
「空電ノイズの姫君」は冬目景による漫画作品。
月刊バーズで連載中。
12話は、夜祈子が磨音のバンド練習を見学する。
前回はこちら。
夜祈子にサポート依頼
父拓海から、夜祈子を知人に紹介したいと切り出された磨音。
後輩のバンドが、イベントでコーラスのサポートを探しているという。

結成20周年ライブとのことで、コアなファンや業界関係者の目に留まる可能性もなくはない。
拓海の新バンドの話ではなかったし一時的なものだけど、いいきっかけになりそうだ。
夜祈子も拓海に認められていることを知れば喜ぶだろう。
問題は彼女にどう伝えるのかということ。
夜祈子は歌うことは好きだが、自身で音楽活動をしているわけではない素人だ。
慣れないうちに大勢の前に出ることに抵抗があるかもしれない。
物怖じしない性格で大丈夫だろうが、磨音としては心配である。

磨音はバンドの練習に夜祈子を誘ってみる。
そもそもギターを弾けることも話していなかったくらいなので、ちょっとしたサプライズだ。
特に隠しているつもりはないらしいのだが、わざわざ言うことでもないと思っていたようである。
親の影響で楽器を始めていたとしても不思議のない環境で話題になっていないのは意外なところ。
バンド練習を見学

拓海のかつてのバンド、The Amber Jackのファンである夜祈子によると、磨音の弾き方は父そっくりらしい。
唯一教わった相手だからというだけでなく、技術の高さもそうなのだろう。
拓海の若い頃よりも上手いはずである。

一方、他の二人の演奏を聴いた夜祈子。
磨音に興奮した直後なのに思わず真顔になってしまう。
これは口で言われるよりつらい反応。
初めてスタジオに入った興味津々の女の子にこんな表情をさせてしまうなんて、どんだけ下手なのか。

曲そのものに対する評価は悪くないようなのだが、それも夜祈子が歌うことで良さが分かるという有様。
ここにきて、磨音も気づいてしまうのだったが夜祈子を誘うわけにはいかないのだ。
オリジナルメンバーで認めさせなければ意味がないという考えと矛盾してしまう。
父の忠告にもあった問題に直面しようとしているのだけど、実際に経験して失敗してみてはじめて気付くことかもしれない。
人気のあった中心メンバーのチアキの急逝で、ファンにも常連だったライブハウスにも見放されたバンド。
作者はこのアルタゴというバンドをどうしたいのか。
目前に迫ったオーディションで現実を知って、新バンドとして再出発とか?
そこに夜祈子を加入させたとしてもリズム隊を入れ替えられないなら浮上も無理そうだ。
このだめな男子たちを見守りたいかというとそんな気にはなれないしね。
個人的には、作者がインタビューで答えていたようにバンドものとして描こうとしているわけではないという点に期待している部分がある。
毎月少しずつ読むより単行本でまとめて読んだ方がいいのかもしれない。
でも定期的にモヤモヤするのも楽しんでいる証拠なのかな?
続きは気になるしな。
サポートの件を夜祈子に話しやすくなったという点では意義のある練習だった。
これを機に磨音が夜祈子と組みたいと思ったのなら今後が楽しみになってくる。
アルタゴとは別件でならだけど。