
「君曜日 ー鉄道少女漫画ー」は中村明日美子による漫画作品。
楽園 Le Paradisにて2010年より連載を開始した。
主に小田急線の駅や電車内を舞台にした短編集「鉄道少女漫画」の一遍、「木曜日のサバラン」のスピンオフである。
2017年7月31日、2年半振りの最新刊でついに完結。
鉄道周辺のあれこれを舞台に展開するコミックス『鉄道少女漫画』。同書に収録された「木曜日のサバラン」からスピンアウトしたアコちゃんと小平君のお話がコミックスに!!
(「君曜日 ─鉄道少女漫画2─|白泉社」より)
彼女たちの片思い
ケーキ屋の奥で、毎週木曜日だけ開かれる鉄道模型室。
亡くなった祖父の代わりに通うようになった倉木亜子は、そこで一緒になるスーツ姿の男性に恋をする。

木曜はいつもより早く起きて準備に時間をかけるようになった。
でも相手には奥さんも子供もいて、叶わないことも知っている。
いつかはあきらめなければならない思いだった。
そんな亜子(アコ)に好意を寄せる男の子が一人。
同じ塾の小平は、初日に隣の席になったことをきっかけによく話しかけてくるようになった。
よく言えば積極的だが、空気を読めない、他人の気持ちに鈍感、話を聞かないという最悪の第一印象である。
そんな彼への見方が変わりだすのは、花火大会の時のこと。

無神経な方向に振り切っていた小平が、周囲への気遣いを見せる。
幼なじみの恋心にも気付いてしまい、また自身の片思いを振り返るのか。
変えたくない関係と変えたい関係。
今の小平には彼女を泣き止ませることはできない。
話の筋はシンプルで、作者の言葉を借りると以下のとおり。
君曜日は、分かりやすい男の子と分かりにくい女の子が、鉄道にゆらゆら揺られてちょっとずつ近づいていって、やがて手をつなぐというお話です。
(3巻あとがきより)
アコと小平がゆっくり距離を縮めていく物語。
引っ込み思案なアコには、小平くらいの強引さが必要だったのかもしれない。
小平のいい所は裏表のなさと一途さにある。
ただし最初がマイナスなので少しずつ少しずつ。
恋をあきらめるのに一冊、
次の恋に気づくのに一冊、
その更に先へ行くのにもう一冊かかるということ。
(2巻あとがきより)
脇役も魅力的
二人に絡んでくるキャラとして、まずは持田華絵(もちだ かえ)。
彼女は小平の幼なじみとしてずっと近くにいた女の子。
幼稚園の頃からずっと好きだったという。
アコとの初対面時には、思いが溢れて止まらなくなるシーンがある。

一体、小平のどこに惚れたのかと言うと、彼女の回想における小平は確かにかっこいいかもしれない。
迷子になって、自分も泣きたいのに女の子の前では強がってみせたり。
幼稚園児の当時のまま外見だけ大きくなったのが今の小平の姿なのか。
彼女は立ち位置的に失恋することになるのだが、一番報われてほしいキャラ。

アコのクラスメイト大鷲美沙(みさっちん)。
初登場時は重要なキャラになると思わなかったが、アコの相談役として頼りになる存在。
結果として恋多き女ポジションであるが、彼女なりに真摯に向き合っていた。
彼女の前では年齢も国籍も障害にはならない。
そんなみさっちんだからこそ説得力のある言葉がある。
個人的に好きなのは、鉄道模型室でのアコの最後の日のエピソード。
暗黙の了解として言葉は交わさないことになっているため、お互いのプライベートには干渉しないのだが、彼女の様子がおかしいことに気付いた彼らがとった行動がすばらしかった。
事情はわからなくても、仲間への心がこもった贈り物だった。

ちなみに最終巻では番外編として彼らの普段の姿が見られる。
あとがき
これで君曜日としてだけでなく、鉄道少女漫画シリーズとしても完結ということなのかな。
短編集としては続いて欲しいんだけどね。
次回の楽園第25号(10月31日発売)から新連載「針山の乙女たち」が開始される。