
「魔法が使えなくても」は紀伊カンナによる漫画作品。
FEEL YOUNG 2017年1月号に掲載されていた。
同誌で不定期連載されているシリーズ物の第2弾である。
都内でアニメーターとして働く千代には、バンドをやっている恋人がいて…
2016年7月号(6月8日発売)「誰だってスカイラーク」34頁
2017年1月号(12月8日発売)「魔法が使えなくても」44頁+センターカラー+表紙
2017年7月号(6月8日発売)「パラダイス!」30頁+センターカラー
2017年12月号(11月8日発売)「杉並区にて」32頁
2018年3月号(2月8日発売)「SWEET SIDE」前編24頁+センターカラー
2018年5月号(4月8日発売)「SWEET SIDE」中編20頁+表紙(「鳥と海賊(紀伊カンナ公式ブログ)」より)
5月発売のFEEL YOUNG 2018年6月号でシリーズ完結予定。
夏頃には単行本が出るのではないかと思われる。
お気に入りの曲だよ。近くて遠い、君との季節を運んでくるから。「春風のエトランゼ」の紀伊カンナ、好評シリーズ連載!
(「魔法が使えなくても - pixivコミック」より)
その他のエピソードはこちら。
たまき故郷に帰る
地元でライブをやるために、久々に故郷へ帰ってきた。
数年の間に見慣れた風景も変わり、街を歩いていても戸惑うことが多い。

学生時代に通っていた食堂やゲームセンター、ライブハウスまで姿を消し、かつての町並みは記憶の中に残るのみである。
今回は、駆け出しのバンドマン・大川たまきの回想を通して高校生の頃の彼女たちの姿が描かれる。
美容師になるため東京の専門学校へ行くことが決まっていた千代とは違い、たまきは進路に迷っていた。
将来なりたいものもなく、地元の大学への進学をなんとなく考えている。

「面接と試験日くらいは、ジャージやめて制服着て来なさいね」
三者面談で担任に言われた言葉に表情をくもらせるたまき。
それはスカートを穿けと言われているようなものである。
普段は男子の制服を着て通しているが、受験となるとそうも言ってられないのも確かだ。
そのことも憂鬱になる理由の一つであったろう。

東京で絵の勉強をしたいと言ってみたことがあるものの、美術の成績が1であるため本気にされることもなかった。
千代だけが、たまきの絵を好きだと言ってくれていたようだ。
歌にしてもそう。
本人は苦手意識を持っていて、歌いたがらないし恥ずかしいと感じているらしい。
今回ライブ中のアクシデントで、間を持たせるために1曲だけ歌ったことを聞いた千代は、本気で残念がっていた。
彼女はたまきの事が好きでたまらないんだろうね。

二人がどのタイミングで一緒に暮らし始めたのかは分からないのだが、学生時代と変わらず仲のいい姿を見せてくれる。
理想とは違ったかもしれない、でも彼女たちは幸せだろう。
疲れて帰ってきた家で、目覚めると迎えてくれている恋人と猫。
この景色があるなら、これからも頑張れそうだ。

ベッドでまどろむ彼女たちをよそに流れるラジオがいい。
名前から言ってまあそういうことなんだろうけど、うまく転がりだした二人の生活をまだまだ見ていたかった。
現在確認できるのは、終盤の「SWEET SIDE」(3話予定)と本エピソードくらい。
掲載誌のアーカイヴも配信終了しているので単行本化されるが待ち遠しい。