミカライズ。
講談社のマガポケでは、そのうち『屍山血河舞台 下総国 -英霊剣豪七番勝負-』を連載している。
図書室で突然意識を失った藤丸立香は、徳川の世の下総国へと飛ばされていた。
少し前にこの世界に来たらしい女剣士・宮本武蔵や宝蔵院胤舜と邂逅した彼女は、直後に悪鬼に襲われ巨大な陰謀に巻き込まれていく。

最初の時点では全員が格上の相手で、全く歯が立たず逃げるしか道がないのだが、ここから熱い戦いが繰り広げられていくはずだ。
1巻では一番目のランサー・プルガトリオ戦までが描かれる。
「荒ぶる季節の乙女どもよ。」7巻(岡田麿里、絵本奈央)
高校の文芸部員たちの、思春期の悩みに翻弄される姿を描く群像劇。
壊れゆく文芸部の関係、集まりの悪くなった部室で、和紗は新菜から泉への告白の意思表示をされた。
うまくいっている友人カップルに波風を立てる行為は裏切りかもしれないけれど、本人に宣言して正面から向き合おうとするところは好感が持てる。
友達を失う覚悟を決めて望んだこともあり、受け入れられたときのはしゃぎ方をみると、告白がうまくいくよりも嬉しいことなのではないかと思う。

ここからの展開がよかった。
泉がふらつかなければ済む話なんだけどね。
次の8巻(10月発売)で完結するとのこと。
アニメも最後までやるんじゃないのかな。
「とどのつまりの有頂天」2巻(あらた伊里)
学校の敷地内にある神社で結成されたマイナー部の共同体「有頂天部」。
個性の強すぎる部員たちと、顧問の猫崎さんとの賑やかな日々を描くハイテンション百合コメディ。
美古都と猫崎さんの両片思いの日々もついに終わりの時が!?

忙しいと食事を疎かにしがちな猫崎さんを心配したルームメイトの椿が、ことあるごとにキャラメルや飴をくれるようになったエピソードが好き。
ヤングコミック(少年画報社)での連載はこの2巻で完結し、年内に月刊電撃大王(KADOKAWA)へ移籍してのリスタートが決定した。
百合漫画大賞受賞や次にくるマンガ大賞ノミネートなど、人気絶頂期での発表に百合クラスタの注目が集まっている。
「京洛の森のアリス」1巻(望月麻衣、庭春樹)
自分の力で生きていくために、白川ありすが選んだのは舞妓になることだった。
中学を卒業したばかりの彼女が住み込みで働けて、故郷の京都で暮らすことができるもの。
けれど迎えの車に乗ってたどり着いた場所は、懐かしいような初めて見るような不思議な町。

そこは京洛の森と呼ばれるところ。
外の世界から来た人間が暮らし続けていくには、いくつかの条件を満たす必要がある。
そのために、お供のうさぎとカエルと共に京洛の森を巡る日々が始まった。
「化物語」6巻(西尾維新、大暮維人)
吸血鬼に魅入られた少年とその周囲に起こる怪異を描く物語。
6巻は「するがモンキー」のクライマックス。
神原駿河に起こった怪異を解くため、彼女との戦いの中で模索する阿良々木。
そしてついにその答えを見つけ出したはずだった…

そこへ現れた戦場ヶ原によって、事態は予定外の方向へ向かっていく。
表紙は後半で始まる「なでこスネイク」のヒロイン・千石撫子。
これまでで一番の華やかさに人気の高さが窺える。
「きみが死ぬまで恋をしたい」2巻(あおのなち)
魔法が身近にある世界で、身寄りのない子供たちを引き取って育てている施設がある。
年齢別のクラスに分けられ、魔法で戦う術を教えられ、いつかは戦争に行くことを義務付けられている。
ルームメイトになったシーナとミミは一緒に過ごす中で自然と仲良くなってきたのだが…
友達だけの、他の人とは違う特別なことって?
ミミの存在の秘密に触れる回。
本編でもドキドキした場面が表紙になって帰ってきた。

初めての友達が出来たことに喜ぶミミが、特別な相手と共有しようとしたものは、国家機密とも呼べるものであった。
絶対に外に漏れてはいけないもの。
それを知ってしまったシーナの運命は…?
「割り切った関係ですから。」1巻(FLOWERCHILD)
クラスに馴染めない女子高生が、年齢を偽って登録したアプリで出会ったのは、高校の女教師で…
人見知りなところのある綾には、顔を合わせずに始められることが利点だった。
「はじめまして」をスキップしたい。
ネットで気軽にやり取りして仲良くなれたら、と思っていた。
相手のKUROにとってもそれは同じで、ただし目的が違うのである。
それでもお互い会うようになり、関係も断ちがたいものになっていく。

このタイトルは二人の秘密の関係、セフレになることを指しているのかと思いきや、ちょっと違うようだ。
実際には割り切れない部分が焦点となってくるのだろう。
作者は先日短編集「イブのおくすり」が話題になっていたが、そっちはちょっと大人向け。
「うらら迷路帖」7巻(はりかも)
占いの町・迷路町でうららと呼ばれる占師を目指す少女たちの物語。
白無垢祭の後に目覚めなくなった千矢の原因を探るため、夢占いを行ったなつみ屋の見習いうららたち。
その先で目にしたものは、視てはならないとされる迷路町の神様の正体であった。
禁忌を犯して呪いを受けた彼女たちを救うため、この町のどこかに眠っている伝説の一番占・矢見のもとへ向かうことに。

5人の少女たちの見習い期間を描く物語としてこの巻でついに完結を迎えた。
七番占試験が終われば、一人前のうららとしてそれぞれの道を進んでいくのだろう。
本編では試験は描かれないが、神様のいる場所を目指す中で成長した姿を見せてくれる。
はじめて棗屋に集まった頃のほのぼの感を思えば、こんなに立派になっちゃってと感慨深い。
帯の言葉は「絶対に、ひとりになんかにさせない。」だが、これは最後まで読むと効いてくる。
「幼女戦記」15巻(カルロ・ゼン、東條チカ)
統一歴1920年代、帝国と周辺諸国の戦争において、幼少ながら「ラインの悪魔」として恐れられた将校がいた。
彼女の名は、ターニャ・デグレチャフ。
15巻は、ライン戦線での大規模な陣地転換が開始される。
ターニャ率いる第二〇三航空魔導大隊は殿軍を任され、敵の攻撃を一手に引き受けることに。
作戦の意図を気取られないよう、途中で退くことは許されない。
いかに精鋭部隊と言えども甚大な被害を受けるだろう。

一昼夜に渡る激戦の中、被弾したターニャを援護したヴィーシャが宝珠をオーバーヒートさせて墜落するが、大隊長自ら救出に向かうのである。
副官であると同時に初めての部下であり共に地獄のライン戦線を生き抜いてきた仲間として特別感あるね。
ヴィーシャの新人時代を思い出すやり取りがよかった。
強くなったな。

同時に彼女の潜在的魔力量の大きさも判明するのだが、専用宝珠が用意されるだろうか?
「おとななじみ」1巻(中原アヤ)
家が隣同士で、小さな頃からずっと好きだった幼馴染み。
就職してからもアパートの隣の部屋に住み、毎日甲斐甲斐しく世話を焼いている。
それなのに、全く恋愛関係に発展しそうにないどころかお母さんくらいにしか思われていないらしい。
青山春、現在無職。
困ったことに、そんな毎日でも一緒にいれば楽しいし、いざとなったら騎士役も務めてくれる程度には大事にされているのだった。

元同僚のゆるふわ女子や楓を好きな男子の登場で二人の関係にも変化が訪れそう。
果たして、加賀屋楓の恋が実る日はやってくるのか。
「ゆびさきと恋々 」(森下suu)
聴覚障碍を持つ女の子と世界を旅するバックパッカーの男の子のラブストーリー。
外国人旅行者に道を聞かれ困っていたところを助けられた雪は、彼の自然な接し方に好感を抱き、大学の友人に相談するのだが…
「ショートケーキケーキ」の連載を終えたばかりの森下suuが早くもデザートで新連載を開始した。
構想3年でどうしても描きたかった物語を描くための移籍とのことで、音のない世界をどのように表現していくのか楽しみである。