「夏目友人帳」は緑川ゆき原作のアニメシリーズ。
2016年10月より5期の放送中。
今回は第十話、塔子と滋が夏目を迎えるまでの日々。
前回はこちら。
塔子と滋
ある日の帰り道、夏目はカラスのひと鳴きで降り始めた雨に気づき、急いで家に帰って塔子と洗濯物を取り込む。カラスのことを話すと、塔子は、夏目を引き取る前、滋と二人仲良くこの広い家に住んでいた時代のことを思い出す。ある日、遠い親戚の葬式に出かけた滋は、そこで所在無げな男の子――夏目貴志を目にする。そして、塔子は戻ってきた滋が急に空き部屋を片付け始めたことが気にかかる。
(あらすじ:アニメ 夏目友人帳 公式サイトより)
まだ夏目がこの家にやってくる前、塔子は庭でカラスを助けたことがある。
しっぽの曲がったこの鳥は、庭の木によく止まっていて、雨が降り出したのを教えてくれたこともある。
恩返しだったのか偶然だったのか、いつも見かけるカラスを、塔子は友人のように感じていた。
気にかかるのは、いつもひとりでいること。
滋が聞いた話だと、カラスは決めた相手と一生ともにするらしい。
まだ相手に出会えていないのか、それとも先立たれてしまったのか。
その頃、遠縁の葬儀に出かけた滋は、庭で所在なさげにしている少年を見かけた。
親戚中をたらい回しにされているというその子のことが、その後も気にかかっていたようだ。
藤原夫妻には子供がいない。
二人で暮らす家は静かで、少し広すぎるくらいだ。
仲がよく、幸せそうな夫婦ではあるが、どこか寂しさを感じていたのかもしれない。
スーパーで小さな子供と話す塔子はうれしそうであった。
「だめね、私だったらあんなにかわいく言われたら、さっそくおにぎり作ってピクニックがてらお出かけしてしまいそう」
その後、二人で水族館へ出かけるが、この二人が一緒にどこかへ出かける様子が描かれるのは初めてじゃないだろうか。
塔子が友人と旅行へ出かけることは何度かあって、帰りたい家があることを実感させるものであった。
いくつになってもこうやって仲良く出かけられるのはうらやましい。
夏目を引き取ることを考え出してから、一人で空いた部屋を掃除する滋。
待ちきれずに何度も夏目のところに会いに訪れる塔子。
二人の愛情を感じられる場面。
三期ではこの辺のことがもう少し詳しく描かれているエピソードがあった。
引っ越してきてから間もないころ、一人で川面をながめる夏目。
まださみしげな表情で、これからいろいろな人や妖に出会い変わっていくが、この頃は想像できなかっただろう。
この家に来ての最初の願いはニャンコ先生を飼うことだったのかもしれない。
やりたいことやわがままを、家族のように言ってもらえることを願っていた夫妻にとってうれしい変化であったはず。
カラスは、ひとりではなかった。
夏目には一緒にいる白いカラスが見えていた。
塔子には見えないものであったが、少し驚きつつもそのまま受け入れている彼女の包容力には頭が下がる。
この先、夏目が見ているものを知っても、この人は変わらないだろうなという安心感がある。
それはきっと美しく、白く光って、見えにくいのね
あとがき
あらためて感じさせられたヒロイン力。
夏目友人帳の癒やし成分の半分くらいはこの人でもってるんじゃないだろうか。
藤原夫妻の若い頃のエピソードも見てみたい。
次回は第十一話、「儚き者へ」。
夏目と中級たちのエピソード。
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